クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ
© musée Marmottan Monet
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
印象派を代表する画家の一人として知られるクロード・モネ(1840-1926)。光と色彩をとらえる鋭敏な眼によって、自然の移ろいを画布にとどめることに努めました。しかし後年になるにつれ、その芸術はより抽象的、かつ内的なイメージへと変容してくことになります。
モネの晩年は、最愛の家族の死や自身の眼の病、第一次世界大戦といった多くの困難に直面した時代でもありました。そのような中で彼の最たる創造の源となったのが、ノルマンディー地方の小村 ジヴェルニーの邸宅を買い取り、その庭に造られた睡蓮の池に、周囲の木々や空、光が一体と映し出される水面でした。この主題を描いた巨大なカンヴァスによって部屋の壁面を覆いつくす大装飾画の構想が、最期に至るまでモネの心を占めることになります。
豊田市美術館にて、2025年6月21日(土)~9月15日(月・祝) の間に開催されていた「モネ 睡蓮のとき」。本展の中心となったのは、この時期に描かれた大画面の〈睡蓮〉の数々です。会場には、パリのマルモッタン・モネ美術館のコレクションから日本初公開となる重要作品を含んだおよそ50点と、日本国内の美術館等が所蔵する作品が並びました。日本では過去最大規模となる〈睡蓮〉が集う貴重な機会となりました。
第1章 セーヌ河から睡蓮の池へ
クロード・モネ《睡蓮、夕暮れの効果》1897年 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ
© musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB
1890年、50歳になったモネは、7年前に移り住んだジヴェルニーの土地と家を買い取り、これを終の棲家とします。それはまた、彼が同一のモティーフを異なる時間や天候のもと繰り返し描く、連作の手法を確立した時期でもありました。
やがて画家の代名詞ともなるジヴェルニーの自邸の庭を描くことは、すぐに作品へと結実したわけではありません。1890年代後半に主要なモティーフとなったのは、モネが3年連続で訪れたロンドンの風景や、彼の画業を通じて、つねに最も身近な存在であったセーヌ河の風景でした。
とりわけ、この時期に描かれたセーヌ河の水辺の風景は、しばしば水面の反映がかたちづくる鏡像に主眼が置かれており、のちの〈睡蓮〉を予見させます。
1893年、モネは自邸の庭の土地を新たに買い足し、セーヌ河の支流から水を引いて睡蓮の池を造成します。この“水の庭”が初めて作品のモティーフとして取り上げられたのは、それから2年後のことでした。
さらに、池の拡張工事を経た1903年から1909年までに手掛けられたおよそ80点におよぶ〈睡蓮〉連作において、画家のまなざしは急速にその水面へと接近します。周囲の実景の描写はしだいに影をひそめ、ついには水平線のない水面とそこに映し出される反映像、そして光と大気が織りなす効果のみが画面を占めるようになりました。
その後、セーヌ河を流れる水は睡蓮の池へと姿を変え、晩年のモネにとって最大の創造の源となっていきました。
第4章 交響する色彩
モネの絵画は、その色彩が生む繊細なハーモニーゆえに、同時代からしばしば音楽にたとえられました。1921年に洋画家の和田英作が松方幸次郎らを伴いジヴェルニーのアトリエを訪れた際、〈睡蓮〉の近作をして「色彩の交響曲」と評したところ、モネが「その通り」と答えたという逸話も知られています。
しかし、1908年ごろからしだいに顕在化しはじめた白内障の症状は、晩年の画家の色覚を少なからず変容させることになりました。悪化の一途をたどる視力に絶えず苦痛を訴えながらも、モネは1923年まで手術を拒み、絵具の色の表示やパレット上の場所に頼って制作を行うことさえあったといいます。
1918年の終わりごろから最晩年には、死の間際まで続いた大装飾画の制作と並行して、複数の独立した小型連作が手掛けられました。モティーフとなったのは、“水の庭”の池に架かる日本風の太鼓橋や枝垂れ柳、“花の庭”のばらのアーチがある小道などです。
これらの作品は、不確かな視覚に苛まれる中にあって衰えることのない画家の制作衝動と、経験から培われた色彩感覚に基づく実験精神を今日に伝えています。画家の身振りを刻印する激しい筆遣いと鮮烈な色彩は、のちに1950年代にアメリカで台頭した抽象表現主義の先駆に位置づけられ、モネ晩年の芸術の再評価を促すことになります。
エピローグ さかさまの世界
クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ
© musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB
「大勢の人々が苦しみ、命を落としている中で、形や色の些細なことを考えるのは恥ずべきかもしれません。しかし、私にとってそうすることがこの悲しみから逃れる唯一の方法なのです。」大装飾画の制作が開始された1914年に、モネはこう書いています。
折しもそれは、第一次世界大戦という未曾有の戦争が幕を開けた同年のことでした。1918年に休戦を迎えると、時の首相にして旧友のジョルジュ・クレマンソーに対し、戦勝記念として大装飾画の一部を国家へ寄贈することを申し出ます。その画面に描かれた枝垂れ柳の木は、涙を流すかのような姿から、悲しみや服喪を象徴するモティーフでもありました。
モネがこの装飾画の構想において当初から意図していたのは、始まりも終わりもない無限の水の広がりに鑑賞者が包まれ、安らかに瞑想することができる空間でした。それはルネサンス以来、西洋絵画の原則をなした遠近法(透視図法)による空間把握と、その根底にある人間中心主義的な世界観に対する挑戦であったとも言い換えられるでしょう。
画家を最期まで励まし続け、その死後1927年の大装飾画の実現に導いた立役者であるクレマンソーは、木々や雲や花々が一体となってたゆたう睡蓮の池の水面に、森羅万象が凝縮された「さかさまの世界」を見出します。モネの〈睡蓮〉は、画家が生きた苦難の時代から今日にいたるまで、人々が永遠の世界へと想いを馳せる、心のよりどころとなりました。
■「モネ 睡蓮のとき」
会期:2025年6月21日(土)~9月15日(月・祝)
休館日:月曜日(9/15は開館)
開館時間:午前10時~午後5時30分(いずれも入場は閉館の30分前まで)
会場:豊田市美術館
愛知県豊田市小坂本町8丁目5番地1
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
公益社団法人 日本アロマ環境協会(略称:AEAJ)は、調香とフレグランスの魅力を多角的に体験できる特別展「調香ミュージアム~香りで紡ぐ、秘密の世界」を、2026年1月31日(土)まで「AEAJ グリーンテラス」にて開催中です。
AEAJ グリーンテラスは、世界大規模のアロマテラピー団体である「公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)」が、アロマテラピーの魅力をより多くの方々に体感してもらい、香り豊かな「アロマ環境」を守るための情報発信を行う基幹施設として、2023年2月にオープンしました。
植物の恵みである精油がもつ力と可能性を、さまざまなコンテンツを通してご紹介。国産ヒノキの組積構造が印象的な空間は、建築家・隈研吾氏によるもの。ここに集う人々の健康と快適性、そして未来の地球環境のため、CO₂の削減や資源の循環、生物多様性などにも配慮しています。2024年1月に、ウッドシティ TOKYO モデル建築賞「最優秀賞」を受賞しました。
そんなAEAJ グリーンテラスにて開催されている本展では、香り創りに関する様々な体験を通じて調香への理解を深めるとともに、香りが紡ぎだす鮮やかな世界に足を踏み入れることができます。
展示では、歴史に残る名香や、平安時代の香り文化、香りを組み合わせることによって生まれる魅力などを実際に体験しながら楽しむことができます。また、自分好みの香りを創出できる「調香 Bar」や、調香師による調香レッスンなどのワークショップも実施されています。
■展示コンテンツ
1.香りの歴史
香料の発展と香りの文化、フレグランスの歴史をたどります。
2.レジェンドと呼ばれる名香
代表的な 7つの香調が誕生するきっかけとなった「名香」の香りを体験できます。
3.平安の香り文化 ー 千年の時を超えて
平安貴族たちのステイタスでもあった薫物の中でも、特に人気だった香りの処方を再現して展示。
当時の香りの文化を体験することができます。
4.個性的な香りの魅力
単独では使用用途が限られるような個性的な香りが、他の香りと組み合わせることで発揮する力と、
調香の奥深さを実体験できます。
5.調香 Bar
3種の香調をベースに自分だけのフレグランスを作れるワークショップ(有料)。会期中の火・水曜に限定開催しています。
その他、天然精油のみで創られたフレグランスの展示や、調香に関連した各種セミナーなども行っています。
調香とフレグランスの魅力を多角的に体験できる又とない機会。ぜひ。会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
「調香ミュージアム~香りで紡ぐ、秘密の世界」
【会期】2025年8月5日(火)~2026年1月31日(土)
【開館時間】13:00~18:00
【休館日】日曜・月曜・祝日 ※その他 AEAJ グリーンテラスの閉館日に準ずる。
【会場】AEAJ グリーンテラス 1F
東京都渋谷区神宮前 6-34-24
JR 原宿駅東口より徒歩 7 分
東京メトロ明治神宮前駅 7 番出口より徒歩 3 分
【入館料】大人:500 円(税込)
*AEAJ 会員、高校生・18 歳未満、障害者手帳をお持ちの方は無料
【予約方法】https://reserva.be/aeajgreente...
