執筆者:遠藤友香
株式会社ヘラルボニーが、初めて主催した国際アートアワード「HERALBONY Art Prize 2024(ヘラルボニー・アート・プライズ 2024)」。同社は、障害のある方がひとりの作家としてその才能が評価され、さらなる活躍の道を切り開いていけるようにとの思いを込めて、「HERALBONY Art Prize 2024」を創設しました。「国籍や年齢はアンリミテッド!」であるとし、世界中の障害のある表現者を対象として、今年1月31日「異彩(イサイ)の日」から3月15日の期間中、世界28カ国・924名のアーティストから総数1,973点の作品を応募。作家のキャリアを新たな高みへと押し上げ、従来の「障害とアート」のイメージを塗り替えていくとのことです。
《ヒョウカ》浅野春香
今回グランプリに輝いたのは、仙台市在住の浅野春香氏の作品「ヒョウカ」。グランプリ作品受賞作家には、創作活動を奨励する資金として賞金300万円が贈られるほか、ヘラルボニーと作家契約を締結し、今後さまざまなライセンス起用により国内外にその異彩を発信していくそうです。
グランプリをはじめとする各受賞作家と最終審査進出作家の総勢58名による全62点の作品を一堂に展示しているアート展「HERALBONY Art Prize 2024 EXHIBITION」は2024年9月22日(日)まで、三井住友銀行東館 1F アース・ガーデンにて開催中です(入場無料)。
浅野春香氏
浅野氏は、20歳で統合失調症を発症後、入退院を繰り返しながら闘病を続けています。本格的に絵を描き始めたのは29歳のとき。受賞作品である「ヒョウカ」は「評価されたい」という作家の純粋な感情から制作されたそうです。作家は以前までその欲求を「恥ずかしいこと」だと思っていましたが、ある人から「それもあなたの素直な気持ちの表れ」と言われたことをきっかけに、ありのままの気持ちを表現して良いのだと気づきました。本作は満月の夜の珊瑚の産卵をテーマに、切り広げた米袋に満点の星空や宇宙、満月などのモチーフが緻密に描かれています。母親の胎内にいた頃の情景や、珊瑚の研究者である父親のことなど、作家にとって大切な存在である両親からインスピレーションを受けているとのこと。
今回のグランプリの受賞を受けて浅野氏は、「バスに乗っているときに(グランプリ受賞に関して)メールで知らせを受けたのですが、嬉しすぎて何も感情が湧いてこなかったんです。それぐらい嬉しかったんです。
(作品制作は)まず最初に、30キロのお米の入った袋をハサミで開きます。開いたら、ペンでシワをなぞって、それをポスカでなぞります。その後、隙間を色を塗って埋めて、丸を描いていきます。作品制作は、7ヶ月かかりました。他の作品も大体7ヶ月くらいかかることが多いです。(作品の)中に動物が隠れてるので探して欲しいですね。お父さんも隠れてるので探してみてください。
今、友達の絵をオマージュした作品を制作しています。その作品は動物がいっぱい書いてあります」と語りました。
(左から)へラルボニー代表の松田崇弥氏、浅野春香氏、へラルボニー代表の松田文登氏
へラルボニー代表の松田崇弥氏は、本国際アートアワードに関して、「今回のプライズは、私自身が2023年の5月にフランスに行くタイミングがありまして、世界中の障害のある作家のギャラリストで、今回の審査員であるクリスチャン・バーストさんに接触させていただいたり、あとシャンゼリゼ通りで障害のある人たちが当たり前に働いているカフェが存在していたり、本当に世界で色々な福祉施設がある中で、やはりなかなか支援的な構造から脱却できないんですよ。
日本で考えられているような課題と非常に近しい部分を感じまして、これを世界のコンペティションとして大きく打ち出すような可能性っていうものはないんだろうかという思いを込めて、この度ヘラルボニー・アート・プライズというものを創設しました」と述べました。
2024年8月8日にパレスホテルにて開催された「HERALBONY Art Prize 2024(ヘラルボニー・アート・プライズ)」の授賞式では、浅野氏の作品「ヒョウカ」について、ヘラルボニー代表の松田崇弥氏、文登氏より「作品タイトル『ヒョウカ』には、浅野さんが『社会で評価されたい』という強い思いが込められていると伺いました。障害のある方が『ピュア』とイメージされやすい一方で、評価されたい、自立したいという思いは、一人一人が持つ権利であると感じました。第1回のグランプリを浅野さんが受賞されたことをとても嬉しく思います。この賞が浅野さんにとって誇りとなるよう、私たちも努力して参ります」といったコメントが贈られました。
また、審査を通じて、グランプリ1作品の他、協賛企業によって選出された企業賞受賞作品として7作品、審査員特別賞受賞作品として4作品が選出されました。
【企業賞】JAL賞/《タイトル不明》水上詩楽
《タイトル不明》水上詩楽
幼少期にアニメのキャラクターを好んで描いていた水上詩楽氏は、やまなみ工房に通所し始めてから、部屋にあった画材(筆や線引き棒)を手に取ると模様を描き始めました。様々な色でいくつも描かれた扇形と点の模様。筆の動きや点の打ち方は規則正しく、同じ動作をゆっくりと繰り返します。画用紙上の線や点はイメージしているものがあるのか、色や動きを楽しんでいるのか、何を感じて描いているのかは不明ですが、気分のバロメーターのように、その時の彼の気持ちを線の筆使いや整列した点が表しているかのようです。
日本航空株式会社のコメント
社員投票でJALグループ社員の心を掴んだのは、多様性と自由な発想を感じる水上詩楽さんの作品です。様々な色の点は多様な人々が集い、つながる様子を象徴し、明るい色彩の扇形は未来へと羽ばたく姿を描き出しているように感じられます。まさに、空を飛び、世界をつなぐJALグループとの親和性を感じる作品です。
【企業賞】丸井グループ賞/《Blue Marble》フラン・ダンカン
《Blue Marble》フラン・ダンカン
フラン・ダンカンは、自己発見と受容、そして自身の筋痛性脳脊髄炎と側弯症という健康問題を含む逆境に立ち向かいながら、情熱を絶やすことなく表現に向き合い続けています。年齢や身体的制約に関係なく、自由と開放を見出したのがアルコールインクを使った作品です。その制作過程において、厳密にコントロールすることを許さないインクを、彼女は潜在意識に導かれながら相互的に協働する意識で制作しています。未知を受け入れ、予期しない美しさを見出すこの手法に、彼女なりの人生の教訓を重ねています。つまり、人生の複雑さを乗り越え、あるがままの自分を発見し尊重すること、そして創造性には限界がないことを、私たちに示してくれます。
株式会社丸井グループのコメント
丸井グループは共創投資先であるへラルボニーの描く未来に共感し、本プライズに協賛いたしました。企業賞選定にあたり丸井グループ全社社員にアンケートを実施し、1位に選ばれた作品が《Blue Marble》です。私たちが目指すインクルージョンの世界感を見事に表現し、躍動感あふれる本作品に丸井グループを授与いたします。
【審査員特別賞】日比野克彦(アーティスト/東京藝術大学長)/《Untitled》S. Proski
《Untitled》S. Proski
視覚障害のあるアーティスト S. Proskiは、盲目そのものを視覚の媒体として展開してきました。作家が盲目の世界で感じとる浮遊感や歪みに焦点を当て、切り取ったキャンバスの切れ端を手作業で丁寧に縫い合わせたり、コラージュしたりして、層状で触覚的な構成の絵画にしています。スケッチやコラージュを使ってイメージを構築し、解体し、再構築するーこの物質的で回り道とも言える手法は、見えない視覚の世界を理解するための手段であり、視覚ではなく触覚を通じて絵画を探求しようとする工夫に満ちています。リサイクルとリミックスの過程を用いて、 S. Proskiは能力主義や同化、そして絵画との関係によって生じた傷を癒そうと試みています。
日比野克彦氏(アーティスト/東京藝術大学長)のコメント
こんな作品を私も作りたいと素直に思った。憧れる作品はどうして生まれてくるのだろうか? 作者に聞いてみたい。制作のきっかけは? 何をイメージしながら? などなど作品制作の様子を見てみたい。そんなまだ会えぬ作者を想像するのが、憧れを深める時間。
【審査員特別賞】黒澤浩美(金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター/株式会社へラルボニーアドバイザー)/《落書き写真(タイル状の壁)》isousin
《落書き写真(タイル状の壁)》isousin
子供の頃から社会に対する不安や自己否定が強く、漠然とした生きづらさを抱えていましたが、写真と出会ってからは自己を受け入れられるようになり、自然と自由な自己表現としてのアートにも興味を持つようになりました。ある日、日が暮れて誰もいなくなった公園の砂場で、子供が描いたであろう落書きを見つけます。一人その場に佇み、食い入るように見つめた後、おもむろにスマートフォンのカメラでその落書きを一枚の写真に収めました。本作は、その時の写真をヒントに制作されています。カメラと画像編集ソフトを使用して写真を抽象的なイメージへと昇華させ、そこに別で撮影した地面や壁の写真を合成することで、不思議な造形を生み出しています。
黒澤浩美氏(金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター/株式会社へラルボニーアドバイザー)のコメント
21世紀の人々はカメラという機械の眼によって、世界の断片を収集しているが、何を写し取るのかは、ひとえにシャッターを切る人の選択に拠る。写真が「現実と創造力の交差」と言われる所以だ。isousinは街中の建物や道路の一部に見られる模様に関心を寄せて、それらを写し取り、その上に別に撮影したイメージを重ねる。このレイヤーによって抽象化された被写体が、印画紙から浮き出すように存在感を増す。子供が地面に落書きをしていたのを見て思い立ったというが、そこから在るモノに被せる手法を思いつくとは驚きだ。小さめの作品サイズも功を奏し、作品それ自体、まるでパズル化された街の1ピースのように見える。秀作である。
■「HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition」
会期:2024年8月10日(土)~9月22日(日)
時間:10:00~18:00
料金:入場無料
会場:三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン(東京都千代田区丸の内1-3-2)
主催:株式会社ヘラルボニー
8月12日から25日にかけて、アートイベント「MUSIC LOVES ART 2024 - MICUSRAT (マイクスラット) -」が開催されています。
大阪(市内中心部、万博公園)と千葉(幕張新都心)の二か所で同時開催されており、日本最大級の都市型音楽フェスティバル「SUMMER SONIC」(8/17~8/18)との連携が注目されています。
日本を文化芸術のグローバル発信拠点に
