執筆者:遠藤友香
株式会社マイナビを主幹事とするアートスクイグル実⾏委員会は、現代アートフェスティバル「Art Squiggle Yokohama 2024(アートスクイグルヨコハマ 2024)」を、2024年7⽉19⽇(⾦)から9⽉1⽇(⽇)までの 45 ⽇間、横浜・⼭下ふ頭にて初開催しています。
⼭下ふ頭は、明治維新から世界と⽇本を繋いで、⼈、モノ、そして⽂化が交差し続けてきた場所です。本イベントの会場である⼭下ふ頭・4号上屋もまた、⽇本の⾼度経済成⻑を⽀えてきた時代のアイコンであり、巨⼤な躯体を⽀えるトラス構造の建築は、昭和の建築技術の粋を集めた圧倒的なスケール感の内部空間を有しています。 ⼭下ふ頭は数年後に⼤規模な再開発が予定されており、本イベントは、歴史的にも貴重な建築物をアートとともに体験する試みでもあるといいます。
タイトルにも使われている「Squiggle(スクイグル)」という言葉は、「まがりくねった / 不規則な / 曲線」という意味を持ちます。直線的でなく予測不能な動きや形状を表すことから、この言葉は本展において、アーティストが創作活動中に経験する迷いや試行錯誤のプロセスを象徴しており、来場者もまた、まるで迷路のように構成された空間を好きな順序で辿りながら、アート鑑賞を楽しむことができます。
アーティストやコレクティブなど総勢16組による作品が展示され、その内8組が本イベントのために制作した新作を初披露します。会場は、空間デザイナーの西尾健史が空間設計を手掛けています。
株式会社MAGUS(マグアス)をはじめとする企画制作チームから、以下の言葉が寄せられています。
「アートは、私たちから遠い存在ではありません。私たちが生きる時代、社会、暮らしのなかのさまざまな経験や感情から生まれてくるものです。ここでは、テーマやコンセプト、制作プロセスに『Squiggle(スクイグル) = やわらかな試行錯誤』が見られる多様な作品を、アーティストのビジョンに寄り添った空間でご紹介しました。正しいアートの見方を提示するのではなく、ご来場のみなさまにも『Squiggle』するアート鑑賞を体験してもらうべく、ライブラリー&ラウンジや『アーティスト・ノート』をご用意しました。ここでのユニークな体験を日常にも持ち帰り、アートを少しでも身近に感じていただけましたらうれしいです」。
次に、本イベントでおすすめの作品を5点ピックアップします!
1.GROUP
建築プロジェクトを通して、異なる専門性を持つ人々が仮設的かつ継続的に共同できる場の構築を目指し、建築設計・リサーチ・施工をする建築コレクティブ「GROUP」。
こちらの展示は、約100平米の空間をサボテンのある広場にし、人間とサボテンが築くことができたかもしれない風景としたもの。航路を通じ、サボテンが日本に渡来したのは16世紀後半のこと。当時は鑑賞用のほか、薬用として紹介されていました(いずれも諸説あり)。そうした渡来経緯は今でも色濃く残り、もしそれとは違った出合い方をしていれば、サボテンとの付き合い方も今とは異なったのかもしれない―。GROUPはサボテンを見つめることで、テーブルや棚の一部として採用し、新しい家具の構造物としてサボテンを提案します。リサーチャー・原ちけい、音楽家・土井樹、植物に関する専門家・越路ガーデン(西尾耀輔)を迎え、建築の知見だけでなく多角的にサボテンを見つめ直しています。
GROUPの井上岳は「本展が開催される45日間で、(サボテンの)植物としての成長も予想しています。会期中にサボテンの世話をしながら、そうした変化過程も含めて展示にできればなと。そうすると、今とは全然違ったサボテンと人間の新しい関係が生まれるんじゃないかと期待しています」と述べています。
2.山田愛
山田愛《流転する世界で》(2024)Photo: Shinichi Ichikawa
1992年に京都府にて生まれた山田愛は、社寺建築や墓石を手掛ける石材店にて育ちました。2017年に東京藝術大学大学院美術研究科先端藝術表現専攻を修了。石やドローイングを用いたインスタレーションを主な手法とし、根源的な地点へ誘う鑑賞体験を目指しています。
こちらは、直径5メートルの円の中に無数の石が並ぶインスタレーション作品で、自身の好きな場所から思い思いに鑑賞可能です。一筆で円を描いた、始まりも終わりもない無限の世界や悟りの境地を表す禅の書画を意味する〈円相〉と名付けられたシリーズの新作です。
山田愛《流転する世界で》一部(2024)Photo: Shinichi Ichikawa
山田は平らにならした砂の上に、何度も洗い、汚れを拭き、本来の美しさを取り戻した、ひとつとして同じものがない石をそれぞれが在るべき場所に据えていきました。世界の縮図のようなインスタレーションには、私たち一人ひとりにも輝く場所が必ずあるという祈りのような思いが込められています。ここでの体験は、自身と向き合い、現在の立ち位置を見つめ直す時間となるでしょう。交平光平
3.川谷光平
東京を拠点に活動する写真家・川谷光平。近い距離感から色鮮やかに被写体を捉える独自の作風で、国内外から注目を集めています。
川谷の展示空間にはいくつかの新作のほか、パーソナルワークやクライアントワークで撮影し、当時は選ばなかったアザー写真や資料写真を含む、膨大なカットの中から選び直した写真が並びます。それぞれの写真が固有の作品性を保ちながらも、どれが、どこまでが作品の領域から明らかではありません。