【主催】公益社団法人 日本アロマ環境協会(AEAJ)
【後援】フランス貿易投資庁―ビジネスフランス
【特別協力】日本調香技術普及協会
【協力】グラフィック社、コティジャパン、サンタ・マリア・ノヴェッラ・ジャパン、
日本香堂、NOSE SHOP、柳屋本店
《ヴィラ・マラルメ》コンセプトモデル、1991
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
山梨県・小淵沢にある中村キース・ヘリング美術館では、本館を設計した建築家・北川原温氏の模型やドローイングなどの資料を通じて建築家独自の美学と設計哲学を紹介する、美術館における初個展「北川原温 時間と空間の星座」展を2026年5月17日(日)まで開催中です。
北川原氏は、渋谷の映画館ライズ(1986)で都市の虚構性を建築に表現し、その後も独創的な建築を生み出し続け注目を集めてきました。 本展では北川原氏の創作のソースを「星」、建築を「星座」に見立て、その方法論や生成の過程を探ります。
中村キース・ヘリング美術館を構成する6つの要素「さかしまの円錐」「闇」「ジャイアントフレーム」「自然」「希望」「衝突する壁」を軸に、模型や資料を通じて建築のプロセスを紹介。さらに、隣接するホテルキーフォレスト北杜では五感を通じた体験型の展示、JR小淵沢駅では八ヶ岳山麓のプロジェクトと地域の魅力を紹介します。本展を通じて、中村キース・ヘリング美術館をはじめとした北川原建築を歩むことにより北川原氏の「宇宙」に迫る体験を提供しています。
「北川原温 時間と空間の星座」展 3つの見どころ
1. 建築家・北川原温の「内宇宙」を未公開資料とともに体験するインスタレーション
《マラルメの庭と家》(部分)、制作年不詳
1978年の「ナジャの家」で建築家としてデビューし、1986年の「ライズ」で国際的な地位を得た北川原温氏は、ポストモダンの建築家の1人として知られてきました。北川原氏はデビュー以来、一貫して個人の作家性を重視し、自身の創作について固定化された方法論を語らず、それぞれの建築にもたらされる物語性を重視して創作を続けてきました。
本展では、まるで星空の中に物語を見出し星を繋いで星座を描くように生み出されていく北川原氏の建築のプロセスを、記憶や文学、詩、哲学、自然科学、美術などさ、まざまな要素から物語を生み出すように建築を生み出す北川原氏の独自性を探求します。
中村キース・ヘリング美術館の展示室では、これまで公開されることのなかった幼少期に集めた蝶の標本、長年にわたって描き続けたドローイング、建築模型、影響を受けた書籍などを、北川原氏が影響を受けたステファヌ・マラルメの散文詩のようにひとつの「空間」の中に漂うインスタレーションとして表現します。
中村キース・ヘリング美術館という「星座」を描く北川原氏の思考の軌跡が浮かび上がり、北川原氏自身が旅する「内宇宙」を体感し、この空間でしか体験できないイメージを結ぶことができるでしょう。
2. 中村キース・ヘリング美術館が生み出された軌跡を、初公開資料を含むドローイングや貴重な手稿の数々によって紐解く
中村キース・ヘリング美術館ドローイング、2000年代
中村キース・ヘリング美術館は、2004年から3年をかけて館長・中村和男氏との対話の中で大きく姿を変えながら生み出されました。本展では、北川原温氏が構想を練る中で描き続けた未公開のドローイングや、インスピレーションを書き溜めたノートの手稿、重ねられるスタディの数々を「時間軸」に沿って紹介します。それらの資料から、美術館が生まれるまでの過程を追体験できます。
どのようにして「星座を描く」ように建築が組み上げられていったのか、構想がどのように形になっていったのか、その思考のプロセスを紐解きます。
3. 北杜市に点在する3つの北川原建築を結び、八ヶ岳南麓における創作活動を辿る
ホテルキーフォレスト北杜、2015年竣工
小淵沢駅舎・駅前広場、2018年竣工
山梨県北杜市は日本有数の自然景観を誇る地であり、建築家・北川原氏の作品が6つ集中する唯一の場所です。それら6つの建築はどれも八ヶ岳の火山地形、豊かな森と水、縄文文化や馬の文化など八ヶ岳南麓の環境と深く結びついており、小淵沢駅周辺を題材に東京藝術大学の学生とプロジェクト制作を行うなど、長年この地域に関わってきた北川原氏が、それらをどのように結びつけて個性が異なる建築を作り上げたのかを3つの建築を通して体感できます。
ホテルキーフォレスト北杜では、小淵沢と関連するプロジェクトの模型や資料、写真家と北川原建築とのコラボレーション作品も展示。また、ホテルロビーと中村ウィスキーサルーンでは、北川原氏が創作のインスピレーションを得ている音楽や香り、味といった日常の身体感覚を体験できる企画を行います。小淵沢駅では、特徴的な窓で八ヶ岳の山岳景観を効果的に見せている交流スペースを会場に、北杜市に点在する北川原建築の魅力を紹介する展示を開催します。
北川原温プロフィール
北川原温/建築家。1951年長野県千曲市出身、飯田高校から東京芸術大学へ。
グッドデザイン賞金賞を受賞した山梨県の工業団地アリアの都市計画・ランドスケープ・建築のトータルデザイン、3.11東日本大震災で福島県最大の避難場所となった国際コンベンションホール・ビッグパレットふくしまなど、公・民問わず多くの設計に携わる。2019年3月まで母校の東京芸術大学で教鞭を執り、学生達とともに「劇場型都市計画」などの研究に従事。
日本建築学会賞、村野藤吾賞、日本建築大賞、日本芸術院賞、米国建築家協会ジャパンデザイン賞など数々の賞を受賞。模型やドローイングなど27点がパリのポンピドゥーセンター(仏国立近代美術館)に収蔵されている。北川原温建築都市研究所主宰。東京芸術大学名誉教授。
<中村キース・ヘリング美術館 建築賞受賞歴>
2007 山梨県建築文化賞受賞
2008 アメリカ建築家協会優秀賞受賞、村野藤吾賞受賞
2009 JIA日本建築大賞受賞
2010 日本藝術院賞(建築)受賞
2016 山梨建築文化賞受賞、アメリカン・アーキテクチャー・マスタープライズ(ホスピタリティ部門)金賞受賞
■「北川原温 時間と空間の星座」
会期: 2025年6月7日(土)~ 2026年5月17日(日)
会場:
・中村キース・ヘリング美術館 9:00-17:00(最終入館16:30)
山梨県北杜市小淵沢町10249-7
・ホテルキーフォレスト北杜
山梨県北杜市小淵沢町10248-1
11:00-17:00 ※一般観覧者は1Fロビーのみ、駐車場は美術館と共通
・JR小淵沢駅2階交流スペース
山梨県北杜市小淵沢町1024
※駅付近の市営駐車場をご利用ください
中村キース・ヘリング美術館基本情報
住所: 山梨県北杜市小淵沢町10249-7
お問い合わせ: https://www.nakamura-haring.co...