本プロジェクトは文化庁が推進するプロジェクトで、⾳楽とアートの融合による「新たな価値」を創造する作品をアーティストと産み出し、日本が文化芸術のグローバル発信拠点になることを目指すものです。
SUMMER SONIC 大阪会場を訪れた文化庁の都倉俊一長官は開催に寄せて、「国としてあらゆるアートを応援していきたい」そして官民一体となって文化芸術を「より大きな意味でのカルチャービジネスにしなければいけない」とコメント。
さらに本イベントを来年開催の大阪・関西万博への足がかりとして、万博を通じてアートの国際的発信に力を入れていく意気込みを語りました。
音楽ファンで賑わう万博会場に大型アート作品が登場
久保寛子《やさしい手》
8月17日・18日に開催された「SUMMER SONIC 2024」とのコラボレーションは本プロジェクトの大きな見どころです。大阪会場となった万博公園(吹田市)と周辺には、GOMA(ゴマ)・奥中章人・久保寛子の3名のアーティストによる大型作品が野外展示されました。
GOMA《ひかりの滝》
アーティストGOMAの《ひかりの滝》は、アートと自然、そして音楽との融合が感じられる作品です。
風に揺らめく作品のバックに聴こえてくるのは、空気を静かに震わせるような不思議な音色。オーストラリア大陸の先住民アボリジニの民族楽器、ディジュリドゥを使った楽曲でGOMAが作品と同時期に制作したものです。
もともと世界的なディジュリドゥ奏者として活躍していたGOMAが絵を描き始めたのは、交通事故がきっかけだったといいます。高次脳機能障害や記憶喪失などの後遺症に悩まされるなかで、絵は「自分を癒すために描いていた」と振り返ります。
《ひかりの滝》で描かれている世界は、GOMA自身が意識を失ってから再び意識を取り戻す際に必ず見ていたという光景を絵画として再現したものなのだそうです。
17日夜には、ドローンショーを企画・運営するクリエイティブ集団「REDCLIFF(レッドクリフ)」とともに空中アート作品《ひかりの世界・阪栄の火の鳥》をお披露目。
1000機のドローンが花火と融合して空に描いた「火の鳥」は、GOMAが手塚治虫の『火の鳥』に触発されて制作されたものなのだそうです。
奥中章人《INTER-WORLD-/SPHERE:The Three Bodies》
奥中章人の《INTER-WORLD-/SPHERE:The Three Bodies》は、作品に直接触れて体験できる作品。
農業用ポリエチレンを素材に使ったバルーン型彫刻は、見た目はまるで大きなシャボン玉のようです。手で押すと簡単に形が変わるほど柔らかで、内側に入ることもできます。作品に触れ、作品越しに太陽の光を見つめることで、光や空気、風など目に見えないものを可視化してくれます。
街のなかで誰もが出会えるアート
渋田薫《Singin’ in the Rain》《ミライムジーク》
REMA《The Ecosystem of Love from That Time》
大阪市内では、音を色や形でとらえるアーティスト渋田薫や、過去と未来、デジタルとアナログが交錯するREMA(レマ)など、若手アーティストの作品を中心に12カ所に作品が展示されています。
展示場所は、関西経済連合会や地元の関連企業の協力によって提供されており、ほとんどがビルのエントランスやロビーなどパブリックスペースにあり、誰もが自由に見ることができるのが特徴です。
いくつかの作品をピックアップしてご紹介します。
大谷陽一郎《はん/えい #1》《はん/えい #3》
中之島フェスティバルタワー・ウェスト(3階オフィシャルエントランスホール)には、大谷陽一郎の《はん/えい #1》《はん/えい #3》が展示されています。
“はんえい”は「MUSIC LOVES ART 2024 - MICUSRAT (マイクスラット) -」の2024年のプロジェクトテーマ。
はん、えい、と発音する約50種の漢字が波紋のように広がる作品で、「反映」や「繁栄」といった既存の言葉を超えて、新しい文字の出会いや、そこから広がるイメージや言葉の意味に想いを寄せることができます。
檜皮一彦《HIWADROME_TypeΔ_SPEC3》
同ビルの地下1階では、檜皮一彦の《HIWADROME_TypeΔ_SPEC3》を見ることができます。
約70台の車いすが三角形の構造物として積み上げられ、圧倒的な存在感を放っています。車いすを使用する檜皮自身にとって三角形の構造物は乗り越えるべきものの象徴。そして同時に、社会の中で誰もが体験する偏見や障壁の象徴でもあるのだそうです。
いつもの大阪がアートで変わる
会期中は地図機能のあるスタンプラリーアプリケーションを使ったアート巡り企画『STAMP MAP ART』を実施しています。
街に点在するアートを巡ることで、普段見ている街の風景がアートによって変わっていく様子を目にすることができるでしょう。
アートをきっかけに、いつもは通らない道、訪れたことのない場所に連れて行ってくれるのもこのイベントの楽しさです。
■「MUSIC LOVES ART 2024 - MICUSRAT (マイクスラット) -」
会期:2024年8月12日(月)~25日(日)
会場:SUMMER SONIC 大阪会場及び周辺 8月17日(土)~18日(日)
大阪市内中心部の展示 8月12日(月)~25日(日)
※各展示場所により展示期間が異なります(以下、WEBサイトにて詳細を掲載)
Webサイト https://micusrat.com
執筆者:遠藤友香
森ビル株式会社が運営する、虎ノ門ヒルズにある「TOKYO NODE(東京ノード)」。2023年10月に開業した「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」の最上部に位置する新たな情報発信拠点で、イベントホール、ギャラリー、レストラン、ルーフトップガーデンなどが集積する、約10,000㎡の複合発信施設です。 施設内には、ミシュランで星を獲得したシェフによるレストランや、イノべーティブなプレイヤーが集まり共同研究を行う「TOKYO NODE LAB」も併設。「NODE=結節点」という名のとおり、テクノロジー、アート、エンターテインメントなどあらゆる領域を超えて、最先端の体験コンテンツ、サービス、ビジネスを生み出し、世界に発信していく舞台となっています。
この度、「TOKYO NODE」では、2024年8月9日(金)~2024年10月14日(月・祝)まで、「身体性」×「テクノロジー」表現の最先端を歩み続け、本年9月に結成25年目に突入するアーティスト「Perfume」を取り上げた体験型展覧会「Perfume Disco-Graphy 25 年の軌跡と奇跡」を開催中です。
さまざまな先端技術や舞台演出で時代を先取りしてきた、Perfumeのライブステージ。そのステージが成立する前提には、制御された演出と体の動きを完全に一致させることができる、メンバーらの身体性の高さがあります。本展は彼女たちの驚異的な「身体性」と、その舞台を支えるクリエイターたちの「テクノロジー」それぞれが研鑽されて生まれる“ 奇跡の同期(シンクロ) ”をテーマに、Perfumeが作り上げてきた表現への挑戦とステージの数々を再現。本展の総合監修には、Perfumeの振り付け・ライブ演出を手掛けるMIKIKO、インスタレーションには真鍋大度、クリエイティブコレクティブ「Rhizomatiks」など、“チーム・Perfume”に長年携わるメンバーが脇を固め、25年におよぶ取り組みをステージとその舞台裏の両面から紐解きます。
次に、展覧会「Perfume Disco-Graphy 25 年の軌跡と奇跡」の見どころをご紹介します。
■Chapter-1.We are Perfume
光の粒子が軌跡を描く作品。Perfumeの3人の「Aポーズ」は、25年の一つのシンボルです。無数の光の粒子が集まり、3人の姿を浮かび上がらせます。
■Chapter-2.軌跡と奇跡
結成25年、Perfumeの3人が続けてきたその軌跡は、ライブステージを重ねるたび奇跡を紡いできました。それは3人だけが持つDNAレベルとも言える“ 同期(シンクロ) ”が生むパフォーマンスです。
結成当初から演出・振付をするMIKIKO、その中期からテクニカル演出として加わったRhizomatiksと共に作られる完成度の高いライブステージは、人とテクノロジーとの同期をも実現してきました。テクノロジーとはいえ、全て人が作るステージングとPerfumeの3人によるもの。テクノロジーと人がパラレルに進化し、新しい価値が創造されています。その研鑽によって、より美しい世界が築かれることを、3人のライブパフォーマンスが示しています。
このChapter-2では、これまで実現させてきた様々な同期の形を、実際に体験/鑑賞できるエリアです。ステージの体験を通じて、Perfumeの3人の姿をそこに見ることができるかもしれません。
■Chapter-3.IMA IMA IMA
1999年の結成から今まで、そして次のPerfumeは未だ誰も見たことのない、この未来のステージから始まります。一見誰もいないように見えるステージの上では、Perfumeが新曲「IMA IMA IMA」をバーチャル上で演じています。
この特別なセットを囲み、Perfumeの未来のステージに参加することができます。Perfumeのステージに携わる一人の「クルー」として、ステージの照明や映像、スイッチングを自在に操作しながら、各々が想像する未来のステージ演出に参加することができます。
最後にPerfumeの3人から届いたメッセージをご紹介します。
「私たちPerfumeの25年を振り返る展覧会、『Perfume Disco-Graphy』の開催が決定しました! 結成してから25年分のPerfumeの歴史、そしてライブ演出の軌跡が、一気に見られる展覧会です。ライブの演出の進化と共に、テクノロジーの進化も体感してきました。未知数の実験的な“人間とテクノロジーの挑戦”がそれぞれの努力と信じる力でピタッと合わさると身震いするような高揚感がやみつきになります。その何物にも代え難い感覚をぜひ体験して皆さんにぶっ飛んでほしいです。夏休みやシルバーウィークにも重なりますので、ぜひ全国の皆さんに遊びに来ていただけたら嬉しいです。今年の夏は、虎ノ門ヒルズ・TOKYO NODEで会いましょう!」
以上、「TOKYO NODE」にて開催中の、「Perfume」を取り上げた体験型展覧会「Perfume Disco-Graphy 25 年の軌跡と奇跡」をご紹介しました。
会期中は、本展をさらに楽しむためのスペシャルコンテンツも多数登場。館内にはポップアップショップが出店し、本展限定のオリジナルグッズが販売されるほか、TOKYO NODE内のレストラン・カフェではPerfumeメンバーが監修したコラボメニューを提供します。さらにPerfumeの代表的な楽曲『チョコレイト・ディスコ』にちなみ、展示室内をディスコ会場にしたDJイベントも開催。
ぜひ、Perfumeの織りなす世界観を思う存分体感してみてくださいね!
