執筆者:遠藤友香
2023年7月に銀座・歌舞伎座タワー22Fにオープンした、株式会社マイナビが東京・銀座で運営するアートスペース「マイナビアートスクエア(MYNAVI ART SQUARE / 通称:MASQ)」。学生、ビジネスパーソン、企業、教育機関とアーティストの繋がりを後押しするプラットフォームです。
複雑化した社会で、主体的に考え柔軟に判断していく力を養うきっかけとなる「アート」や「アート思考」、「リベラルアーツ」を起点にプログラムを展開しています。MASQは、新たなアイディアやアプローチをもたらすアーティストやキュレーター、コレクティブ(共同体)などの表現者らと共に、機械やAIでは代替できない、一人ひとりのもつ潜在的な可能性を広げることで、豊かな未来を共創することを目指しています。
この度MASQにおいて、2024年7月6日(土) まで、建築コレクティブ「GROUP」による個展「島をつくる | Planning Another Island」を開催中です。
GROUPは、建築プロジェクトを通して、異なる専門性を持つ人々が仮設的かつ継続的に共同できる場の構築を目指し、建築設計・リサーチ・施工をする建築コレクティブ。主な活動として、設計・施工「夢洲の庭」(大阪府、2025)、設計・運営「海老名芸術高速」(神奈川県、2021)、設計・施工「新宿ホワイトハウスの庭」(東京都、2021)、企画・編集「ノーツ 第一号 庭」(NOTESEDITION、 2021)、設計「EASTEAST_TOKYO」(アートフェア会場構成、2023)、 グループ展「InvolvementRain/Water passage」(金沢21世紀美術館 DXP展、2023)、個展「手入れ/Repair 」(WHITEHOUSE、2021)などがあります。
銀座に位置するMASQの窓からの景色には、東京湾に浮かぶ埋立地が広がっています。本展は、その大きな島を生成する建築を介して、もうひとつの島の可能性を探究します。ある住宅の改修工事の過程で発生した廃材が会場内に運び込まれ、それらを土へと還すコンポストが展示されています。その後、ひとつの住宅から生まれた土を、展示会場からもとの場所へと戻すことで、島のかたちを変える試みを実践します。
産業廃棄物となった住宅の廃材を循環させる仕組みを展示会場内に再現したインスタレーションは、観る者にいくつもの問いを投げかけます。これまでにもGROUPは、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきた都市開発、建築のあり方を再考し、その実践過程そのものをアート作品へと昇華するプロジェクトを数多く手掛けてきました。近年、GROUPが力を注ぐ建築の終着地についてのリサーチ、新たな選択肢を模索するプロセスを体現した本展は、私たちの日々の暮らしから生み出されている島のあり方に考えを巡らせる機会となることでしょう。
GROUP共同代表 井上岳氏
GROUPの共同代表である井上岳氏は、「解体して土にしたものたちは、成増の住宅に持ち帰って、床材にしたり、壁材に戻して、また使っていこうと思っています。
マルチング材という、土の表面を仕上げたりするのにも使えたりとか、土って何だ、何ぞやっていう展示でもあったりして、ガラスも砕くと、珪砂(けいしゃ)というテニスコートの砂と同じ材料になるんですけど、砕いて砂に戻してみたりとか、石膏とかコンクリートも砕くと石灰になってくるので、それも土とも言えるかもしれないということで、僕らなりに分解を試みているという感じです。
会場には音が流れているんですが、普段は埋立地の処理場の音、例えば鳥がいっぱいいるんですけど、鳥の音とかを分解した音が鳴っています。また、日本全国で地震が起こると、地震が起こりましたよって知らせる音が鳴るようにもなっていて、この風景を眺めながら、地震と神話と日本における建物や空間のあり方というのも見直せるような展示になるといいかなと思って作っています」と語っています。
以上、建築コレクティブ「GROUP」による個展「島をつくる | Planning Another Island」についてご紹介しました。建築を介して、もうひとつの島の可能性を探究する本展に、ぜひ足を運んでみては?
■「島をつくる | Planning Another Island」
会期:2024年5月23日(木)〜7月6日(土)
場所:MYNAVI ART SQUARE
東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー22F
開館時間:11:00〜18:00
休館日:日・月・祝