開館時間:9:00-17:00(最終入館16:30)
休館日:定期休館日なし
※臨時休館についてはウェブサイトをご確認ください。
観覧料: 大人:1,500円 / 16歳以上の学生:800円 / 障がい者手帳をお持ちの方:600円
15歳以下:無料
※各種割引の適用には身分証明書のご提示が必要です。
観覧券購入場所:美術館受付のみで販売
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
小森紀綱と山田康平による2人展「空白の翼廊」が、渋谷区神宮前にあるギャラリー「HENKYO」にて、2025年9月27日(土)まで開催中です。
「翼廊(よくろう)」とは、建築物において鳥の翼のように左右に張り出した部分のこと。日本建築における主な例として、「平等院鳳凰堂」、「平安神宮 神門(応天門)」、「護国神社」などの主要部分に付け加えられています。
©️Akitsuna Komori.Courtesy of HENKYO
©️Akitsuna Komori.Courtesy of HENKYO
以下、ステートメントをご紹介します。
■ステートメント
男は彫刻家だった。昔は祖父に憧れて建築家を志していた時期もあったのだが、気づけば彫刻に魅せられていた。
自身の作品に建築に通ずる美意識を見出し、木や石を削り続けて長い年月を過ごしてきた。だが、いつからか男は違和感を抱いていた。作品は何か(或いは誰か)のために作り続けてきたはずだったが、その「何か」が思い出せない。
ある日、男は夢を見た。柱が立ち並び、アーチが交差し、壁が果てしなく続いていた。見上げれば天井はなく、壁には扉も窓もないのだが、どこからともなく光が降り注いでいた。いや、壁ではなかった。それは果てしなく続く書架だった。書架には無数の書物が並び、そのどれもが彼が彫刻のために描き溜めたデッサンや設計図といった記録だった。中には男の知らない記録まで混ざっていた。やがて、一人の通行人が現れ男に尋ねた。
「これは何の記録ですか?」
「わからない。ただ、書き続けている。」
通行人は本を一冊手に取り、ぱらぱらとめくる。
「これは記録ではなく、空白ですね。」
男は答えなかった。
「あなたの仕事は、いつ終わるんです?」
「終わりはない。」
「では、あなたも書架の一部になっていくんですね。」
目が覚めると、男は奇妙な焦燥感に駆られた。何かを作らなければならない。だが何を作るべきか分からない。
ただ、夢の中の世界がどこかに存在するような気がしてならなかった。
六十歳を目前にしたある日、男が丘の上でデッサンをしていると頭上から二羽の鳥が落ちてきた。
いや、鳥ではない。見事な鳥が彫られた石だった。石は男のすぐ目の前にぼてっと落ち、
一方の鳥の片翼は砕けていた。男は頭を上げてみたがそこに広がるのは広大な青空だけだった。
小森 紀綱/Akitsuna Komori
1997年生まれ
諸宗教の宗教的対象や古典絵画のアトリビュート(特定の人物や神々に帰属する対象物)を“シミュレーショニズム” という絵画系譜の中で引用することで形而上学的絵画を制作している。小森の絵画制作は図像解釈や理論構成、宗教倫理などエピステーメから出発しており、絵画の骨組みとなる要素を複雑に張り巡らせ、時にはちぐはぐに入れ替えることでコードを集積させて超現実的な絵画を構築している。異なる宗教や様式をコラージュするように織り交ぜることで事物に内在していた共通項や相違が紡ぎ出されている。主なコレクションに大原美術館(岡山)。
【主な個展】
2024 「文化と文明」HENKYO (東京)
【主なグループ展】
2025 「Drawings」HENKYO(東京)
2024 「Metamorphosis: Japan’s Evolving Society」WKM GALLERY(香港)
2023 「ART FAIR HENKYO 2023」HENKYO(東京)
2022 「VOCA展 2022」(東京)- 大原美術館賞 -
【主なアートフェア】
2024 「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2024」(福岡)
2023 「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2023」(福岡)
山田 康平/Kohei Yamada
1997年大阪生まれ
キャンバスと紙にたっぷりとオイルを染み込ませることから始まる山田の制作は、起点や輪郭となる黒の線をひき、絵の左上には光に見立てている黄色をのせ、それから強く鮮やかな色で一気に画面を覆います。筆を重ねることでキャンバスの表面は更に滑らかに整えられ、面と面がぶつかる場所から浮かび上がる色は強さを増し、何層にも重ねられたレイヤーから山田作品特有の奥行きが絵画空間に生まれます。2020年に武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻を卒業、2022年に京都芸術大学修士課程美術工芸領域油画専攻を修了し、現在は東京を拠点に活動。
【主な個展】
2025 「支える軽さ」隙間(東京)
2025 「Borderline」Arario Galery Seoul(ソウル)
2023 「Strikethrough」タカ・イシイギャラリー(東京)
2022 「それを隠すように」biscuit galery(東京)
2022 「線の入り方」MtK Contemporary Art(京都)
2022 京都岡崎 蔦屋書店ギャラリースペース(京都)
2021 「road」代官山ヒルサイドテラスアネックスA(東京)
【主なグループ展】
2025 「Fluid in Forms」Arario Galery Shanghai(上海)
2024 「Everywhere It Goes」Mai 36 Galerie(チューリッヒ)
2024 「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」東京都現代美術館(東京)
2024 「コレクション展示:新収蔵作品紹介」群馬県立近代美術館(群馬)
2024 「Abstraction (re)creation―20 under 40-」Le Consortium(ディジョン)
2021 「biscuit galery Opening Exhibition II」biscuit galery(東京)
アートフェア「ARTISTS’ FAIR KYOTO」京都文化博物館別館(京都、2021年、2020年)に参加。
主な受賞は、CAF賞(2020年)入選。
滋賀県立美術館外観(撮影:大竹央祐)
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
1984 年に滋賀県大津市に開館した「滋賀県立近代美術館」。日本画家の小倉遊亀(滋賀県大津市出身)や染織家の志村ふくみ(滋賀県近江八幡市出身)のコレクションは国内随一を誇っています。
2021年6月に館名から近代が外れてリニューアルオープンした「滋賀県立美術館」。展示室の中で「シーン」と静かにする必要はなく、おしゃべりしながら過ごすことができるので、小さなお子さんがいる方も安心して過ごすことができます。
