カンボジアの深刻な社会問題について、新たな視点や解釈で探求。カンボジアで最も重要なアーティストの一人、クゥワイ・サムナンの個展「Das Pralung(目覚める精霊たち)」が開催中

2024/08/02
by 遠藤 友香

日本を代表するコンテンポラリーアートギャラリーである「小山登美夫ギャラリー」。この度、小山登美夫ギャラリー天王洲では、カンボジアで最も重要なアーティストの一人である、クゥワイ・サムナンの個展「Das Pralung(目覚める精霊たち)」を2024年8月10日(土)まで開催中です。

クゥワイ・サムナン(1982-)は、カンボジアの深刻な社会問題を多大な時間を費やしてリサーチし、写真、ビデオ、インスタレーション、彫刻、パフォーマンスなど様々なアプローチによって、歴史、文化、様々な事象についての新たな視点、解釈を探求しています。

ユーモラスで重層的な作品は国際的にも高い評価を得ており、主な個展にジュ・ド・ポーム国立美術館(2015年、パリ、その後、CAPCボルドー現代美術館へ巡回)、ハウス・デア・クンスト(2019年、ミュンヘン、ドイツ)、Tramway(2021年、グラスゴー、スコットランド)、ifa(2022年、シュトゥットガルト,ドイツ)があります。その他の国際展では、現在開催中の第60回 ヴェネチア・ビエンナーレの公式関連展示「The Spirits of Maritime Crossing」に参加中、2017年にはドクメンタ14に参加。またアーティストコレクティブ「Sa Sa Art Projects」のメンバーとしても活動し、2018年の第21回シドニービエンナーレ(片岡真実キュレーション)や、2022年のドクメンタ15にも参加しました。

本展は作家にとって小山登美夫ギャラリーでの4度目の個展となります。今回、長年サムナンの活動を至近距離で支えてきたチュム・チャンヴィアスナがキュレーションを担当し、以下の言葉を寄せています。

■クゥワイ・サムナンの個展「Das Pralung(目覚める精霊たち)」のキュレーションを担当したチュム・チャンヴィアスナの言葉

クゥワイ・サムナンの個展「Das Pralung(目覚める精霊たち)」では、「Pralung(プロルン)」と呼ばれる精霊を扱った新作シリーズを展開。本展では、クメール語とパーリ語で書かれた言葉をかたどった壁掛けの彫刻や、シングルチャンネル・ビデオとミステリアスな真鍮の彫刻を組み合わせた作品などを展示しています。「プロルン(精霊)」の概念は、カンボジアに広く伝わる複雑なアニミズム信仰の体系に由来するもので、今日の東南アジアの国境をはるかに越えて、「モンスーン・アジア」として知られるインド東部や中国南部にまたがる広大な地域の人々にも共有されています 。新作は、自然における人間と人間でないものの両方の側面、超自然的なもの、アニミズム、政治的・地理的な環境などに関わる、儀式や信仰に焦点を当てます。これは困難にみまわれた場所について身体をもって省察するという、サムナンの長年の関心を継続するものです。彼は抗しがたいほどの開発や、国際的な社会・政治の混乱、無秩序、領土紛争、戦争などにより、人間と自然は互いへの敬意をほとんど失ってしまっていると観察します。こうした要因や、自然と人間の間における敬意の喪失は、地球規模の気候変動においても深刻な影響を及ぼしています。

ギャラリーに足を踏み入れると、クメール語の「Mchas Teuk(水の主)」と「Mchas Dei(土地の主)」という言葉が訪れる人を迎え、これは迷彩布と撚り合わせて編まれた蔓によって制作されたものです。さまざまなプロルン(精霊)を想起させるこれらの言葉は、サムナンの新作を、アーティスト・ラン・スペース「Sa Sa Art Projects」を共に創設したアーティストたちと2022年にプノンペンで参加した、グループ展のタイトルと結びつけます。クゥワイ・サムナンは今日多くの国において、地政学的な状況だけでなく、人と自然との関係にも劇的な変化が起きていると捉えます。土地や環境は、以前にも増して欺瞞に満ちた、不透明で、不安定な方法で管理されているのです。こうした不確かさや、私たちを不可視化してしまうような変化の背後には、何かが存在していると思えてならないと作家は言います。今日における土地や水の主は、いったい誰なのでしょうか?現代の人々は、人間と土地の祖先である「Nak Ta(ネアク・タ)」や超自然的な守護者である「Mrenh Kongveal(マレン・コンヴィアル)」といったプロルン(精霊)を、変わらず信じているでしょうか?