■「Perfume Disco-Graphy 25 年の軌跡と奇跡 (パフューム ディスコグラフィ) 」
開催期間:2024年8月9日(金)~2024年10月14日(月・祝)/67日間
会場: TOKYO NODE GALLERY A/B/C (東京都港区虎ノ門2-6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F)
チケット:オンラインでの日時予約制
一般 2,800 円(税込)
高校生・中学生 2,200 円 (税込)
小学生 1,000 円 (税込)
未就学児 無料
※チケットをお持ちの障がい者の方1名につき介助者1名まで無料で入場可
※購入後のキャンセル不可(日時変更1回のみ可)
※チケットは3期に分けて発売します。ご希望の来場日により販売開始日が異なりますのでご注意ください。
[第1期]7月2日(火)販売開始:8月9日(金)~ 9月1日(日)分まで(※こちら、販売を終了しています)
[第2期]8月13日(火)販売開始:9月2日(月)~ 9月29日(日)分まで
[第3期]9月10日(火)販売開始:9月30日(月)~10月14日(月・祝)分まで
執筆者:遠藤友香
株式会社マイナビを主幹事とするアートスクイグル実⾏委員会は、現代アートフェスティバル「Art Squiggle Yokohama 2024(アートスクイグルヨコハマ 2024)」を、2024年7⽉19⽇(⾦)から9⽉1⽇(⽇)までの 45 ⽇間、横浜・⼭下ふ頭にて初開催しています。
⼭下ふ頭は、明治維新から世界と⽇本を繋いで、⼈、モノ、そして⽂化が交差し続けてきた場所です。本イベントの会場である⼭下ふ頭・4号上屋もまた、⽇本の⾼度経済成⻑を⽀えてきた時代のアイコンであり、巨⼤な躯体を⽀えるトラス構造の建築は、昭和の建築技術の粋を集めた圧倒的なスケール感の内部空間を有しています。 ⼭下ふ頭は数年後に⼤規模な再開発が予定されており、本イベントは、歴史的にも貴重な建築物をアートとともに体験する試みでもあるといいます。
タイトルにも使われている「Squiggle(スクイグル)」という言葉は、「まがりくねった / 不規則な / 曲線」という意味を持ちます。直線的でなく予測不能な動きや形状を表すことから、この言葉は本展において、アーティストが創作活動中に経験する迷いや試行錯誤のプロセスを象徴しており、来場者もまた、まるで迷路のように構成された空間を好きな順序で辿りながら、アート鑑賞を楽しむことができます。
アーティストやコレクティブなど総勢16組による作品が展示され、その内8組が本イベントのために制作した新作を初披露します。会場は、空間デザイナーの西尾健史が空間設計を手掛けています。
株式会社MAGUS(マグアス)をはじめとする企画制作チームから、以下の言葉が寄せられています。
「アートは、私たちから遠い存在ではありません。私たちが生きる時代、社会、暮らしのなかのさまざまな経験や感情から生まれてくるものです。ここでは、テーマやコンセプト、制作プロセスに『Squiggle(スクイグル) = やわらかな試行錯誤』が見られる多様な作品を、アーティストのビジョンに寄り添った空間でご紹介しました。正しいアートの見方を提示するのではなく、ご来場のみなさまにも『Squiggle』するアート鑑賞を体験してもらうべく、ライブラリー&ラウンジや『アーティスト・ノート』をご用意しました。ここでのユニークな体験を日常にも持ち帰り、アートを少しでも身近に感じていただけましたらうれしいです」。
次に、本イベントでおすすめの作品を5点ピックアップします!
1.GROUP
建築プロジェクトを通して、異なる専門性を持つ人々が仮設的かつ継続的に共同できる場の構築を目指し、建築設計・リサーチ・施工をする建築コレクティブ「GROUP」。
こちらの展示は、約100平米の空間をサボテンのある広場にし、人間とサボテンが築くことができたかもしれない風景としたもの。航路を通じ、サボテンが日本に渡来したのは16世紀後半のこと。当時は鑑賞用のほか、薬用として紹介されていました(いずれも諸説あり)。そうした渡来経緯は今でも色濃く残り、もしそれとは違った出合い方をしていれば、サボテンとの付き合い方も今とは異なったのかもしれない―。GROUPはサボテンを見つめることで、テーブルや棚の一部として採用し、新しい家具の構造物としてサボテンを提案します。リサーチャー・原ちけい、音楽家・土井樹、植物に関する専門家・越路ガーデン(西尾耀輔)を迎え、建築の知見だけでなく多角的にサボテンを見つめ直しています。
GROUPの井上岳は「本展が開催される45日間で、(サボテンの)植物としての成長も予想しています。会期中にサボテンの世話をしながら、そうした変化過程も含めて展示にできればなと。そうすると、今とは全然違ったサボテンと人間の新しい関係が生まれるんじゃないかと期待しています」と述べています。
2.山田愛
山田愛《流転する世界で》(2024)Photo: Shinichi Ichikawa
1992年に京都府にて生まれた山田愛は、社寺建築や墓石を手掛ける石材店にて育ちました。2017年に東京藝術大学大学院美術研究科先端藝術表現専攻を修了。石やドローイングを用いたインスタレーションを主な手法とし、根源的な地点へ誘う鑑賞体験を目指しています。
こちらは、直径5メートルの円の中に無数の石が並ぶインスタレーション作品で、自身の好きな場所から思い思いに鑑賞可能です。一筆で円を描いた、始まりも終わりもない無限の世界や悟りの境地を表す禅の書画を意味する〈円相〉と名付けられたシリーズの新作です。
山田愛《流転する世界で》一部(2024)Photo: Shinichi Ichikawa
山田は平らにならした砂の上に、何度も洗い、汚れを拭き、本来の美しさを取り戻した、ひとつとして同じものがない石をそれぞれが在るべき場所に据えていきました。世界の縮図のようなインスタレーションには、私たち一人ひとりにも輝く場所が必ずあるという祈りのような思いが込められています。ここでの体験は、自身と向き合い、現在の立ち位置を見つめ直す時間となるでしょう。交平光平
3.川谷光平
東京を拠点に活動する写真家・川谷光平。近い距離感から色鮮やかに被写体を捉える独自の作風で、国内外から注目を集めています。
川谷の展示空間にはいくつかの新作のほか、パーソナルワークやクライアントワークで撮影し、当時は選ばなかったアザー写真や資料写真を含む、膨大なカットの中から選び直した写真が並びます。それぞれの写真が固有の作品性を保ちながらも、どれが、どこまでが作品の領域から明らかではありません。
本来、一直線上に進んでいくはずの写真家にとってのプロセス、すなわち、リサーチ→撮影→セレクト→編集→展示という流れが会場の中に視覚化され、そこを順行・逆行しながらぐるぐると考え直すことで、作品としてのイメージが「ゴールすること」について言及します。鑑賞者がこの場所で撮影した写真も、川谷の作品に内包され得るかもしれません。
4.中島佑太
2008年に東京藝術大学美術学部卒業以後、一貫してワークショップを用いた活動を続けている中島佑太。ルールやタブー、当たり前だと考えられていることなどに関心を持ち、遊びや旅といった軽やかなテーマを通して、その書き換えを試みています。近年は、保育施設に活動を拡張し、子どもたちやその周りにいる大人たちとの関わりから見えてくる社会の問題や課題をリサーチしながら、芸術と遊びの融合を模索しています。
こちらの作品は、かつて鉱山で働いていたという朝鮮人労働者たちのエピソードから着想を得たもの。石を砕き、砂に変える過程を手作業によって行い、砂場をつくるワークショップです。過酷さを連想させる砕石や採掘といった労働(Labor)によって、芸術作品(Work=仕事)に参加をし、遊びという人間の根源的な活動(Action)の場へと接続を試みます。
砂山にトンネルを掘る行為は、子どもの頃に誰もが体験した遊びのひとつなのではないでしょうか。遊びとは、遊ぶ主体である個人の内側に、誰からも指示・強制されることなく湧き起こるものです。ワークショップの名の下に強制された作業から、遊びは生み出せるのでしょうか。
5.河野未彩
視覚ディレクター/グラフィックアーティストの河野未彩。音楽や美術に漂う宇宙観に強く惹かれ、2000年代半ばから創作活動を始めました。多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業後、現象や女性像に着目した色彩快楽的な作品を多数手掛けています。
《HUE MOMENTS》は、白い光の中に7色の影をつくるペンダントライト「RGB_Light」を開発する際のインスピレーションとなった、「光の三原色」の原理を再解釈したインスタレーション作品です。幅10メートル越えの空間に構造体があり、そこにR(Red:赤)、G(Green:緑)、B(Blue:青)の光源をミックスさせた光を3方向から当てることで、刻一刻と変化する影や色面をつくりだします。
色が移り変わる周期はそれぞれの光源で異なり、45日間一瞬も同じ色が現れることはありません。この作品には、河野の「鑑賞体験を通じて光と影の関係性や、そこにある多様性を感じるとともに、この瞬間にしか存在しない色相を目撃してもらいたい」という想いが込められています。
暑い夏にぴったり!ソフトドリンク&アルコールの販売も
イベント会場内(屋外)では、週末を中心にフードトラックも営業し、オフィシャルバーでは暑い夏におすすめのソフトドリンクとアルコールの販売を行っています。アルコールには、横浜市内で最も長い歴史を持つローカルビアカンパニーの「横浜ビール」や、90年の歴史を持つ台湾最大のビールブランド「台湾ビール」がラインナップ。「横浜ビール」からはグビグビ飲める味わいのIPAや、心地良い柑橘の香りが爽やかなピルスナーなどの横浜で愛されるビールを各種、「台湾ビール」からは、台湾でも大人気の「マンゴー(香郁芒果)」、「パイナップル(甘甜鳳梨)」をはじめとした台湾フルーツ果汁がたっぷり入った飲みやすいフルーツビールが楽しめます。