また、目が見えない、見えづらいなどの理由でサポートや展示解説を希望される場合や、来館にあたっての不安をあらかじめ伝えていただければ、事前の情報提供や当日のサポート希望に可能な範囲で対応してくれるなど、鑑賞者に優しい美術館です。
(左から)阿部健太朗氏、吉岡紗希氏 2023年 撮影:橋本大
大分県由布市の廃校をアトリエとして、絵本や絵画、立体作品、イラストレーションなど、日々さまざまな作品を生み出している阿部健太朗(1989- )と吉岡紗希(1988- )による二人組のアーティスト「ザ・キャビンカンパニー」による企画展「ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展〈童堂賛歌〉」が、2025年9月7日(日)まで開催中です。
ザ・キャビンカンパニー『ゆうやけにとけていく』 2023年
2009年のユニット結成以来、40冊以上の絵本を発表し、2024年に『ゆうやけにとけていく』(小学館)で「第71回産経児童出版文化賞産経新聞社賞」、「第29回日本絵本賞大賞」を受賞するなど、高い評価を得ていることで知られています。
2人の活動は絵本の分野にとどまらず、新国立劇場ダンス公演Co.山田うん『オバケッタ』の舞台美術(2021年)を手がけたり、「NHKおかあさんといっしょ(Eテレ)しりたガエルのけけちゃま」のキャラクターデザインと美術制作、歌手あいみょんの「傷と悪魔と恋をした!」ツアーパンフレットの表紙および本文挿絵の制作を担当。さらに、2023年から3年にわたり「こどもの読書週間」ポスターの絵を担当するなど、多方面に活動の場を広げています。
展覧会のタイトル〈童堂賛歌〉とは、本展のためにつくられた言葉です。「飽きることなく何十回でも何時間でもすべり台で遊び続ける、子どもの時間のとらえ方や感覚に象徴される「童」と、本屋や薬局、駄菓子屋などの店名にも使われ、「万物を受け入れる」という意味の「堂」が組み合わされています。
本展では、活動初期から現在までの絵本原画の数々に加え、立体造形、映像作品などを一堂にご紹介。展覧会は7つのテーマの部屋で構成され、まるで空間が大きな1冊の本になったようなしかけが満載です。エネルギーに満ちた、ザ・キャビンカンパニーの世界を身体全体で楽しむことができます。
次に、本展の見どころをご紹介します!
1.「ザ・キャビンカンパニー」関西初の大規模個展は、お子さんと楽しめる!
ザ・キャビンカンパニー《アノコロの国》 2024年 撮影:吉森慎之介
40冊以上の絵本を発表し、数々の賞を受賞するなど、企業やキャラクターとのコラボレーションも話題となっている「ザ・キャビンカンパニー」。結成から16年目を迎える2人の公立美術館初の巡回大規模個展です。
ザ・キャビンカンパニーの世界を全身で感じられる本展は、お子さんが楽しめること間違いなし! また、大人にとっても刺激的な体験になることでしょう。
2.原画はもちろん、アニメーションに巨大立体造形、さらには会場に廃校(アトリエ)も?!
ザ・キャビンカンパニー《オボロ屋敷》 2020年 撮影:橋本大
活動初期から現在までの絵本原画の数々に加え、影絵あそびから着想を得た映像作品《オボロ屋敷》、段ボールや板、紙粘土などで作られた、大小様々な立体作品で構成された大型インスタレーションを展示。
さらには、2人の活動拠点である大分県由布市の元廃校のアトリエの様子もご紹介。魅力的な作品が生まれるその背景にも触れることができます。
3.けけちゃまに、あいみょん、ポケモンも! お馴染みのキャラクターや企業とのコラボが多数登場
ザ・キャビンカンパニー《しりたガエルのけけちゃま》 おかあさんといっしょ (NHK-Eテレ) 2023年 ©NHK
「ザ・キャビンカンパニー」は、これまで様々なアーティストや企業とコラボレーションを行ってきました。NHK-Eテレ『おかあさんといっしょ』に登場する「しりたガエルのけけちゃま」のキャラクターデザインの原画や、ミュージシャン・あいみょんのツアー「傷と悪魔と恋をした!」のパンフレット原画、そして絵本『ポケモンのしま』原画など、貴重なコラボ資料の数々をご覧いただけます。
4.滋賀県立美術館限定! 本展に合わせた新作を披露
展覧会会場の中間地点に位置する「ソファのある部屋」において、本展に合わせた新作を発表します。部屋から見える素敵な日本庭園の風景と、「ザ・キャビンカンパニー」の詩が融合する作品となっています。この機会に本会場でしか観ることのできない作品です。
5.塗り絵などが楽しめるワークショップコーナー
展覧会の最後には、鑑賞者がいつでも参加できるワークショップコーナーを設置。「ザ・キャビンカンパニー」の塗り絵が体験できるほか、絵本の読み語りができる小さなステージなどもあり、展覧会とあわせて楽しむことができます。
■「ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展〈童堂賛歌〉」
会期:2025 年6月21日(土)~9月7日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし祝日の場合には開館し、翌日火曜日休館)
開場時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)
会場:滋賀県立美術館 展示室3ほか
観覧料:一般 1,200 円(1,000 円)
高校生・大学生 800 円(600 円)
小学生・中学生 600 円(450 円)
※( )内は 20 名以上の団体料金
※企画展のチケットで展示室1・2で同時開催している常設展も無料で観覧可
※未就学児は無料
※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳をお持ちの方とその介護者
は無料
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
シンガポールを拠点に、世界有数のラグジュアリーホテルを手掛ける「カペラホテルグループ」の日本第一号店として、2025年5月1日(木)に開業した、難波宮跡と歴史ある大阪城の間に位置する「パティーナ大阪」。
この度、シンガポールの主要経済セクターの一つである観光について、主導的に発展させることを担う政府機関「シンガポール政府観光局」および、障害のある方々(PwDs)に対して、芸術を通じた学びと就業の機会を提供することを目的に活動を行っている、1993年に設立されたシンガポールのNPO団体「ART:DIS」とタイアップしたアート展示イベント「重い線、軽やかなタッチ」を、2025年8月23日~9月7日の間、「パティーナ大阪」1階のギャラリースペースにて開催中です。
岡元俊雄氏
フェーン・ウォン氏
「重い線、軽やかなタッチ」は、日本人アーティストの岡元俊雄氏と、シンガポール人のフェーン・ウォン氏による共演であり、両者の独自の表現が『ジェスチャー』『リズム』『注意力』について静かな瞑想をもたらします。
岡元氏の力強い墨のドローイングは、床に寝転び音楽を聴きながら描かれる、重なり合う線の集積から生まれたものです。一つひとつの線が繰り返しと動きを通じて形を生み、作品全体に独特のリズムと躍動を与えています。人物や風景、雑誌、画集などをモチーフに、墨汁と割り箸を用いて制作。全体像を素早く捉えて描いた後、線の上を何度も塗り重ねることで、飛び散る墨の滴や擦れた線が、豊かな表情とエネルギーを作品に加えています。
