6月20日は「世界難民の日」。ファーストリテイリンググループが、難民の自立支援活動をはじめ、世界の難民・国内避難民への支援を拡充

2024/06/26
by 遠藤 友香

執筆者:遠藤友香

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(左から)株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏、Harmony Sisters Network 代表 カディザ べゴム氏、国連難⺠⾼等弁務官事務所駐⽇代表 伊藤礼樹氏


6月20日は「世界難民の日」です。国連の難民支援機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、難民、国内避難民、無国籍者などを国際的に保護・支援するため、世界約135カ国で活動しています。2023年12月にスイス・ジュネーブで開催された「グローバル難民フォーラム」の主催団体として、共同議長国の日本などと連携しながら、多様なパートナーとともに、“社会全体で取り組む難民支援”の推進に取り組んでいます。

UNHCRは2024年6月13日、世界の難民や国内避難民、無国籍者などに関する最新データを集めた年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート 2023」を公開しました。2024年5月時点で、故郷から避難を余儀なくされた人が12年連続で増加し、過去最多の1億2,000万人に到達したことが発表されました。1億2,000万人は、世界で12番目に多い日本の人口に相当します。

2023年に、強制移動が歴史的な規模に達した背景には、新たに勃発した紛争、変化しながら続く紛争に加え、長期化した危機が解決に至っていないことなどが影響しています。特にスーダンで激化している紛争が強制移動の増加に大きく影響しており、2023年末時点で故郷を追われたスーダン人は合計1,080万人に及んでいます。また、コンゴ民主共和国とミャンマーでは、激しい戦闘により、数百万人が国内で避難を強いられています。

UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の推計では、ガザ地区で続く壊滅的な暴力により、昨年末時点で170万人(人口の75%)近くが避難を強いられており、その多くはパレスチナ難民です。シリアでは世界最大の難民危機が続いており、国内外で1,380万人が避難を強いられています。

フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は「これらの厳しい現実、数字の増加の裏側には、数えきれないほどの悲劇があります。その苦しみを前に、国際社会は立ち上がり、強制移動の根本的原因に緊急に取り組まなければなりません」と訴えます。「今こそ、紛争に関わる当事者が、戦争に関する基本的な法律と国際法を尊重しなければならない時です。紛争、人権侵害、そして気候変動に対処するため、さらなる協力、一致団結した努力が必要であることは明白です。そうしなければ、強制移動は増え続け、より一層の悲劇につながり、人道支援に必要な資金が拡大を続けることになります」と述べています。

報告書では、強制移動の中で最も増えているのは、紛争により国内で避難を余儀なくされた国内避難民です。国内避難モニタリング・センター(IDMC)の報告によると、5年間でほぼ50%の増加、6,830万人に達しています。

難民、その他の国際保護を必要としている人は、UNHCRおよびUNRWAの支援対象者合わせて4,340万人に増加しています。難民の大多数は近隣国で受け入れられており、その国々の所得を合わせても全世界の所得の20%に満たない、低中所得国で75%が暮らしています。

一方で、2023年には、国内避難民500万人以上、難民100万人以上が故郷に帰還しているという報告も出ています。これらの数字は、長期的な解決策に向けた前進の表れといえます。さらに第三国定住を通じた新たな受け入れは、16万人近くまで増加しました。

グランディ高等弁務官は「難民、そして受け入れコミュニティは、連帯と支援の手を必要としています。それぞれのコミュニティで受け入れが進めば、難民は社会に貢献できる存在であり、実際に貢献しています。同様に、2023年に帰還した数百万人は大切な希望の兆しです。私たちは、ケニアなどの国々が、難民の包括的受け入れによる社会づくりをリードしてきたのを見てきました。解決策は必ず存在します。しかしその実現のためには、実際の現場での責任ある関与と行動が不可欠です」と強調しています。

また報告書では、これまでよりも一層、故郷を追われた人々が気候危機の影響を不釣り合いなほどに大きく受けている状況についての新たな分析も示されています。

「グローバル・トレンズ・レポート 2023」で明らかとなった、1億2,000万人が故郷からの避難を余儀なくされている現状と大きな課題。UNHCRは、世界中で故郷を追われた人々を支援するために新たな対策への取り組みを続け、解決策の実現を目指す責任を果たしていくとのことです。

6月20日の「世界難民の日」に先立ち開催されたファーストリテイリンググループのイベント

ファーストリテイリンググループは、6月20日の「世界難民の日」に先立ち、6月19日に難民支援活動メディア説明会および 「” 届けよう、服のチカラ” プロジェクト」 ユニクロ特別課外授業を、国連難民高等弁務官事務所(以下UNHCR)の協力のもと、TOHO シネマズ 六本木ヒルズにて開催しました。

第一部ファーストリテイリンググループ難民支援活動メディア説明会において、グランディ高等弁務官はビデオメッセージを通じて、「世界では現在1億2,000 万人を超える人々が、紛争や迫害によって故郷からの避難を余儀なくされています。これは破られてはならなかった記録的な数字であり、その背後にいる数多くの人々、一人ひとりの物語や立ち上がる力をかき消してしまうほどの数字です」。「ファーストリテイリングは、民間企業による難民支援を牽引し、さまざまな活動を通じて企業としてのコミットメントを示すとともに、企業がいかに重要な役割を果たすことができるかを示し、難民が活躍するための道を切りひらく模範となってきました」と述べました。