以上、現代アートフェスティバル「Art Squiggle Yokohama 2024(アートスクイグルヨコハマ 2024)」についてご紹介しました。主観と客観を⾏き来する思考プロセスを経て作られた多彩な作品群は、新しい視点や気づきを与えてくれることでしょう。ぜひ、会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
■「Art Squiggle Yokohama 2024 (アートスクイグルヨコハマ 2024 )」
会期日時:2024年7⽉19⽇(⾦)〜9⽉1⽇(⽇) (45⽇間開催)
平⽇・⽇・祝⽇ 11:00-20:00 (19:15 最終⼊場)/ ⾦・⼟ 11:00-21:00 (20:15 最終⼊場)
開催地:横浜⼭下ふ頭(神奈川県横浜市中区⼭下町)
⼊場料:当⽇ 2,400 円
⼤学⽣、⾼校⽣ 1,500 円
横浜市⺠割 当⽇ 2,200円
※中学⽣以下無料(⼊場時に受付にて学⽣証提⽰)
※障がい者⼿帳をお持ちの⽅と介護の⽅1名は無料
※⼤学⽣、⾼校⽣:⼊場時に受付にて学⽣証提⽰
※横浜市⺠割:横浜市内在住の⽅(⼊場時に受付にて要証明)は⼀般料⾦より200円割引
チケット販売:ArtSticker(Art Squiggle Yokohama 2024 | オンラインチケット販売 | ArtSticker)にて販売中
【主催】アートスクイグル実⾏委員会 (マイナビ、他)
【企画制作】MAGUS、博報堂DYメディアパートナーズ
【後援】横浜市にぎわいスポーツ⽂化局、横浜港ハーバーリゾート協会、J-WAVE
【協⼒】東急、カリモク家具
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チームラボ《人々のための岩に憑依する滝 》©チームラボ
執筆者:遠藤友香
森ビル株式会社がアートコレクティブ・チームラボと手がける「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス(以下、チームラボボーダレス)」。チームラボボーダレスは、アートコレクティブ・チームラボの境界のないアート群による「地図のないミュージアム」です。アートは部屋から出て移動し、他の作品と関係し影響を受け合い、他の作品との境界線がなく、時には混ざり合います。チームラボボーダレスは、そのような作品群による境界なく連続する1つの世界であり、来館者は境界のないアートに身体ごと没入し、「境界なく連続する1つの世界」のなかを「さまよい、探索し、発見」する唯一無二の体験ができます。
この度、チームラボボーダレスが、アメリカのニュース雑誌「TIME」が発表した「THE WORLD'S GREATEST PLACES 2024(世界で最も素晴らしい場所2024年度版)」に選出されました。(※「TIME」誌「THE WORLD'S GREATEST PLACES 2024」記事はこちらから)。麻布台ヒルズへ移転前のお台場では、2019年にも「TIME」誌で「World's Greatest Places 2019(世界で最も素晴らしい場所 2019年度版)」に選出されました。
「TIME」誌は1923年に創刊され、発行部数368万部、世界200カ国で読者数2,000万人にもおよぶ世界最大の週刊誌です。2018年から始まった本企画は、「TIME」誌が「今すぐ体験すべき世界100の新目的地」を選出したもので、全世界のTIME誌の編集者、特派員、専門家たちから募った、美術館、テーマパーク、レストラン、ホテルなど複数のカテゴリーの候補地の中から、クオリティ・オリジナリティ・持続性・革新性・影響力をもとに選ばれています。チームラボボーダレスは、特にクオリティ・オリジナリティの点で選ばれ、今年2月の開館からわずか半年での選出となりました。
「TIME」誌は、「チームラボボーダレスは、ソーシャルメディアの定番となった没入型アートから群を抜く、技巧を凝らした空間だ。息を呑むようなインスタレーション作品《人々のための岩に憑依する滝》は鑑賞者の動きによって流れが変化する。《Bubble Universe》や《Microcosmoses》は、球体に鑑賞者が近づくと反応し、二度と再現できない魅惑的な光の波紋を生み出す」と伝えています。
次に、主な作品を4つご紹介します。
1.《人々のための岩に憑依する滝》
チームラボ《人々のための岩に憑依する滝 》©チームラボ
「人々のための岩」に降り注ぐ滝は、岩と人々の存在、そして、この空間に入ってくる他の作品の影響を受け、変容し続けます。また、水の流れそのものが、この空間に入ってくる他の作品に影響を与えていきます。今この瞬間の絵は二度と見ることができません。
そして、滝が映し出された壁や床は、我々と作品との境界面にならず、滝の作品空間は、人々の身体のある空間と連続します。
2.《Bubble Universe: 光の球体結晶、ぷるんぷるんの光、環境が生む光 - ワンストローク》
チームラボ《Bubble Universe: 光の球体結晶、ぷるんぷるんの光、環境が生む光 - ワンストローク》©チームラボ
「認識上の彫刻」をテーマにした、インタラクティブな作品です。空間は無数の球体群によって埋め尽くされ、それぞれの球体の中には、異なる光の存在が入り混じっています。
人が球体の近くで立ち止まりじっとしていると、最も近い球体が強く輝き音色を響 かせ、光はその球体から最も近い球体に伝播します。伝播した光は、最も近い球体に伝播し連続していきます。光は、空間内の球全ての球体を通る1本の光の軌跡になります。
そして、自分から生まれた光と、他者から生まれた光は交差していきます。
3.《マイクロコスモス:ぷるんぷるんの光、環境が生む光》
チームラボ《マイクロコスモス:ぷるんぷるんの光、環境が生む光》©チームラボ
奥行きのわからない無限の空間の中を、無数の光が走り続けます。
「構成要素が空間的時間的に離れていたとしても、構成要素全体に異なった秩序が形成され、それらが重なり合う時、それは、 宇宙か?」を模索した作品です。
半球の中は、「ぷるんぷるんの光」と「環境が生む光」が重なり合います。ぷるんぷるんの光は、チームラボが創る「境界面の曖昧な空間彫刻」の一つで、認識世界に存在する彫刻です。
4.《スケッチオーシャン》
チームラボ《スケッチオーシャン》©チームラボ
この海は、みんなが描いた魚たちが泳ぐ海です。
来館者が紙に自由に魚の絵を描きます。すると、目の前の海でみんなが描いた魚と共に泳ぎだします。泳いでいる魚は触れることもでき、触れられた魚は、いっせいに逃げだします。エサ袋に触ることによって、 魚にエサをあげることもできます。
魚たちは部屋を出て、他の作品の境界を越えてチームラボボーダレスの中を泳ぎ始めます。中でもマグロは、ミュージアムの物理空間をも超えて、世界の他の場所で行われている展覧会へと泳いでいき、そこで描かれたマグロの群れを引き連れて帰ってきます。
以上、米TIME誌の「世界で最も素晴らしい場所」に選出された、チームラボボーダレスについてご紹介しました。ぜひ、夏休み期間中、お子さまと一緒に訪れてみてはいかがでしょうか。
■「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」
開館時間:9:00 - 21:00
※9月3日(火)は17時閉館(最終入館16時)
※最終入館は閉館の1時間前
休み:8月20日(火)、9月17日(火)
場所:麻布台ヒルズ ガーデンプラザB B1
東京都港区麻布台1-2-4
チケット購入はコチラから。
執筆者:遠藤友香
東京都は、2040年代の都⽴公園のあるべき姿と豊かな緑を次世代につなぎ、国内外の⼈を惹きつける魅⼒を⽣み出し、⼀⼈ひとりのウェルビーイングに貢献する公園を目標に、都⽴公園全体の機能や価値を向上させるべく様々な取組を⾏っています。東京都江⼾川区にある葛⻄臨海⽔族園、葛⻄臨海公園は⻑きにわたり、海と深いつながりを持ってきました。今年はその歴史を踏まえ、広⼤な敷地の魅⼒を全⾝で感じるアートインスタレーションイベント「海とつながる。アートをめぐる。―HarmonywithNature―」を、2024年8月18⽇(⽇)まで葛⻄臨海⽔族園、葛⻄臨海公園にて開催中です。
本イベント会期中、葛⻄臨海⽔族園では「海とつながる」をテーマとして、⽔族園を象徴するガラスドームをミストが包み込み、海とつながる世界を⽣み出す演出を⾏っています。また、葛⻄臨海公園では「アートをめぐる」をテーマとして、蜷川実花 with EiMの作品が東京湾を⾒渡せる展望レストハウスであるクリスタルビューを彩り、落合陽⼀⽒、河瀨直美⽒、平⼦雄⼀⽒の作品が4万本の向⽇葵が咲くひまわり畑の中に溶け込み、 新たな景⾊を⽣み出しています。
2024年8⽉1⽇(⽊)に葛⻄臨海⽔族園、葛⻄臨海公園にて、「海とつながる。 アートをめぐる。― HarmonywithNature―」のメディア向け内覧会が開催されました。メディア向け内覧会にて、蜷川実花 with EiMによるアート作品 「Garden of Sky(空の庭園)」について、写真家・映画監督で、写真を中⼼として、映画、映像、空間インスタレーションも数多く⼿掛けている蜷川実花⽒から、以下の作品解説がありました。
【蜷川実花⽒による作品解説】