対照的に、ウォン氏の作品は、廃棄された掲示用紙を繊細な切り絵へと昇華させる、緻密な技術と詩的な感性が光ります。色彩や遊び心、丁寧な手仕事が融合した作品群には、彼女ならではの個性と直感的なデザインセンスがあふれています。
シンガポール出身の彼女は、その鮮やかで洗練された表現により高く評価されており、2023年には「第1回 UOL × Art:Dis アート賞」にてグランプリを受賞。翌2024年には初の回顧展を開催し、約20年にわたる創作の軌跡をたどる約40点の作品が披露されました。
またウォン氏の作品は現在、「2025年大阪・関西万博」のシンガポールパビリオン内のインスタレーションとしても展示されていて、その光と音のショーの創造的なインスピレーションとなり、多くの訪れる人を魅了しています。
本展では、両作家の制作の根底にある感性に鑑賞者が耳を傾け、一筆の線や一回の切り込みといった些細に見える行為が持つ大きな表現力について考える機会を提供します。
このコラボレーションは、障害のあるアーティストをはじめ、多様な背景を持つクリエイターたちに表現の場を提供するとともに、文化や国境を超えた交流を促進することを目的としています。アートを媒介に、互いの違いを理解し、尊重し合うきっかけを生み出すことで、インクルーシブで多様性を重んじる社会の実現を目指しているとのことです。
■「重い線、軽やかなタッチ」
期間:2025年8月23日(土)~9月7日(日)
会場:パティーナ大阪 1階ギャラリースペース(入場無料)
主催:ART:DIS
後援:シンガポール政府観光局、パティーナ大阪
協力:やまなみ工房、国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
米国イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人である日本イーライリリー株式会社。日本の患者さんが健康で豊かな生活を送れるよう、日本で50年にわたり最先端の科学に思いやりを融合させ、世界水準の革新的な医薬品を開発し提供してきました。現在、がん、糖尿病、アルツハイマー病などの中枢神経系疾患や自己免疫疾患など、幅広い領域で日本の医療に貢献しています。
日本イーライリリー株式会社は、“がんと生きる想い”を絵画・写真・絵手紙とエッセイで伝えるコンテスト「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」の授賞式を、2025年6月6日(金)に開催しました。
リリー・オンコロジー・オン・キャンバスは、がん患者さんやその家族、友人を対象に、がんと告知された時の不安や、がんと共に生きる決意、がんの経験を通して変化した生き方などの「がんと生きる想い」を、絵画・写真・絵手紙とエッセイで表現するコンテストです。日本イーライリリーが 2010 年に創設してから今回で第15回目となりました。
選考は作品の技術的・芸術的な評価ではなく“想いの表現”を重視しており、今回は104点の応募の中から、5名の審査員により、絵画・写真・絵手紙の 3 部門でそれぞれ最優秀賞1名、優秀賞1名、入選2名の計12作品が選出されました。本コンテストはがん患者さんのアートセラピーの場にもなっており、審査員の1人である森香保里先生はアートサイコセラピストでもあります。
日本イーライリリー 執行役員 オンコロジー事業本部長 ステファン・クーレンコッタ氏は、「15周年という節目を迎えたリリー・オンコロジー・オン・キャンバスに、大きな誇りと感謝の気持ちでいっぱいです。このジャーニーを共に歩んでくださった受賞者、審査員、そしてすべての参加者と支援者の皆様に、心からお礼を申し上げます。
このコンテストのアート作品やエッセイは、単なる創作物ではありません。がんと共に生きる人々の強さと勇気を深く表現した作品です。これらの作品は、私たちに深い感銘を与え、大きな励みとなっています。
日本イーライリリーは、患者さんを支援し、元気を与える“場”をつくり、患者さんとの有意義なつながりを育むことに尽力しています。私たちは、がんに関わる人々が自分らしい生活を続けられるよう、研究開発やその改善を行うことを使命としています。私たちは、この使命に全力を尽くし、患者さんの道のりの一歩一歩を支援してまいります」と語っています。
今回は、絵画部門、写真部門、絵手紙部門において、最優秀賞を受賞した3作品をご紹介します。
1.【絵画部門】最優秀賞:中井 智子(なかい ともこ) さん <愛知県>
『来週の約束』(エッセイ抜粋)
ある日、耳が痛んだ父が受診すると、お医者様から、「外耳道がんですね。このままなにもしなかったら、もって二年です。」と余命宣告があった。
手術をして退院した後は、週末に父と母と私の三人で畑仕事をするのが生活スタイルとなった。また、夕食時ぐらいだった家族の会話が、畑仕事帰りの車内で、来週の話をするようになった。世間一般的には、ただの来週の予定。私には、余命宣告された父と来週の約束ができるという幸せな時をかみしめられる時間。
自分のことながら、この数ヶ月間で家族の有り難みを感じられるようになった心境の変化には驚いた。父ががんになったことは良くないことだが、家族との在り方を考え直す良いきっかけとなった。
一年中楽しめるように作られている畑。毎週「来週の約束」を穏やかに積み重ねて、未来があると信じて共に歩いていこう。
【審査員コメント: 堀均氏(日本対がん協会)】
この絵を見た瞬間に、家族全員が畑でニコニコと畑仕事をしている、なんだかあったかいんだ、このあたたかさは何でだろう、と感じました。
エッセイを読むと、がんに罹患した後少しずつ良くなっていって、畑の仕事をしている間に、来週の約束ができている。これはがんの患者にとってとても素晴らしいことです。
未来が見える、未来を見据えて、来週も頑張ろう、来週また美味しい作物を獲れるね、という世界を感じ、とても感動しました。おめでとうございます。
【本人コメント】
本日はこのような歴史あるコンテストで最優秀賞という名誉を頂き誠にありがとうございます。
まさか自分の父親のがんがきっかけで描いた絵と綴ったエッセイのおかげで、このような場所に立てるとは全く思っておりませんでした。
家族ががんになったことで、多くの人が日々何気なく交わしている来週の約束ができるということが、当たり前ではなく、今でも次が最後になるかもという、不安をいただきつつ生活しています。
しかし、畑へ行く度に、鳴くのが上手くなっていくウグイスのことや、今年はどんな作物を植えようかなという、家族で同じ話題を語れる喜びを感じられるようになり、自分でも気がついてなかった己の心の内を見つめ直し知ることができました。
この作品では、私なりにがんとともに生きる私の物語を表現することができました。私の作品を通して、がん患者の方や、共に歩んでいる家族の心を癒したり、励みになってくれますようにと願っております。
2.【写真部門】最優秀賞:轟 穂乃佳(とどろき ほのか)さん <岐阜県>
『父のレンズ』(エッセイ抜粋)
父が、ひと月の間に、五回も交通事故を起こした。検査の結果は、「神経膠腫(グリオーマ)」。治療により一命を取り留めたが、視野の左側を失った。