ギャラリースペースの反対側には、パーリ語とクメール語の文字でそれぞれ「Kongkea(水)」、「Aki(火)」、「Thorani(土)」、「Khyal(空気)」という言葉を綴った4つの彫刻が2列に展示されています。これらは、人間、動物、植物、無生物を含む地球上のすべての生き物の誕生を支える4つの元素のメタファーとなっています。「モンスーン・アジア」のアニミズムの信仰体系においては、これらの要素が一緒に保たれている限りすべてが生かされる一方で、それらが切り離されると、すべてのものは即座に死んでしまうと言われます。

本展では、言葉をベースにした彫刻作品とともに、ギャラリー中央に設置されたシングルチャンネル・ビデオと真鍮のオブジェを鑑賞することができます。サムナンはこの映像作品のために、10年以上ぶりに自らの身体を使ってパフォーマンスを行う決意をし、3日間にわたり炎天下で1日数時間を過ごしました。ラタン(籐)の椅子に座り、真鍮のオブジェを叩いて、叩いて、振動する音を出すーその音は、カンボジア南部のコッコン州やコン・クラウ島、北部のメコン川沿いの小さな島々など、豊かな自然資源と希少な野生動物の宝庫である大森林に響き渡ります。世界の現状を目の当たりにしてサムナンは、ネアク・タやマレン・コンヴィアルをはじめとする森を守るプロルン(精霊)たちは、ぐっすり眠っているに違いない、と感じたと言います。真鍮のオブジェを叩くことで、彼はその精霊たちを目覚めさせ、地球が非常事態にある今、行動を起こさせようと試みます。自然は分断され、地熱的・政治的な現象の両方により、地球規模の気候危機を引き起こしています。サムナンの行動はプロルン(精霊)たちへ、どうか目覚めて団結し、自然環境と世界の地政図を修復するために力を合わせて介入して欲しい、と呼びかけます。

「Das Pralung (目覚める精霊たち)」の出展作品は、人間や人間でないもの、言語、そして自然の間の関係を結びつけ、再び想像するための新たな風景を訪れる人に提供します。本展は、カンボジアおよび広域の「モンスーン・アジア」における政治、経済、文化、伝統、生活、そして本質的な社会構造を形成し続けるアニミズム信仰を通して、元素や地理的・政治的環境の複雑な相互作用に光をあてます。この知識体系によれば、プロルン(精霊)やネアク・タ、マレン・コンヴィアルに対する信仰、地理的状況、政治的状況、気候変動といった、自然環境を構成する生態系の要素に何らかの危機が生じれば、目に見えるかに関わらず、生活や生態系にリスクや不規則性、不均衡が生じるとされます。


チュム・チャンヴェスナ    
ロジャー・ネルソン氏への謝辞を込めて

 

この貴重な機会に小山登美夫ギャラリー天王洲に足を運んで、カンボジアで最も重要なアーティストの一人である、クゥワイ・サムナンの個展「Das Pralung(目覚める精霊たち)」をぜひご覧ください。

 

■クゥワイ・サムナン 「Das Pralung(目覚める精霊たち)」

会期:2024年7月20日(土)- 8月10日(土)11:00-18:00   

休廊日:日、月、祝日

場所:小山登美夫ギャラリー天王洲

東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex Ⅰ 4F

Tel:03-6459-4030

入場無料

グッチ日本上陸60周年を祝し、グッチ銀座 ギャラリーにて展覧会「Bamboo 1947: Then and Now バンブーが出会う日本の工芸と現代アートを開催

2024/08/01
by 遠藤 友香

1921年、フィレンツェで創設された「GUCCI(グッチ)」は、世界のラグジュアリーファッションを牽引するブランドのひとつです。ブランド創設100周年を経て、グッチは社長兼CEO ジャン=フランソワ・パルー氏とクリエイティブ・ディレクター のサバト・デ・サルノ氏のもと、クリエイティビティ、イタリアのクラフツマンシップ、イノベーションをたたえながら、ラグジュアリーとファッションの再定義への歩みを続けています。