クリスタルビュー2階奥の展⽰室と外装、2つのインスタレーションで構成された「Garden of Sky(空の庭園)」。本作品のコンセプトについて蜷川⽒は「今回の企画のお話をいただいたとき、⼩さな頃から馴染みがあった⼤好きなクリスタルビューでの作品づくりを実施したいとお伝えしました。クリスタルビューは空が広く⾒える場所なので、空に溶け込むような作品と、建築の素晴らしさを活かすための表現⽅法を試⾏錯誤しました。」と述べました。
クリスタルを⽤いた新作については「ぜひ近くで細部まで⾒ていただき たいです。一つひとつ想いを込めてつくり続けたパーツを800本のライン状に繋ぎ、⽴体的に空間に配置しています。光を受けてキラキラと輝くため、朝と⼣⽅でも、また天気によっても⾒え⽅が変化する。そうやって⾃然を感じることができる作品です。瞬間の美しさを表現したいという気持ちは、⾃分のベースが写真家だからだと思います。瞬間の変化を感じ取って⼤切にしていく。この感覚を増幅させるようなつくりになっています」と解説。
続けて外装装飾について「ガラスに透過性フィルムを貼ることで、巨⼤なステンドグラスのようにした今回の作品は、これまでのアーティスト活動で最⼤規模の作品になりました。膨⼤な写真の中から美しい花々を選び、四季折々の景⾊が混ざりあった光景をつくっています。これは⾃分が⾒てみたい夢の⾵景、桃源郷のような世界です。遠くから⾒たときにも花々が空に向かって伸びていき、本物の空とグラデーションで溶け合っていく。実際の⾃然の⼀体化するようにつくっています」と語り、 最後に「この場所に来ていただくことでしか体感できない作品なので、 暑い中ではありますが、多くの⽅が来てくれるといいなと思います」と述べました。
続いて、ひまわり畑に場所を移し、植物や⾃然と⼈間の共存について、また、その関係性の中で浮上する曖昧さや疑問をテーマに制作を⾏うアーティストの平⼦雄⼀⽒から、アート作品「Wooden Wood 73」についての解説がありました。
【平⼦雄⼀⽒による作品解説】
作品のコンセプトについて平⼦⽒は「中⼼に位置する、⼈のような姿をした樹⽊の頭部を持つこの⽴体作品は、私達⾃⾝を投影する存在だと思っています。そしてその両側にある果物、観葉植物、猫も、私たちと⾃然の関係を象徴するものとして配置しました。これらの彫刻の⾜元には書物があり、これは私たちが築き上げた⽂明や社会を表しています。⾃然の状況や価値は、私たち⼈間の尺度により変化してきました。そしてこれからも、私たちの植物や⾃然に対する⾏動や姿勢は変化し続けるのではないかと思います。この作品を通じて⾃然との関わり⽅を考え、 新たな視点を開拓してもらいたいと願っています」と語りました。
【落合陽⼀⽒の作品について】
境界領域における物化や変換、質量への憧憬をモチーフに作品を展開する、メディアアーティストの落合陽⼀⽒の作品「リキッドユニバース :向⽇葵の環世界のコペルニクス的転回」は、脱⼈間中⼼の思考において、他⽣物のプリュリバーサルな環世界の転回を考えています。本作は、存在論的な境界の流動性を探求し、計算機⾃然が織りなす新たな知覚の地平を開く試みです。⾃然と⼈⼯物と⽣成AIの交差点に⽴つ本インスタレーションは、向⽇葵畑と観覧⾞という具象と、デジタルが⽣み出す抽象との間に⽣起する認識の揺らぎを体現しています。⽣成AIは、観客の存在をも包含した環世界のダイナミズムを、LEDの光の律動として具現化します。向⽇葵の光屈性は、⽣命の根源的な環世界との関わりを象徴しています。同時に、その動きをデジタル的に再解釈することで、我々は⽣命とテクノロジーの境界、そして知覚の本質に対する問いを投げかけます。本作は、計算機⾃然という新たなパラダイムにおいて、存在の多様性と相互連関性を探求しています。それは、⼈間中⼼主義を脱し、万物の絶え間ない⽣成変化の中に逍遙遊を⽣きる花と光による具現化です。
【河瀨直美⽒の作品について】
奈良を拠点に映画を創り続ける映画作家の河瀨直美⽒の作品「隠されたもう⼀⼈の私。ひまわり畑での問いかけ」は、「⾃分の中に⾒え隠れするもう⼀⼈の⾃分と出会う」がテーマとなっています。夏を象徴するひまわりの群れの中に突如現れるいくつかの問いかけは、まるで⼈⽣の分岐点に⽴たされたような感覚を与え、鑑賞者を内省と⾃⼰発⾒の旅へと誘います。不規則に並べられた問いかけは、⾃分⾃⾝との対話のきっかけとなり、今まで出逢えなかった潜在的な意識へと繋げてくれます。この対話によって気付かされるもう⼀⼈の私は、⾃分が認識している⾃分とは異なる存在であり、⾃⾝の隠された⾃⼰の深みに気付かせてくれる体験となるでしょう。
【ガラスドームのミスト演出について】
都では、葛⻄臨海⽔族園本館の保存・利⽤の検討や、⽔族園を象徴するガラスドームへの愛着を表現するイベントなどを「ガラスドームプロジェクト」と名付けて進めています。今回その⼀環として、東京のランドマークとしても親しまれている葛⻄臨海⽔族園のガラスドームをミストで演出します。また、 2024年8月11日(⽇・祝)〜8月14日(⽔)の特別イベント「Night of Wonder 〜夜の不思議の⽔族園〜」期間中は、霧にライトアップが追加されて幻想的な空間を演出します。海とドームの境界が曖昧になり海と⼀体化する中、 霧がかる幻想的でまばゆい海の中に没⼊する体験をお届けします。
■「海とつながる。アートをめぐる。― Harmony with Nature ―」
会期:2024年8⽉2⽇(⾦)〜8月18⽇(⽇)
会場:葛⻄臨海⽔族園(葛⻄臨海公園内)および葛⻄臨海公園
⼊場無料・予約不要
※葛⻄臨海⽔族園のみ⼊園料が必要です
時間:葛⻄臨海⽔族園 9:30〜17:00(最終⼊園16:00)
葛⻄臨海公園 9:00〜20:30
【葛西臨海水族園・葛西臨海公園】海とつながる。アートをめぐる。― Harmony with Nature ― (tokyo-zoo.net)
執筆者:遠藤友香
©︎小池アイ子
2010年より毎年開催している京都発の国際舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」。国内外の「EXPERIMENT(エクスペリメント)=実験」的な舞台芸術を創造・発信し、 芸術表現と社会を、新しい形の対話でつなぐことを目指しています。 演劇、ダンス、音楽、美術、デザインなど、ジャンルを横断した実験的な表現が集まり、 そこから生まれる創造、体験、思考を通じて、舞台芸術の新たな可能性をひらいていきます。
フェスティバルは、「Kansai Studies(リサーチプログラム)」、「Shows(上演プログラム)」、「Super Knowledge for the Future [SKF]( エクスチェンジプログラム)」といった3つのプログラムから構成されます。例えば、「Kansai Studies(リサーチプログラム)」は、京都発の国際フェスティバルとして、自分たちが立脚する「地域」について自覚的に捉え、フィールドワークを通して探求するプログラム。アーティストが中心となり、地域住民やプロデューサー、研究者と一緒に、京都や関西の文化を継続的にリサーチしていきます。活動を通じて生まれた思考の軌跡やプロセスは特設ウェブサイトに蓄積され、誰もがアクセスできるオンライン図書館として公開。未来のクリエイターや企画のためのナレッジベースや実験場、アイデアソースとなることを目指します。
「Shows(上演プログラム)」は、世界各地から先鋭的なアーティストを迎え、いま注目すべき舞台芸術作品を上演するプログラム。京都および関西における舞台芸術の変遷と動向に注目しながら、ダンス、演劇、音楽、美術といったジャンルを越境した実験的作品を紹介します。
そして、「Super Knowledge for the Future [SKF]( エクスチェンジプログラム)」は、とりわけ実験的な舞台芸術作品と社会を対話やワークショップを通してつなぎ、新たな思考や対話、フレッシュな問題提起など、未来への視点を獲得していくプログラムです。実験的表現が映し出す社会課題や問題をともに考え、議論し、現代社会に必要な智恵や知識を深めていきます。ここで獲得できるスーパー知識 (ナレッジ)は、予測不能な未来にしなやかに立ち向かうための拠り所となるはずです。
(左から)ジュリエット・礼子・ナップ氏、川崎陽子氏、塚原悠也氏(KYOTO EXPERIMENT共同ディレクター)
2024年7月18日 (木)に開催された、「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2024」記者会見において、KYOTO EXPERIMENT共同ディレクターの川崎陽子氏から、次のようなフェスティバルの概要説明がありました。
「2010年から始まったKYOTO EXPERIMENTでは、国内外の演劇、ダンス、音楽、美術など、ジャンルを横断した実験的な舞台芸術を創造、発信し、芸術表現を通して、社会に新しい形の対話を生み出すことを目指しています。今回のフェスティバルが15回目となります。
今年はプログラムから思考を生み出すきっかけとして、キーワードに「えーっと えーっと」という言葉を設定しています。今回「Shows」で紹介する多くの作品には、土地と人々の結びつきから生まれる芸能や文化とその検証、あるいは再構築、近代から現代における歴史の中の環境と人の関係性、政治史と個人史、国の記憶やその伝承など、様々な歴史、記憶やそれらを思い出す行為を見出すことができます。そうしたことをディレクターチームで話し合う中で、「えーっと」という言葉にたどり着きました。
何か思い出そうとするとき、私達は「えーっと」と言いながら、断片的な記憶を寄せ集めて言葉にすることが多いのではないでしょうか? それは空白を埋める言葉であり、何かを考えたり、探しているときの言葉でもあります。他者との間を埋めながら、記憶と対話を繋いでいくための言葉でもあるかもしれません。
毎日のように、ウクライナへのロシアの軍事侵攻や、パレスチナでの人道危機についてのニュースが流れ、選挙があれば、極右政権が支持を得るというのは珍しいことではありません。