その後、家の中では、父がよくぶつかる場所には赤い印を付け、机の角や柱には赤ちゃん用の保護クッションを付けた。父は、今まで何でも一人でこなしてきたからか、「一人でできる!」と意地を張った。それでも見えない壁にぶつかり物を落とすと、母と私は胸が痛んだ。
ある日、リビングに向かうと、父が遠くを見つめ、今にも何かが弾けてしまいそうな顔をしていた。私は父の左頬にそっと手を当てた。「辛いの?」。父は何も言わずに、見えない左側から私を探した。そして深く呼吸をし、また遠くを見つめた。父の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
私は咄嗟にカメラを手にした。ファインダー越しに見る父は、とても美しかった。抱える辛さ、悲しみ、家族への愛、そして力強い生命力、そのすべてが凝縮されているように感じた。その時、私は父を通して、写真の真の意味を知った。それは単に目の前の光景を記録するものではなく、人の心を写し出すものなのだと。
【審査員コメント:亀山哲郎氏(カメラマン)】
素晴らしい写真をありがとうございました。僕は上手な写真はいらないよといつも言っています。いい写真が欲しい。この作品で轟さんはそれを見事に具現化してくださいました。
創造物というものは、己の姿をそこに投影して映すことであり、それが写真の一番大きな役割だと思っています。おめでとうございます。
【本人コメント】
一言で言います。父は生きています。皆様に感謝しています。ありがとうございました。
3.【絵手紙部門】最優秀賞:齋藤 紘子(さいとう ひろこ)さん <神奈川県>
『伝える事で役に立つ』(エッセイ抜粋)
私が乳がんを告知されたのは、31歳の時でした。その頃友人は結婚や出産で幸せそうな時期でしたので、自分がとても惨めで不運に感じていました。
今は元気に過ごしていますが、14年経った今年、なんと私の姉も乳がんになってしまったのです! 幸い早期発見だったので手術だけで済み、早々に治療を終える事ができました。私が乳がんになったので、姉も欠かさず乳がん検診を受けており、私が治療を乗り越えた姿を見て、治療の流れも聞くことができたので、とても心強かったと感謝してくれました。
今まで私は乳がんになってしまった自分を否定的に感じ、誰にも言えずにいたのですが、自分の辛かった経験も、隠すのではなく伝えていけば、知識という立派な贈り物になることに気づきました。
乳がん検診を受診すること、罹患してしまったとしても、正しく治療を受ければ、必要以上に怖がる事はないと伝えたいです。大丈夫!不安なのはあなただけじゃない。皆が感じる事と、悲しい気持ちに真に寄り添えるのは経験した者だと思うので、これからは自分の体験談を伝えていこうと思っています。
【審査員コメント:西村詠子氏(NPO 法人がんとむきあう会)】
がんになった人の経験やその時の気持ちが、他のがんになった方の理解に繋がり、支えていく力になるのだと思います。それをお伝えすることで、またその方達の戦おうとか、困った時の辛い気持ちに寄り添うような経験になると思います。
がんになったことは変えられないけれども、がんになったことに意味を見つけられるのは自分だけだと思います。人のために何かできる。それはきっとご自分の力にもなると思います。
知識というものをプレゼントとして、手から手へと渡すこの作品が本当に心に残りました。おめでとうございます。
【本人コメント】
私が乳がんになったのが31歳の時で、友達はみんな結婚したり出産したりと幸せな話題が多かった中で、自分だけがんになってしまって、不幸で惨めだなぁと思って、ほとんど友人に言うことはありませんでした。
そのため、抗がん剤で髪の毛が抜けた時も、ウィッグをかぶって結婚式に参加をしていました。そこから14年経って、去年私の姉が乳がんになってしまって、その時は自分の病院を紹介したり、自分が経験した治療内容を伝えたりしました。それが姉はすごく心強くて支えになったと言ってくれました。
そこで思ったのが、今まで自分はずがんになったことをずっと隠していましたが、自分の中で留めてしまうと、それはただの辛い思い出で終わってしまうので、人に伝えていくことによって、その人の大きな知識になるんだなということに気づきました。そのため、今回このコンテストに応募させていただきました。これからも少しずつですが、自分の体験を伝えていこうと思います。ありがとうございました。
Michael and Sandy Marsh, Amarillo, Texas, September 27, 1974
© Stephen Shore. Courtesy 303 Gallery, New York.
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
今年で7回目を迎える、日本最大級の都市型アートフェスティバルをもつプラットフォーム「T3(ティースリー)」は、東京・八重洲、日本橋、京橋、そして銀座までエリアを拡大して、2025年10月4日土)から開催されます。
都市型アートフェスティバル「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」を皮切りに、アートフェア「T3 PHOTO ASIA」など、10月27日(月)まで24日間に渡って様々な企画で盛り上げていきます。
T3は、フェスティバル、フェア、育成事業からなる包括的な写真プロジェクトです。2017 年の設立以来、屋外展示や地域連携を強みに都市型アートフェスティバルとして進化し、昨年は75万人以上が来場。文化と経済の相乗効果を生み出しながら着実に成長してきました。
T3という名称は、アメリカの社会学者であるリチャード・フロリダが著書『クリエイティブ資本論』で提唱した都市の繁栄に不可欠な三つのT(技術、才能、寛容性)の概念に由来しています。T3は「写真」の力を最大限に活かし、東京をNYやパリと比肩する文化の中心地へと成長させることを目的としています。
東京の都市空間を活用して国際的なアーティストの作品を展示し、写真を通じた文化観光の促進を目指す都市型アートフェスティバル「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」(フェス)、アジアのギャラリーやアーティストが集結するアートフォト市場を形成し、グローバルな写真文化を牽引するアートフェア「T3 PHOTO ASIA」(フェア)、さらに新進・中堅作家、キュレーター、批評家を対象とした育成プログラムを提供し、次世代の文化担い手を支援するプログラム「T3 NEW TALENT」(育成事業)という 3 つの柱を通じて、写真芸術を軸に新たな価値を創出し、次世代へと文化をつなぐ場を提供します。
1.東京の都市空間を活用しながら国際的なアーティストの作品を展示し、写真を通じた文化観光の促進を目指す、日本最大級の都市型芸術祭「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」(フェス)
© Melissa Schriek
2025 年度のテーマは、「庭 / Garden」。フランスの庭師で思想家のジル・クレマンは『動いている庭』において「できるだけあわせて、なるべく逆らわない」と語り、外来種や偶発的な変化を排除せず、むしろ受け入れながら共存していく “生きた庭” の可能性を説きました。そこにあるのは、完璧な管理や静的な秩序ではなく、混ざり合い、動き続ける生命の力です。
