「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」展示風景 (左)山崎つる子《作品》1957/2001年 芦屋市立美術博物館蔵 (右)山崎つる子《作品》1964年 芦屋市立美術博物館蔵
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
1950年代から60年代にかけての女性美術家たちの創作活動を「アンチ・アクション」というキーワードから見直し、日本の近現代美術史の再解釈を試みる展覧会「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」が、2025年11月30日(日)まで愛知県・豊田市美術館にて開催中です。
当時、日本では短期間ながら女性美術家が前衛美術の領域で大きな注目を集めました。これを後押ししたのが、欧米を中心に隆盛し、フランス経由で流入した抽象芸術運動「アンフォルメル(非定型)」と、それに応じる批評言説でした。

「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」展示風景 (手前)多田美波《周波数37303030MC》1963年 東京国立近代美術館蔵
しかし「アンフォルメル」が一時的な「旋風」に過ぎなかったとの反省のもと、「アクション・ペインティング」という様式概念がアメリカから導入されるのに伴い、そうした女性芸術家たちは如実に批評対象から外されていきます。豪快さや力強さといった男性性と親密な「アクション」の概念に男性批評家たちが反応し、伝統的なジェンダー秩序の揺り戻しが生じたのです。
中嶋泉氏は『アンチ・アクションー日本戦後絵画と女性画家』(2019年)で、こうした経緯を分析したうえで、「アクション」時代に別のかたちで応答した女性の美術家たちの創作を指し、「アンチ・アクション」という言葉を提案しました。

田中敦子《Work 1963 B》1963年 豊田市美術館蔵 ©Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association

福島秀子《作品 109 》1959年 高松市美術館蔵
本展では、ジェンダー研究の観点から美術史の読み直しを図る『アンチ・アクション』を起点に、むやみに神秘化され、あるいは歴史的な語りから疎外されてきた芸術家たちを紹介しています。同書で中心的に語られた草間彌生、田中敦子、福島秀子の3人をはじめ、これまでの先行研究の蓄積と本展のための調査をふまえ、計14名による作品約120点を展示。
豊田市美術館は、本展が同時代の美術史研究の成果を広く紹介するとともに、多くの方々にとって作品あるいは作品の評価というものの見え方を、さらに豊かにする機会となってくれればと語っています。
ぜひ、会場に足を運んで「彼女たち」のアクションへの対抗意識と、独自の挑戦の軌跡にご注目ください。
【出品作家】
赤穴桂子、芥川(間所)紗織、榎本和子、江見絹子、草間彌生、白髪富士子、多田美波、田中敦子、田中田鶴子、田部光子、福島秀子、宮脇愛子、毛利眞美、山崎つる子
■アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦
会期:2025年10月4日(土)ー11月30日(日)
開館時間:10時〜17時30分(入場は17時まで)
休館日:月曜日(11月3日、24日は開館)
観覧料:一般1,500円、高校・大学生1,000円、中学生以下無料
*オンラインチケット、前売券及び20名以上の団体は200円割引(他割引との併用不可)
*本チケットで美術館本館のコレクション展及び髙橋節郎館の展示もご覧いただけます。
*国際芸術祭あいち2025フリーパス又は1dayパスご提示で100円割引(他割引との併用不可)
*高校・大学生の方は、学生証をご提示ください。
*観覧料の減免について(要証明)
– 障がい者手帳をお持ちの方(介添者1名)
– 豊田市内在住又は在学の高校生の方
– 豊田市内在住の18歳以下の方(満18歳から最初の3月31日まで)
– 豊田市内在住の満70歳以上の方
– その他、観覧料の減免対象者及び割引等についてはこちらをご確認ください。
主催:豊田市美術館
共催:朝日新聞社
学術協力:中嶋泉