このような時代において、私達はフェスティバルという場を通して、何ができるのだろうかということを考える中で、「えーっと」という言葉に行きつきました。何かを白と黒に分ける二項対立的な思考に陥るのではなく、「えーっと」という空白のスペースに立ち止まること、思考を再構成すること、過去との対話から明日を作っていくということをキーワードとして、フェスティバルのプログラムを通して皆さんと考えたいと思います」。
©みずの紘
また、記者会見に登壇されたアーティストの穴迫信一氏(劇作家・演出家・俳優)と捩子ぴじん氏(ダンサー・振付家)は、Shows(上演プログラム)に参加。穴迫信一×捩子ぴじん with テンテンコとして、「スタンドバイミー」を上演します。
北九州でブルーエゴナクを旗揚げし、現在は京都と東京も拠点に加えるなど、国内で縦横に活動を広げている劇作家・演出家の穴迫信一氏。麿赤兒氏率いる大駱駝艦で活動を開始し、その後自身のソロダンスや振付作品を発表すると共に、様々なアーティストと共同作業を行ってきたダンサー・振付家の捩子ぴじん氏。THEATRE E9 KYOTOのアソシエイトアーティストを務めた経験もある2人が、初めての共同演出に臨みます。今作では、両者がかねてから関心を寄せていた死生観をテーマとし、「自らとの関係が保留されている(現在の、あるいは 100年後の)死者の前に立つことができるか」の問いをもとに、穴迫氏が戯曲を書き下ろします。音楽性の高いリリカルな穴迫氏の言葉に、 捩子氏の身体性はどのように介入していくのでしょうか。音楽は、アイドルグループBiSで活動後、ソロプロジェクトを展開するエレクトロニクスミュージシャン・DJのテンテンコしが担います。死者同士の対話は、生者の現実以上にその風景をリアルタイムに生起させるかもしれません。そこから観客が見出す、死と生と、 そして現在とは、一体どのようなものなのでしょうか。
最後に、松井孝治京都市長のからのメッセージをご紹介します。
「国内外で活躍する新進気鋭のアーティストが京都に集う舞台芸術の祭典「KYOTO EXPERIMENT」は今回、記念すべき15 回目となります。芸術表現の最先端を走り続ける壮大な実験(EXPERIMENT)がこうして今年も開催できることを心から嬉しく思います。開催に御尽力いただいた山本麻友美実行委員長をはじめ、すべての関係者の皆様に深く敬意と感謝の意を表します。
本年のテーマは「えーっと えーっと」。私たちが何かを考えたり、記憶を思い出したりするときになじみの深い言葉です。 豊かな歴史と文化を有するここ京都は、過去、現在、未来が交錯する場所。アーティストの研ぎ澄まされた感性で紡ぎ出され る京都ならではの表現に期待が高まるばかりです。御来場の皆様は、今ここだけの作品との出会いを心ゆくまでお楽しみくだ さい。
本市としても、「古きをいつくしみ、新たな世を切り拓く」との方針で、伝統を大切に、多才な人々が集い、文化を支える強い経済の復活やさまざまな社会課題の解決につなげる。そして「突き抜ける魅力のある文化首都・京都」の実現に全力で取り組んでまいります。変わらぬ御支援と御協力をお願い申し上げます」。
以上、京都発の国際舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」についてご紹介しました。今や日本でも数少ないチャレンジングな国際舞台芸術祭として、世界中の芸術関係者から熱視線が注がれている「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」に、ぜひご注目ください。
■KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2024
会期:2024年10月5日(土)~10月27日(日)
会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO、ほか
主催:京都国際舞台芸術祭実行委員会
[京都市、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)、京都芸術大学 舞台芸術研究センター、THEATRE E9 KYOTO(一般社団法人アーツシード京都)]
一般社団法人KYOTO EXPERIMENT
ダンスプログラム共同主催 ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル
苅部太郎個展 「あの海に見える岩に、弓を射よ / Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」
執筆者:遠藤友香
株式会社マイナビが、東京・銀座の歌舞伎座タワー22Fで運営する、2023年7月にオープンしたアートスペース「マイナビアートスクエア(MYNAVI ART SQUARE/通称:MASQ)」。学生、ビジネスパーソン、企業、教育機関とアーティストの繋がりを後押しするプラットフォームです。複雑化した社会で、主体的に考え柔軟に判断していく力を養うきっかけとなる「アート」や「アート思考」、「リベラルアーツ」を起点に、プログラムを展開しています。MASQは、新たなアイデアやアプローチをもたらすアーティストやキュレーター、コレクティブ(共同体) などの表現者らと共に、機械やAI では代替できない、一人ひとりのもつ潜在的な可能性を広げることで、豊かな未来を共創することを目指しているとのこと。
この度、MASQでは2024年8月31日(土) まで、アーティスト / 写真家の苅部太郎氏による個展「あの海に見える岩に、弓を射よ / Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」を開催中です。
アーティスト / 写真家 苅部太郎氏
苅部氏は、今日の社会における複雑な様相を、メディア技術や知覚システムの根源に立ち戻り、人類学や哲学など知の領域から「人がものを見る経験」を再認識するコンセプチュアルな作風を特徴としています。活動開始から一貫して写真メディアを使用し、初期は被災地・紛争国などでのフォトジャーナリズムや、人形やロボットなどの人工物と人間関係を結ぶ人々を捉えるドキュメンタリーの手法を用いました。そして近年は、テクノロジーと人間が相互作用しながら形成するホロスの主観的視覚世界の視覚化など、角度を変えながら手法を考察しています。
その活動は国内外で評価され、『EL PAÍS Semanal』や『WIRED.jp』にて作品が取り上げられるほか、「浅間国際フォトフェスティバル」や「Auckland Festival of Photography」などの展覧会にも多数出品しています。さらに今年春に開催された「ジャパンフォトアワード」では、審査員であるキュレーター/『Foam Magazine』元編集⻑の「Elisa Medde賞」を受賞。現代写真の新たな領域を切り拓く存在として注目を集めています。
「あの海に見える岩に、弓を射よ / Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」展示会場の様子
本展では、苅部氏が2022年から続けるプロジェクト「あの海に見える岩に、弓を射よ」に新作を交えて発表します。本作はマシンの知性からバイアスを引き出し、その眼に“幻の風景写真”を撮らせる認知心理学的な試みです。太古の穴居人が洞窟壁画や星座に抱いた「夢想」と、現代に生きる私たちの誰しもが囚われる「欲望」を、苅部はマシンを依り代にして魔術師のごとく作品に投影します。
「あの海に見える岩に、弓を射よ / Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」展示会場の様子
苅部氏は本展に関して、以下のように語っています。
「私は10年ぐらい写真を使った作家活動を、東京を拠点として行っています。写真を始める前に、心理学、感染症、金融、ITという領域で活動してきました。それで今美術や写真の分野で活動しており、ぱっと見バラバラなように思えるのですが、自分の中では一つ共通していることがあって、それは見えないシステムを使っていることなんです。心理学って見えないシステムを使うし、金融経済、ITもそうですし、感染症も免疫という体のシステムを使っていますよね。そういった見えないシステムに自分たちが生きている世界って包まれていて、そこのシステムに含まれているパターンや構造とか、そういったものを自分が探求したりとか、そこから何か自分の気づきやヒントを得られないかということを考えながら、そういった事象を扱っています。
そういったバックグラウンドがあって写真を始めたわけなんですが、写真を始めた当時は報道写真家として活動していました。国内外の被災地や難民キャンプといった、ハードゾーンが主な場所だったのですが、そういった場所でいわゆるフォトジャーナリズムをして、海外のメディアに写真を配信する仕事をしていました。
いわゆる歴史を動かすような大きな事件とかイシューとか、グランドゼロに立ちたいなという気持ちを持って活動してきて、具体的に言うと熊本地震とか、ロヒンギャ難民キャンプとか香港デモとか、そういった場所にも出向いてきたんですが、だんだん目の前で起きていることを写真に撮って、その写真を使ってどう語るかという語り方よりも、その写真を自分が撮って、その後世界中に伝播していくというそのダイナミズム、写真とか視覚メディアの機能自体に関心が移ってきました。
改めて考えるとすごく写真って不思議なもので、目の前で自分が見た光景をそのまま記録して、それを世界中の人と瞬時にシェアできるというものすごい制度で、そのおかげで人類のサバイバル能力とか考える力が上がっているんですが、そういった機能面について最近は考えています。なので、最近はこういったちょっとコンセプチュアルな、写真メディアそのものについて問うような、写真の写真性をあがくようなことを最近はしています」。