本年、T3 はそうした「庭」を写真表現によって都市空間に持ち込みます。人間によって設計された、最も象徴的な人工の秩序である「都市」に、異物のように差し込まれる写真作品や展示の数々。それらは、外来種のように空間と混ざり、拡張し、新たな「庭」をかたちづくっていきます。銀座から京橋、八重洲、日本橋に点在する「庭」が、訪れる人々との偶発的な出会いや交わりを生み出すことで、新たな都市の可能性を見出すことができるとしたら。東京という都市が、内に秘めるまだ見ぬ風景を写真によって生み出していきます。
企画展① 「City as Garden」と題し、「都市」を固定されたインフラとしてだけでなく、人の行為や視線によって柔らかく耕される「創作の庭」と捉えて作家たちが個展という形で展開。スティーブン・ショアやメリッサ・シュリークなどが参加します。(場所:東京ミッドタウン八重洲、東京建物八重洲ビル、東京建物日本橋ビル)
企画展② 日本の写真文化の世界進出を支えるプロジェクト「T3 NEW TALENT」の企画展では、キュレーター部門で選ばれた池田 佳穂が、同プロジェクトのアワードで選出された 5 名のアーティスト(鈴木 麻弓、千賀 健史、南川 恵利、宮地 祥平、THE COPY TRAVELERS)を紹介するグループ展を開催します。(場所:後日発表)
企画展③ MEP(パリ)が推進する新進作家と実験的な写真表現の発信プラットフォーム「STUDIO」と連携した国際共同キュレーション企画「STUDIO+拡張する現代写真」を実施します。(場所:TODA BUILDING)
企画展④ 「Iʼm So Happy You Are Here|写真集でたどる日本の女性写真家のまなざし」では、1950 年代以降に活躍した日本の女性写真家による代表的な写真集を通して、その視点や表現の多様性を紹介する展覧会です。本展は Aperture 社(ニューヨーク)から出版された 『Iʼm So Happy You Are Here:Japanese Women Photographers from the 1950s to Now』をもとに企画されています。(場所:東京スクエアガーデン)
さらに会期中、スティーブン・ショアなど国際的な作家やキュレーターが来日し、トークショーをはじめ、人と人が交わる場を生み出す様々なイベントをエリア内の会場で開催します。
日程 : 2025 年10月4日(土)~27日(月) *24日間
開催エリア : 東京・八重洲、日本橋、京橋、銀座エリアの屋内、屋外会場
入場 : 無料
主催 : 一般社団法人TOKYO INSTITUTE of PHOTOGRAPHY
主管 : 株式会社シー・エム・エス
企画 : T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 実行委員会
HP : https://t3photo.tokyo/
公式インスタグラム : @t3photofestivaltokyo
2.アジア全域における写真の文化的・創造的な可能性を再考することを目的にスタートした写真フェア「T3 PHOTO ASIA」
© Doyeon Kwon(KR),Bukhansan
地域の歴史や美学、ユニークなローカルストーリーに光を当てることで、アジアのギャラリー、アーティスト、機関をつなぐプラットフォームを目指します。アジアの写真文化を発見・文脈化し、世界へと発信するダイナミックなエコシステムの構築を目指しています。
T3 PHOTO ASIA ディレクターのキム・ジョンウンは次のように述べています。「2025年は台湾をゲスト国に迎え、その豊かな写真遺産とアジアのクリエイティブ・コミュニティにおける存在感に注目します。今年の特別展は、T3 PHOTO FESTIVALとの連携企画として開催され、『庭(Garden)』という年間テーマをもとに、自然と都市、記憶と風景の関係を写真を通して新たに捉え直すことを試みます。
<Masters 展>
今年のマスターズ展では、アジアの写真言語のパイオニアと称される中国の伝説的な作家、ラン・ジンシャン(1892-1995)のヴィンテージ・プリントを通して、台湾にスポットライトを当てます。ラン・ジンシャンの革新的な作品は、中国の古典的な山水画の美学と写真というメディアを見事に融合させ、伝統と現代性、ビジョンとナラティブの合間に時代を超えた対話を生み出しています。
<Discover New Asia vol.2 >
昨年から開催しているキュレーション・プラットフォーム「ディスカバー・ニュー・アジア」の第2回目は、アジア全域から新進アーティストとベテランアーティストの両方に焦点を当てます。今年の特別テーマ『The Shape of Asian Landscapes : Then and Now』では写真を通して、風景や自然が単に観察されるだけでなく、どのように想像され、記憶され、変容していくのかを探ります。
この展覧会では、時間、感情、生態系への意識が場所や記憶と絡み合い、新たなビジュアル・ボキャブラリーを生み出し、アジア特有の視点を探求するよう観客を誘います。海岸線から人工生態系、庭園から都市周辺まで、これらの作品は、私たちがアジアの移り変わる地形をどのように見て、感じ、生息しているのかを再定義します。
日程 : 2025 年10月11日(土)13:00~20:00/10月12日(日) 13:00~20:00/10月13日(月)13:00~17:00
会場 : 東京ミッドタウン八重洲 4F&5F(東京都中央区八重洲2-2-1)
出展ギャラリー : Each Modern(台湾)、Aki Gallery(台北)、Shugo Arts(東京)、Taro Nasu(東京)、Carin(ソウル)、AUGHT(ソウル)など約20ギャラリー
主催 : 一般社団法人TOKYO INSTITUTE of PHOTOGRAPHY
主管 : 株式会社シー・エム・エス
HP : https://t3photo.asia/
公式インスタグラム : @t3photoasia
<インフォメーションセンター>
①東京メトロ銀座駅
②東京メトロ京橋駅 中央区観光情報センター
「カメラを持って銀座エリアをまち歩きしたい」を生み出す場所に! 週末限定で「まち歩き」を体験するツールとしてのカメラの貸出を実施します。
日程 : 2025年10月11日(土)・12日(日)・13日(月祝)・18日(土)・19日(日)・ 25日(土)・26(日)
機材サポート : RICOH
T3 ファウンダー/速水 惟広
写真雑誌編集長やギャラリーディレクターを経て、2017年に上野公園にて東京で初となる屋外型国際写真祭「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」を開催。その後、2020年より東京駅東側エリアに舞台を移す。これまでに手掛けた主な企画展に「態度が<写真>になるならば」(共同キュレーター マーク・フューステル 2023)、「The Everyday -魚が水について学ぶ方法-」(共同キュレーター きりとりめでる、2022)ほか。海外の国際写真祭やアワードにおける審査員など多数。日本大学芸術学部写真学科非常勤講師。