グッチ製品が日本で初めて正式に紹介されたのは1964年のこと。日本上陸60年目のアニバーサリーイヤーを迎えた今年、グッチは日本の皆さまへの感謝とともに、日本とのつながりを今後もより強く育んでいきたいという思いを込めて、さまざまなプロジェクトやイベントを展開しています。そのひとつとして、新たなアートプロジェクトを発表。これは日本の伝統工芸作家とコンテンポラリーアーティストが、ヴィンテージの「グッチ バンブー 1947」ハンドバッグを用いて作品を創り上げるというスペシャルなコラボレーションを軸に、ヴィンテージバッグを発掘し、アップサイクルする過去に類のないプロジェクトです。

「グッチ バンブー 1947」ハンドバッグの誕生を振り返ると、そこにも日本とのつながりがあります。上質な素材を手に入れるのが困難だった戦後期のイタリアで、ブランド創設者であるグッチオ・グッチ氏とフィレンツェのグッチの職人たちが、日本の竹を加工してバッグのハンドルにしたのです。そして1947年に誕生したバンブーハンドルのバッグは、ひと目でグッチと分かるアイコンとなり、クラフツマンシップとラグジュアリーにおけるイノベーターとしてのグッチを象徴する存在であり続けています。

この度のプロジェクトに用いられるのは、主に1980年代から90年代に製造・販売された「グッチ バンブー 1947」ハンドバッグです。時を重ねても、なおそのエレガントな美しさを保ち続けている60点のヴィンテージバッグを、グッチの専任アーキビストが厳選しました。そして、その一つひとつに新たな生命を吹き込むのは、彫金家で人間国宝の桂盛仁(かつら もりひと)氏と、その弟子の北東尚呼(あい なおこ)氏、塗師の渡慶次愛(とけし あい)氏、陶芸家の中里博恒(なかざと ひろつね)氏、写真家の森山大道(もりやま だいどう)氏、そして画家の八重樫ゆい(やえがし ゆい)氏と横山奈美(よこやま なみ)氏です。伝統工芸作家とコンテンポラリーアーティストが、自身の匠の技とクリエイティビティを通じて、グッチの職人たちの技の軌跡やそのバッグが過ごしてきた豊かな時間と対話しながら唯一無二の「グッチバンブー 1947」ハンドバッグを創り上げます。

作品として完成した60点の「グッチ バンブー 1947」ハンドバッグは、2024年8月2日(金)から 9月23日(月・祝)まで、東京・銀座のグッチ銀座 ギャラリーにて開催される「Bamboo 1947: Then and Now バンブーが出会う日本の工芸と現代アート」展にて一般公開され、アートピースとして販売される予定です。

グッチはこのプロジェクトを通じて、「グッチ バンブー 1947」ハンドバッグのタイムレスな美しさ、日本の職人による卓越したクラフツマンシップ、グッチと日本が数十年にわたって共有してきたクリエイティブな対話を掘り下げます。そして職人やアーティストとともに、ファッションとアートやカルチャーが交わる新たな次元で、グッチのアーティスティックなビジョンを体現し、伝統と革新の物語を紡ぎ続けるそうです。

■「Bamboo 1947: Then and Now Celebrating 60 years of Gucci in Japan バンブーが出会う日本の工芸と現代アート」展

会期 :2024年8月2日(金)– 9月23日(月・祝) ※会期中無休
場所 :グッチ銀座 ギャラリー 東京都中央区銀座4-4-10 グッチ銀座6-7階
時間 :11:00-18:00 (最終入場 17:00)
※8月2日(金)– 4日(日)は、17:00終了(最終入場 16:00)
入場 :無料・予約不要

※開催内容・時間は予告なしに変更となる可能性があります。

※作品の販売について
グッチ銀座 ギャラリーにて、60点の作品の展示販売会を開催予定です。

来場のお申し込みなどにつきましては、グッチクライアントサービス Tel. 0120-99-2177 までお問い合わせください。

グッチ バンブー 1947: 銀座美術展|GUCCI公式 JP