次に、苅部氏おすすめの1作品をピックアップしてご紹介します。
苅部氏はこちらの作品について、「これは街っぽい絵だなというのが多分おわかりになると思うんですが、元々の写真は違うんですね。元々の写真はノイジーな抽象的な画像なんです。この作品は、AIに誤読させる、機械に見間違いをさせるというプロジェクトです。
AIが搭載された風景写真認識システムがあって、そこに風景写真じゃないものを入れると、バグっちゃうんですね。バグってAIが混乱するという、AIのハルシネーションという現象なのですが、それをここでは積極的に出そうとしています。AIが搭載されたソフトウェアに、こういったカオティックなものを入れると、AIってバグりながらもパターン認識を頑張ってしようとするんですね。この情報の塊は窓だなとか、岩だなとか、森だなというのを、無理やり自分の中で一致率を計算して引っ張ってくるんですね。
ここでいうと、こういうブロックのノイズがデジタルテレビ画像の中で出てくるのですが、テレビを接触不良にしています。元々流れているドラマとかニュースとか、そういった番組にブリッジノイズを発生させて、よくわからない画像にして、その画面を直接カメラで撮っています。画面を撮って、その画像を回転とかトリミングすると、一見元の画像が何だかわからなくなります。そうやって人間が抽象画を観たときに、何かに自分に引きつけて観るように、AIも元々人間の脳を模して作られてるので、人間の脳と同じように解釈をしようとするんです。無理やりこういった出力をしてくることを行っています。
その出力具合も時間の経過に伴って変わってくるんですね。大体1年前に出力したときは写実的なものがたくさん出ていました。街とか、少し滝っぽい絵とか。ですが、だんだん時間が1年ぐらい経つと、抽象的な表現になってきたんですね。より抽象的に解釈を踏まえながら、AIが出力するようになってきていて、だんだん人間が観てこれは写実的な風景絵画だなっていうことを理解しづらくなってきて、AIの風景感と人間の風景感かがちょっとずつずれてきているなということが感じられて、そこを記録しているんですね。
AIってバージョンアップされて、一度バージョンアップされると、元のアルゴリズムとか元の振る舞いに戻らないんです。なので、そのときにしか得られないAIの振る舞いっていうものを私は写真的に、この瞬間をキャプチャーしているというのがこの作品になります」。
プロデューサー 戸倉里奈氏
MASQのキュレーションを担当しているプロデューサーの戸倉里奈氏は、本展について次のように述べています。
「マイナビアートスクエアは去年の夏にオープンしまして、特に去年から今年にかけては、若手のアーティストをフューチャーして取り扱っています。今回は、JAPAN PHOTO AWARDさんにご協力いただいての共同キュレーションになります。JAPAN PHOTO AWARDさんは、現代アート写真家、特に若手の発掘に力を入れているアワードで、非常に魅力的なアート写真家を多く輩出しています。今回、その中でも苅部太郎さんに展覧会をお願いしました。
苅部さんの素晴らしいところは、現代アート写真という写真の枠にとどまらずに、もっと広い可能性を示しているところです。ご覧いただくとわかるかと思うのですが、写真というよりも本当にアート作品で、まるでペインティングのような世界観が展開されています。写真は苅部さんが表現したいものの一つのツールであって、写真を見せたいわけではなく、本当にアート作品を見せるのが軸にあるのだと思いました。
軽部さんは非常に経歴も面白くて、色々なことを経験して最後にたどり着いたのがアート写真で、それはどうしてですかと聞いたら、わからないこと、わからないシステムを探していくのが好きなんですと仰ったのが非常に心に残りました。アートというのはずっと問いかけをしながら作り続けていくものだと個人的に思っていまして、苅部さんの作品が魅力的なのは、ずっと問い続けて、そして答えを見つけようとするその姿勢にあるんだなというふうにものすごく感じました」。
以上、MASQで開催中の苅部太郎の個展 「あの海に見える岩に、弓を射よ / Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」についてご紹介しました。まるで抽象画のような写真作品は、観ている者の心に深く刺さってくるものがあります。ぜひ会場に足を運んで、ご自身の目でお確かめください。
会場内では、Art Book『あの海に見える岩に、弓を射よ / Aim an Arrow at the Rock in the Ocean』の販売も。
■「あの海に見える岩に、弓を射よ / Aim an Arrow at the Rock in the Ocean」
会期 :2024年7月26日(金)〜8月31日(土)
・苅部太郎×徳井直生トークイベント | 8月22日(木) 19:00〜20:00
場所 :MYNAVI ART SQUARE(MASQ)
東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー22F
開館時間 :11:00〜18:00
休館日 :日・月・祝
サザビーズメゾン Courtesy of Sotheby’s
執筆者:遠藤友香
1744年に設立され、アートとラグジュアリー分野で世界的に知られる「サザビーズ」。サザビーズはオークションや即時購入チャネルを通じて、優れたアートやラグジュアリーオブジェへのアクセスと所有を促進しています。これにはプライベートセール、Eコマース、リテールが含まれます。長年蓄積された信頼に基づく我々のグローバルマーケットプレイスは、業界をリードするプラットフォームと、40カ国70カテゴリーにわたるスペシャリストのネットワークによって支えられています。これらのカテゴリーには、現代美術、近代美術、印象派美術、古典美術、中国美術、ジュエリー、時計、ワイン、スピリッツ、デザイン、そしてコレクティブルカーや不動産が含まれます。サザビーズは、アートと文化の変革力を信じ、業界をより包括的、持続可能、そして協力的にすることにコミットしています。
ササビーズメゾン、ランドマークチャーター Courtesy of Sotheby’s Photo credit : Stefan Ruiz
この度、サザビーズが2024年7月27日(土)に、アジアにおける新たなフラッグシップ拠点となる「サザビーズメゾン」を香港にオープンしました。メゾンは、ラグジュアリーブランドや世界的なコマーシャルギャラリーが立ち並ぶセントラル地区に位置するランドマークチャーターに開設されました。
ロッテルダムに本拠を置く建築スタジオ「MVRDV」によってデザインされた約2,230平方メートルに及ぶスペースは2フロアにわたり、独自のキュレーションの元、さまざまなカテゴリーのアートやラグジュアリーといった蒐集を探求する場として展開されています。先史時代から現代まで、20以上のカテゴリーを網羅するその価格帯は、5,000香港ドルから50百万香港ドルに及びます。2階のスペースには5つのサロンが設けられ、奈良美智の最も評価の高い作品群から「Agent Orange (In the Milky Lake)」や、塩田千春「State of being (Skull)」、平子雄一の「Tree Ring」など、日本人作家の作品を含む数百点にわたるファインアート作品やオブジェの販売を展開。オープニングでは、21世紀における最も衝撃的なオークションの瞬間のひとつとして記憶に新しいバンクシーの著名な「Girl with Balloon」が紹介されました。
サザビーズ・アジア・マネージングディレクターのネイサン・ドラヒは、以下のように語っています。
「サザビーズメゾンは長い年月をかけて築き上げてきたものです。私たちは香港のこの最先端のスペースが、世界中の訪問者にとって文化の中心地となること、あらゆる世代のアートやカルチャー愛好者が特別なオブジェや体験に触れ、インスピレーションが得られる場所となることを願っています。この香港の中心地にあるサザビーズの Another World を是非ご体験下さい」。
サザビーズ・サロン 上階 Courtesy of Sotheby’s
大通りに面するメゾンの1階スペースは3つの空間から成り、美術館級の展覧会やパフォーマンスに加えて、主要なオークションも展開される予定です。道教の教えとその具現化でもある岩の形にインスピレーションを受けたデザインは、自然との調和、絶え間ない変化と適応性を象徴し、過去と現在をつなぐ没入的で瞑想的な空間となっています。
グランドオープニングにおける展示では、ドイツのビジュアルアーティスト、ゲルハルト・リヒターの「Eisberg(Iceberg・氷山)」(1982年)と、中国の宋代の希少な汝窯陶磁器をユニークな視点から取り上げた「ICE: Two Masterworks on Loan from the Long Museum」展、そして仏教芸術の発展を網羅した展覧会「Bodhi: Masterpieces of Monumental Buddhist Art」を開催。
ICE: Two Masterworks on Loan from the Long Museum Courtesy of Sotheby’s
時空を超えた物語を展開する「ICE: Two Masterworks on Loan from the Long Museum」展では、現代美術が写真の時代を経て辿り着いた風景画の究極の形態の一つである、ゲルハルト・リヒターによる「Eisberg(Iceberg・氷山)」が、光り輝く青緑色の釉薬と織り交ぜられ、その氷のようにひび割れた美しい表情で歴代の皇帝や学者、人々を千年近くにもわたり魅了してきた稀有な汝窯の筆洗陶磁器と重ね合わされます。展覧会では英国の小説家、アンナ・カヴァンによる小説『氷』(1967年)の一節も参照されています。