⼤⻄功起⽒:岐⾩県⾼⼭市の⼤⼿家具メーカーで⽣産管理兼職⼈を経て、2015 年に株式会社アーティストリーへ⼊社。家具職⼈からCNCオペレーターを経て3DX ⽊⼯技術の発展を牽引し、営業開拓や経営企画、⼯場改⾰に尽⼒。現在は、建築、サウナ、⾞両、アートなど様々な分野にも⽊⼯技術を応⽤している。
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
商業施設やオフィス空間をはじめ、多様な空間のプロデュースを⼿掛ける株式会社船場は、2025年9⽉1⽇付で、⽊⼯ディレクター⼤⻄功起(おおにし あつき)⽒を、船場及びグループ会社である株式会社 装備の⽊⼯クリエイティブディレクターに迎えました。
⼤⻄⽒は、5軸CNC(Computer Numerical Controlの略。コンピューターが数値を制御する加⼯技術)を駆使した⽊材加⼯を強みに、⽊⼯の世界に新しい潮流をもたらしている特注家具メーカー、株式会社アーティストリーに所属。「3DX ⽊⼯」と呼ばれる新ジャンルを切り拓き、従来の⼿作業では不可能だった曲線構造や⽴体的な加⼯を実現してきました。
⽊⼯において世界各国では、設計から加⼯に早期からデジタル技術を取り⼊れ、進化を続けており、⽇本でも設計の3D化は進んできました。しかし、まだ加⼯側では3D技術の活⽤は少なく、デザインアイデアの具現化⼒では遅れを取っているのが現状です。その中でアーティストリーは、作り⼿として、⽇本におけるデジタル⽊⼯のフロントランナーとして存在感を⾼めており、⼤⻄⽒が⼿掛ける数々のチャレンジングな⽊⼯家具や空間は、ウッドデザイン賞をはじめ国内外のデザインアワードで⾼い評価を得ています。
船場×装備×⼤⻄⽒で拡がる⽊⼯での空間表現の可能性
装備は、船場の創業間もない時代に誕⽣したグループ会社で、数⼗名の⽊⼯職⼈が所属し、⽊材選びから緻密な⼿加⼯まで、⽊を活かした空間プロデュースの要を担っています。
今回、⼤⻄⽒がクリエイティブディレクターとして加わることで、船場の空間デザイン⼒に、装備が培ってきた精緻な職⼈技術と、⼤⻄⽒のデジタル⽊⼯技術を掛け合わせることが可能になります。これにより、⽊材の多様な魅⼒を引き出す、より独創的で先進的な空間プロデュースを実現していくとのこと。
この度の就任について大西氏は、以下のように述べています。「⽊⼯という仕事を⼦供たちの憧れの仕事にしたい!という⼈⽣⽬標を持って、⽇々、活動をしております。この激動の変化の時代に、今回のような素晴らしい企画のお声がけをいただき感謝しております。建築内装業界、⽊⼯職⼈という職業の発展に貢献できるような魅⼒的なコラボレーションにしたいと考えております」。
第1弾の取り組みとして、2025年10⽉22⽇(⽔)より開催する「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2025」にて、新たに制作したストリートファニチャーを初公開します。これからの
展開にぜひご期待ください。
■3DX ⽊⼯技術を活⽤した⼤⻄⽒の過去実績
EXPO 2025 ⼤阪・関⻄万博 JAPAN マルシェ停留所
第2名古屋三交ビル 1階エントランス MUQUA オリジナルベンチ
松坂屋名古屋店 moment bench(船場協業実績)
NARA プロデュース わの休憩所(ウッドデザイン賞)
■株式会社 装備の過去実績
サントリー⼭崎蒸溜所 「バー露⼝」移転プロジェクト
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
体験型コンテンツ「リアル宝探し」の企画・制作・運営を⼿がける株式会社タカラッシュは、体験型エンタメ施設「NANICA-NAGOYA-」を2025年12⽉23⽇(⽕)に愛知県名古屋市にオープンします。
東京・下北沢に2025年2⽉に第1号店をオープンし、わずか半年で約15,000名が来場。巨⼤な絵画から店内に⼊るという仕掛けで、SNSや⼝コミでも話題を呼んでいる体験型エンタメ施設「NANICA」。次に「NANICA」がオープンする地として選ばれたのが名古屋です。
タカラッシュは、2006年から定期的に博物館 明治村(愛知県⽝⼭市)で様々な謎解きアトラクションを⼿がけており、これまでに累計約100万部を突破。国内でも数少ない“ミリオンヒット”を達成した謎解きシリーズとして、世代を超えて⼈々を魅了し続けています。
今回は、より謎解きを深く楽しみたいというニーズに応えるとともに、すでに500万⼈を超えると⾔われる謎解きファンのさらなる潜在層の⽅々に、まずは気軽に体験してほしいという想いから、東海エリアに初上陸することとなりました。
テーマは「⼈間界から隠された魔法世界」。名古屋の「NANICA」でも、⼊⼝は巨⼤な絵画で隠されています。参加者は、500㎡を超える広⼤な敷地を舞台に、さまざまな謎解きコンテンツを体験することができます。それぞれ異なるテーマの部屋を舞台に、複数のエリアで構成される「NANICA-NAGOYA-」の⼤きな特徴は、上質な空間での周遊型コンテンツ。
「魔法を解き明かす」をテーマに、謎解きコンテンツを複数展開し、初⼼者から上級者まで楽しめる幅広い難易度をご⽤意しています。各コンテンツをクリアするごとに⼿に⼊る〈魔法カード〉は、あなたの冒険の記録としてお持ち帰りいただけます。集めていくとナニカが起こることも。謎を解くだけではない「ナニカ」があなたを待っています。
施設は、各テーマで空間の美しさと謎解き体験、どちらも楽しめる設計となっています。
・ 鏡の異変を探す不可思議な謎
・ 時が⽌まった部屋での謎解き
・ 逆転不能のイカサマカジノ
・ 魔⼥が残した占星の部屋
など、 各テーマで空間の美しさと謎解き体験、どちらも楽しむことが可能です。
魔⼥の物販コーナーでは、魔法モチーフの雑貨や持ち帰り謎、オリジナルドリンクも販売予定。また、施設内の周遊だけではなく、街歩きの謎解きもご⽤意。さらに持ち帰り謎は、店舗の世界観に合う商品をNANICA以外の多くの謎解きブランドを取り扱い、謎解きのセレクトショップとしても名古屋最⼤を⽬指すとのこと。
株式会社タカラッシュ CMOの阿部勇雅氏は、この度のオープンについて以下のように述べています。「NANICA 下北沢では、『空間のクオリティがすごい』、『まるで⾃分が物語の中に迷い込んだよう』というお声を多くいただき、空間・⾳楽・キャストが⼀体となって“謎を解く瞬間まで物語の中で過ごす”という体験が、多くの⽅に⽀持されています。そのクオリティを更にレベルアップさせ、名古屋にオープンします。
ただ、私たちが⽬指しているのは、“謎解きが得意な⼈だけの施設”ではありません。初めて謎解きを体験する⽅でも“ちょっとした好奇⼼/ワクワク”が必ず⽣まれる仕掛け・空間をたくさんご⽤意しています。また、今回の「NANICA-NAGOYA-」は、“街そのものが物語と繋がっていく拠点”としても機能します。栄エリアにNANICAができることで、地域の新しい回遊スポットとしても貢献し、成⻑していければと思っています」。
12⽉のオープンに向けた詳細は、今後SNSでも順次公開していくそうなので、ぜひご期待ください。
■NANICA-NAGOYA-
住所:愛知県名古屋市中区栄 3 丁⽬ 32-6BECOM SAKAE 4F
アクセス:名古屋市営地下鉄名城線「⽮場町」駅 徒歩3分
オープン⽇:2025年12⽉23⽇(予定)