執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
宮城県は、2025年11月14日(金)から16日(日)にかけて、アジアを中心に世界各国・地域のトレイル関係者が一堂に会する国際会議「アジア・トレイルズ・カンファレンス 2025 in 宮城(ATC2025)」を開催しました。
本会議は、アジアをはじめ、世界各国・地域のトレッキング愛好家が集う国際会議で、日本での開催は2015年鳥取大会以来2回目、宮城県で初開催となります。
14日蔵王町の「メルキュール宮城蔵王リゾート&スパ」で行ったシンポジウムは、冒頭、宮城県の村井嘉浩知事が「自然災害などの課題を乗り越え、アジア、そして世界中のトレイルの輪が繋がることを願う」と歓迎の意を表明。
続いて、蔵王町の村上英人町長が「トレイルは自然と人、地域と世界をつなぐ『絆の道』だ」と述べ、アジア・トレイルズ・ネットワーク(ATN)事務局長の周聖心氏も「トレイルの持続可能性について議論を深め、共通の歴史を刻もう」と呼びかけました。

挨拶に続き、歓迎パフォーマンスとして、宮城県出身の書道家、相馬美紀氏が登場。テーマ「歩こう、感じよう、育てよう 地域とともに繋ぐ道」を力強い筆致で書き上げ、会場を沸かせました。
カンファレンスでは、テーマ“歩こう、感じよう、育てよう 地域とともに繋ぐ道(Walk with Communities, Connect Trails for the Future)”のもと、14日には国内外の専門家約200名が参加するシンポジウムを実施。基調講演では、株式会社モンベル代表取締役会長の辰野勇氏、講演「トレイルの持続可能性(災害からの復旧・未然防止)」では、Brandi Horton氏(米国)、Cesar Aspiazu氏(ブラジル)、講演「トレイルと観光」ではNeil Le Febvre氏(オーストラリア)、小林徳光(宮城県副知事)らがご登壇されました。
基調講演の株式会社モンベル代表取締役会長の辰野に村井知事から、東日本大震災発生直後に辰野氏が「アウトドア義援隊」を組織し、被災地支援の陣頭指揮をとったことへの深い感謝の意が述べられました。 辰野氏は、モンベルが実践する「7つのミッション(社会的使命)」を紹介しながら、その背景を解説しました。「自然環境保全」や「防災・災害対応」「一次産業支援」など、行政では縦割りになりがちな分野を、アウトドアの視点で横断的に取り組む活動であると説明しました。
特に、カンファレンスのテーマにも通じる「エコツーリズムを通じた地域経済活性化」として、アウトドア・アクティビティを通じて地域の魅力を体験できる「ジャパンエコトラック」の取り組みを提言。アウトドアの知見が地域振興や防災・減災に直結することを強調し、トレイルが持つ多面的な可能性と、それを地域と共に育てるビジョンを示しました。

続くセッションでは、「トレイルと地域連携」をテーマとしたパネルディスカッションで活発な議論が交わされたほか、「トレイルの持続可能性」「トレイルと観光」をテーマにしたセッションでは、アメリカ、南米、オーストラリアでトレイル活動をされている専門家と、自身も登山愛好家である宮城県の小林徳光副知事が登壇し、講演しました。
シンポジウムに続く11月15日(土)・16日(日)には、「宮城オルレ」の新規コース開設を記念し、両日ともにオープニングセレモニー及びウォーキングイベントを開催。
(※『宮城オルレ「蔵王・遠刈田温泉コース』のイベントは、県西部地域においてクマの目撃情報が多数寄せられ、県として2025年11月30日(日)まで「宮城県ツキノワグマ人身被害防止強化月間」に設定していることを踏まえ、地域の安全確保を最優先し、延期が決定)
2018年にスタートした宮城オルレは、地域の自然や歴史、食などを楽しみながら歩くトレッキングコースとして、これまでに県内5コースを開設し、約8万人の方に利用いただいています。
6コース目となる「蔵王・遠刈田温泉コース」は、雄大な蔵王連峰や自然豊かな高原、食と温泉など、遠刈田温泉を堪能できるコースです。
宮城県は、本カンファレンスの開催を契機に、「宮城オルレ」の魅力を国内外にさらに発信することで、インバウンド誘客の促進と、トレイルを通じた持続可能な地域づくりを進めます。