Bodhi Masterpieces of Monumental Buddhist Art Courtesy of Sotheby’s ササビーズメゾン、ランドマークチャーター1階 Photo credit : Stefan Ruiz
BBodhi Masterpieces of Monumental Buddhist Art Courtesy of Sotheby’s ササビーズメゾン、ランドマークチャーター1階 Photo credit : Stefan Ruiz
また、古代ガンダーラから栄華を誇った明朝宮廷、北朝と南朝の激動の時代、そして二つの宋代まで、その二千年にも及ぶ仏教芸術の発展をたどる展覧会「Bodhi: Masterpieces of Monumental Buddhist Art」も同時開催。
同社は新たなメゾン開館を記念して、英国の著名俳優、チャールズ・ダンスがナレーションを務める特別映像「Another World」(2024年)も制作。そこでは複製技術を経た現代の世界にコピーのコピーが溢れている中で、それでも我々は「Another World(未知の世界)」を探求できると語られています。
サザビーズ・アジアの会長、ニコラス・チョウは次のように述べています。
「『Another World』は、私たちメゾンの哲学を体現しています。訪問者はこの場所において、数百万年の歴史と多様な文化や文明を反映したアートや収集品の数々を、その優れた美術館的要素を兼ね備えた空間で提供されるプログラムと共に、新たに創造された購入体験として365日楽しむことができます。
私たちの新しいメゾンは、歴史が語られ、創られる場であり、素晴らしい物語の数々が生き生きと蘇る場所になることを確信しています。
徹底したキュレーションや、現代的なパフォーマンス、ユニークなイベントを通じて、芸術体験の限界に挑戦します」。
サザビーズはまた、2024年9月に開催される「サザビーズ・モダン・コンテンポラリー・アートのイブニングセールスとデイセールス」を皮切りに、10月には「ラグジュアリー&アジアン・アートオークション 」も展開予定です。今後の展開も益々目が離せないサザビーズに、ぜひ注目してみてください。
■サザビーズメゾン
公式オープン日:2024年7月27日(土)
営業時間:
月~土|午前11:00~午後7:00
日|午前11:00~午後6:00
住所:LANDMARK CHATER, 8 Connaught Road, Central
sothebys.com/asia
世界屈指の文化芸術都市・京都を舞台に開催される、 アジアで最も大きな国際写真祭の一つである「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。 国内外の気鋭の写真家による作品展示を中心に、 子どもから大人、アマチュアからプロ写真家までを対象とする様々な教育プログラムも開催し、 写真を通して歴史や社会など関連分野にも造詣を深めていけるように取り組んでいます。 KYOTOGRAPHIEは、多くの観客、写真関係者、 多様な分野の第一人者たちが集い、 交流していくことで新たな創造性が生み出せるような、 国際的なプラットフォームの構築を目指しているとのこと。
この度、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭は、世界最古の写真祭「アルル国際写真フェスティバル」にて、「TRANSCENDANCE(超越)」展を、2024年9月29日(日)まで開催中です。本展では、写真の多様な言語を探求し、写真表現を肯定とレジリエンスへと昇華する 6 人の日本人女性写真家、細倉真弓、岩根愛、岡部桃、鈴木麻弓、殿村任香、吉田多麻希の作品が一同に会します。
(左から)仲西祐介、ルシール・レイボーズ(KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 共同創設者& 共同ディレクター)
「TRANSCENDANCE(超越)」展は、 第10回 KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭を記念し、ルシール・レイ ボーズ、仲西祐介、ポリーヌ・ベルマールの企画により2022年に開催された「10/10 現代日本女性写真家 たちの祝祭」展にインスパイアされ、同展に参加した写真家の数名の作品に焦点を当てています。彼女たち の作品に内在する親密性や集団社会における体験は、現代の日本社会の複雑性やその先にあるものを私たちに投げかけています。
「TRANSCENDANCE(超越)」展は、いわゆるグループ展ではなく、6人の写真家それぞれに光を当てる万華鏡のような展覧会とも言えるでしょう。写真の力を通して、ヴァルネラビリティ(脆弱性)、多様性の美しさ、そして自分の物語や歴史を新たに作っていく勇気を持つ女性たちの不屈の精神を讃えています。日本で制作された6名の作品は、KYOTOGRAPHIEが第1回からタッグを組んでいる小西啓睦のデザインによる洗練されたセノグラフィーにより展示されています。
展示会場となるVAGUEは、南フランスの古都アルルの閑静な通りに面した、自然光あふれる石造りの建造物で、日本出身のデザイナー兼クリエイティブ・ディレクターの柳原照弘がリノベーションを手掛けています。時を超越したこの空間では、建築、デザイン、現代アート、工芸が出会い、展覧会、ワークショップ、 フード・ポップアップ、マテリアルリサーチ、現代工芸、レジデンスなど、多様なコラボレーション・プロジェクトが生まれる場となっています。
■ケリング「ウーマン・イン・モーション」の協力
ファッション、レザーグッズ、ジュエリー製品を扱うメゾンおよびケリングアイウエア、ケリング ボーテを擁するグローバル・ラグジュアリー・グループである「ケリング」。傘下のブランドは、グッチ、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ブリオーニ、ブシュロン、ポメラート、ドド、キーリン、ジノリ1735。戦略の中心にクリエイティビティ(創造性)を掲げるケリングは、 サステナブルで責任のある方法により未来のラグジュアリーを築きながら、各ブランドがそれぞれの創造性を自由に表現することを可能にしています。
2015年、ケリングは映画界の女性に光を当てることを目的に、カンヌ国際映画祭にて「ウーマン・イン・ モーション」を立ち上げました。芸術分野における平等のための闘いは映画界に限ることなく、「ウーマン・ イン・モーション」は写真を始めとする他の芸術分野にもその取り組みを広げています。
2019年3月、ケリングはアルル国際写真祭とのパートナーシップを発表し、同写真祭での「ウーマン・イン・ モーション」プログラムをスタートしました。このパートナーシップは、女性写真家の認知度向上に貢献し、 同分野における男女平等を達成することを目的としています。ケリングは、2016年から支援しているマダム・ フィガロ・アルル・フォトグラフィー・アワードを通じて、才能ある次世代の女性写真家を支援し続ける一方で、 アルル国際写真祭にて「ウーマン・イン・モーション」ラボと「ウーマン・イン・モーション」フォトグラフィー・アワードを立ち上げました。同賞は象徴的な女性写真家のキャリアを称えるもので、受賞作家の作品を写真祭のコレクションとして購入するための賞金2万5000ユーロが含まれています。2019年はスーザン・ メイゼラス、2020年はサビーヌ・ヴァイス、2021年はリズ・ジョンソン・アルトゥール、2022年はバベット・ マンゴルト、2023年はロザンジェラ・レンノ、2024年は石内都が受賞しました。
日本でも、ケリングはKYOTOGRAPHIEを支援しています。2021年は、ヨーロッパ写真美術館 (MEP)による「MEP Studio(ヨーロッパ写真美術館)による5人の女性アーティスト展 ‐ フランスにおける写真と映像の新たな見地」、2022年に10名の日本人女性写真家の展覧会「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」、2023年は石内都・頭山ゆう紀「A dialogue between Ishiuchi Miyako and Yuhki Touyama |透視する窓辺」展、2024年は川内倫子・潮田登久子「From Our Windows」展を支援しました。
南仏に行かれる方は、世界最古の写真祭「アルル国際写真フェスティバル」にて開催中の「TRANSCENDANCE(超越)」展を、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。
■「TRANSCENDANCE(超越)」展
出展作家:細倉真弓、岩根愛、岡部桃、鈴木麻弓、殿村任香、吉田多麻希
会期:2024年7月1日(月) - 9月29日(日)
会場:VAGUE ARLES(フランス・アルル) 14 Rue de Grille, 13200 Arles, France
会場時間: 10:00―19:30
入場料:€ 6
キュレーション:ルシール・レイボーズ、仲西祐介(KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 共同創設者& 共同ディレクター)
共同プロデュース:SIGMA
With the support of Kering | Women In Motion