本来、一直線上に進んでいくはずの写真家にとってのプロセス、すなわち、リサーチ→撮影→セレクト→編集→展示という流れが会場の中に視覚化され、そこを順行・逆行しながらぐるぐると考え直すことで、作品としてのイメージが「ゴールすること」について言及します。鑑賞者がこの場所で撮影した写真も、川谷の作品に内包され得るかもしれません。
4.中島佑太
2008年に東京藝術大学美術学部卒業以後、一貫してワークショップを用いた活動を続けている中島佑太。ルールやタブー、当たり前だと考えられていることなどに関心を持ち、遊びや旅といった軽やかなテーマを通して、その書き換えを試みています。近年は、保育施設に活動を拡張し、子どもたちやその周りにいる大人たちとの関わりから見えてくる社会の問題や課題をリサーチしながら、芸術と遊びの融合を模索しています。
こちらの作品は、かつて鉱山で働いていたという朝鮮人労働者たちのエピソードから着想を得たもの。石を砕き、砂に変える過程を手作業によって行い、砂場をつくるワークショップです。過酷さを連想させる砕石や採掘といった労働(Labor)によって、芸術作品(Work=仕事)に参加をし、遊びという人間の根源的な活動(Action)の場へと接続を試みます。
砂山にトンネルを掘る行為は、子どもの頃に誰もが体験した遊びのひとつなのではないでしょうか。遊びとは、遊ぶ主体である個人の内側に、誰からも指示・強制されることなく湧き起こるものです。ワークショップの名の下に強制された作業から、遊びは生み出せるのでしょうか。
5.河野未彩
視覚ディレクター/グラフィックアーティストの河野未彩。音楽や美術に漂う宇宙観に強く惹かれ、2000年代半ばから創作活動を始めました。多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業後、現象や女性像に着目した色彩快楽的な作品を多数手掛けています。
《HUE MOMENTS》は、白い光の中に7色の影をつくるペンダントライト「RGB_Light」を開発する際のインスピレーションとなった、「光の三原色」の原理を再解釈したインスタレーション作品です。幅10メートル越えの空間に構造体があり、そこにR(Red:赤)、G(Green:緑)、B(Blue:青)の光源をミックスさせた光を3方向から当てることで、刻一刻と変化する影や色面をつくりだします。
色が移り変わる周期はそれぞれの光源で異なり、45日間一瞬も同じ色が現れることはありません。この作品には、河野の「鑑賞体験を通じて光と影の関係性や、そこにある多様性を感じるとともに、この瞬間にしか存在しない色相を目撃してもらいたい」という想いが込められています。
暑い夏にぴったり!ソフトドリンク&アルコールの販売も
イベント会場内(屋外)では、週末を中心にフードトラックも営業し、オフィシャルバーでは暑い夏におすすめのソフトドリンクとアルコールの販売を行っています。アルコールには、横浜市内で最も長い歴史を持つローカルビアカンパニーの「横浜ビール」や、90年の歴史を持つ台湾最大のビールブランド「台湾ビール」がラインナップ。「横浜ビール」からはグビグビ飲める味わいのIPAや、心地良い柑橘の香りが爽やかなピルスナーなどの横浜で愛されるビールを各種、「台湾ビール」からは、台湾でも大人気の「マンゴー(香郁芒果)」、「パイナップル(甘甜鳳梨)」をはじめとした台湾フルーツ果汁がたっぷり入った飲みやすいフルーツビールが楽しめます。
以上、現代アートフェスティバル「Art Squiggle Yokohama 2024(アートスクイグルヨコハマ 2024)」についてご紹介しました。主観と客観を⾏き来する思考プロセスを経て作られた多彩な作品群は、新しい視点や気づきを与えてくれることでしょう。ぜひ、会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
■「Art Squiggle Yokohama 2024 (アートスクイグルヨコハマ 2024 )」
会期日時:2024年7⽉19⽇(⾦)〜9⽉1⽇(⽇) (45⽇間開催)
平⽇・⽇・祝⽇ 11:00-20:00 (19:15 最終⼊場)/ ⾦・⼟ 11:00-21:00 (20:15 最終⼊場)
開催地:横浜⼭下ふ頭(神奈川県横浜市中区⼭下町)
⼊場料:当⽇ 2,400 円
⼤学⽣、⾼校⽣ 1,500 円
横浜市⺠割 当⽇ 2,200円
※中学⽣以下無料(⼊場時に受付にて学⽣証提⽰)
※障がい者⼿帳をお持ちの⽅と介護の⽅1名は無料
※⼤学⽣、⾼校⽣:⼊場時に受付にて学⽣証提⽰
※横浜市⺠割:横浜市内在住の⽅(⼊場時に受付にて要証明)は⼀般料⾦より200円割引
チケット販売:ArtSticker(Art Squiggle Yokohama 2024 | オンラインチケット販売 | ArtSticker)にて販売中
【主催】アートスクイグル実⾏委員会 (マイナビ、他)
【企画制作】MAGUS、博報堂DYメディアパートナーズ
【後援】横浜市にぎわいスポーツ⽂化局、横浜港ハーバーリゾート協会、J-WAVE
【協⼒】東急、カリモク家具
【公式サイト】ART SQUIGGLE YOKOHAMA 2024 | やわらかな試行錯誤 芸術と私たちを感じる45日間
【公式SNS】 Instagram @artsquiggle_official ART SQUIGGLE丨アートスクイグル(@artsquiggle_official) • Instagram写真と動画