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株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏


株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏は、「ファーストリテイリングは2006年から、世界の難民・国内避難民を支援するためUNHCRと協業してきました。グローバルに展開する服のビジネスの基盤を活かし、紛争や災害などによって難民となってしまった方々に対する衣料支援に加え、教育や職業訓練を通した自立支援や雇用支援など包括的な難民支援を行っています。世界で増え続ける難民の問題解決に向け民間企業の果たせる役割は大きく、UNHCR のグローバルパートナーであるファーストリテイリングは、今後も難民支援活動の継続とさらなる貢献をしていきます」と語りました。

ファーストリテイリンググループの難民支援活動のあゆみ(一部抜粋)

・2001年にNPOとともにアフガニスタン難民にエアテックジャケット 12,000着を寄贈。
・2006年からはUNHCRと協働し、難民キャンプへの訪問や衣料支援を開始。 2011年には UNHCRとの
グローバルパートナーシップを締結。
・2011年からユニクロ事業で難民雇用を開始し、2024年4月時点では日本国内のユニクロやジーユー
の店舗などで 60名の難民が就労 。 アメリカやドイツなど海外事業でも難民雇用を推進。
・2022年からバングラデシュでロヒンギャ難民の自立支援プロジェクトを開始し、2023年には年間 340万枚のサニタリーナプキンやショーツを生産、14の難民キャンプで11万人以上の難民女性たちに配布。
・2022年には平和を願うチャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」をスタートさせ、2024年4月までに400万枚のTシャツを販売し、UNHCRを含む人道支援団体への寄付額は12億円を達成。
・2024年6月には、ファーストリテイリング財団が支援する「さぽうと 21」が、日本初の難民教育相談センター「Educational Support Center for Refugees(通称:えすくーる)」を開設。

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(左から)株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏、Harmony Sisters Network 代表 カディザ べゴム氏


以前、ユニクロで難民雇用として採用され 、現在は難民背景の子どもたちの教育支援を行う NGO代表を務める、カディ ザ ・べゴム氏も登壇し、難民当事者としての思いを語りました。ファーストリテイリンググループは、衣料支援に加え、 難民の自立を支援の柱に位置付けており、引き続き、教育や職業訓練、雇用支援などの取り組みを推進していくとのことです。

第二部「“届けよう、服のチカラ” プロジェクト」 ユニクロ特別課外授業

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第二部では、「” 届けよう、服のチカラ” プロジェクト 」 ユニクロ特別課外授業を開催しました。ユニクロ LifeWearスペシャルアンバサダーの綾瀬はるかさんが講師助手として登壇し、昨年綾瀬さんと一緒にプロジェクトに参加した成蹊小学校6年生124名の生徒を対象に、難民の方への衣料支援に関する授業を実施しました。

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(左から)東京⼤学⼤学院教育学研究科 北村友⼈教授、綾瀬はるかさん(ユニクロLifeWearスペシャルアンバサダー)


授業では、特別講師の東京大学大学院教育学研究所の北村友人教授から難民の方たちのおかれている状況や環境について説明。学校へ行けないことから将来の仕事の機会が限られており、教育はとても重要であることが話され、生徒たちと難民の子どもたちの教育問題についても考える授業となりました。

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綾瀬はるかさん(ユニクロLifeWearスペシャルアンバサダー)


また、衣料の支援の話にも広がり、集められた服がどのように難民の方に届くのかを動画で紹介。綾瀬さんが、服を仕分けして海外に発送する拠点を訪問し、作業を体験しました。綾瀬さん自身も私物を寄付し、実際に受け取った女性からの映像メッセージを観て、「自分の服を受け取った方からメッセージをもらえると思っていなかったので感動しました。服のチカラで笑顔になっている姿を見られて嬉しいです」と語りました。

また、成蹊小学校からウクライナ難民の子どもたちへ、服とギフトが届けられたショートムービーを観た生徒は、「自分たちで作ったギフトで遊んで笑顔になってくれたのがとても嬉しかった」と喜んだ様子で話していました。最後に、難民の子どもたちからの御礼のメッセージカードが綾瀬さんから成蹊小学校の生徒へ手渡され、綾瀬さんから「皆さんの想いが難民の子どもたちに伝わって良かったですね。これからもできることを一歩ずつ、少しずつ、一緒にやっていきましょう」と生徒たちにメッセージを贈りました。

まとめとして、成蹊小学校の生徒さんが、今回のユニクロ特別課外授業を通して感じたことをご紹介します。

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成蹊小学校6年生 河崎伶奈さん


「服元気させること、服が暑さから身体を守ってくれることを知って、って大切って思いました。ウクライナの難民の方々がありがとうって言ってくれて、すごく嬉しかったです」。

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成蹊小学校6年生 永山大成さん


難民方々とても大変だしたちなどあげることによってよりもっと元気なってほしい思います」。


以上、6月20日の「世界難民の日」に先立ち、ファーストリテイリンググループが開催した、難民支援活動メディア説明会および 「” 届けよう、服のチカラ” プロジェクト」 ユニクロ特別課外授業についてご紹介しました。難民の方々が今置かれている状況を、一人ひとりが自分事として理解し、社会全体で難民支援について考えるきっかけとなれば幸いです。