日本の渚・百選に選ばれた“関東の沖縄”千葉県・勝浦の鵜原海岸に、海まで5秒の1日1組1棟貸切プライベートホテル 「THE VIBES VILLA」がオープン!

2024/07/02
by 遠藤 友香

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執筆者:遠藤友香


アウトドアパーク「WILDBEACH」などを手がけるRECREATIONS株式会社が、日本の渚・百選に選ばれた千葉県・勝浦の鵜原海岸(うばらかいがん)に、海まで5秒の1日1組1棟貸切プライベートホテル「THE VIBES VILLA(ザ・バイブス・ヴィラ)」を2024年7月20日(土)にオープンします。

“関東の沖縄”とも称される透明度の高い海と、”日本の渚・百選”に選ばれた美しい砂浜が広がる鵜原海岸、豊かな緑とリアス式海岸が続く南房総国定公園に囲まれた勝浦エリア。この閑静なロケーションを活かして、海までわずか5秒の距離に位置する、1日1組限定のスモールラグジュアリーホテル「THE VIBES VILLA (ザ・バイブス・ヴィラ)」が誕生します。”Ocean Hideaway(海の隠れ家)”をコンセプトに、アーバン・サード・リゾートとして、都市の喧騒を離れ心を休めることができる、あなただけのリゾート空間を提供します。

都心から車で90分、電車でもアクセス可能な千葉県勝浦市。”エクスクルーシブ(広がる海と空の絶景)“、”オンリーワン(非日常空間)”、“エスケープ(開放体験)”をテーマに展開される勝浦のビーチに面したオーシャンビューの本施設は、海まで徒歩5秒という好立地のサードプレイスなホテルです。

1棟貸しの1日1組限定のため、自分たちだけのプレミアムな空間を作り出すことができます。また、敷地面積は550㎡となっており、テラスにはジェットバスや薪ストーブテントサウナ(オプション料金)を完備。8名まで宿泊可能なため、ファミリーやグループでの活用もOK。

インテリアは、空間デザイナーの森井良幸氏が手掛け、海外の別荘を彷彿とさせるラグジュアリーな空間を演出し、最先端の家具や電化製品を常備しています。さらに、オプション料金を追加すれば、バーベキューセットも提供。

1. 旬なニューラグジュアリースタイルを体験できるスポット

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ニューラグジュアリーにマッチするトレンド性も網羅した、お金では買えない五感を満たす隠れ家的な場所。“関東の沖縄”とも称される、澄み切った鵜原海岸の波の音に包まれつつ、日常を忘れた贅沢なひとときを過ごすことで、日々のストレスから解放され、充足感を得ることができます。

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コロナ渦以降に需要が高まっている一棟貸しの宿泊施設は、まるで自分たちの別荘のような感覚でリラックスできます。家族や大切な人と、至福の極上体験を味わうことができます。また、記念日や誕生日など、特別なオケージョンを祝うのも◎。

2.ちょっとそこまでのリゾートを。エモーションな非日常体験を身近に

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都心から車で1時間30分で到達する自分たちだけの空間。円安により高騰する海外旅行の代わりに、身近なリゾート地として活用できます。また、海まで徒歩5秒のため、サーフィン、サップ、フィッシングといったアクティビティを、気軽に楽しめるのも魅力的。天候の条件次第によっては、夜に満天の星空を堪能できるなど、勝浦の豊富な自然を存分に味わうことができます。近隣には、勝浦の朝市、白鳥居といった観光施設も充実しているため、空いた時間により一層思い出を深めることも可能です。

3.充実した設備でオーシャンビューを独り占めにできるプライベートスペース

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「THE VIBES VILLA(ザ・バイブス・ヴィラ)」は、4名様まで統一料金設定なので、複数名での利用がお得です。食材は持ち込み自由となっているため、自分好みの料理を作ることができます。

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設備としては、二つのベッドルームを配備し、150インチのモバイルプロジェクターで、映画などを満喫することも可能です。また、テラスエリアはホワイトビーチが敷き詰められており、屋外ジェットバス、ビーチベッド、ガーデンベンチテーブル、ファイヤートーチといった要素で、リゾート気分を高めてくれます。さらに、海と一体化した写真が撮れる、特注大型インフィニティフレームも備えているため、記念のショットをエモーショナルにブラッシュアップできます。

4.空間デザイナー森井良幸氏が手掛けたモダンなインテリアで、特別な時間を

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インテリアは、鴨川のほとりに建つ一棟貸しギャラリー「kojin kyoto」や、瀬戸内海のサンセットを客室から望める「KAMOME SLOW HOTEL」などを設計・監理したデザイナーの森井良幸氏がデザインを担当。

「THE VIBES VILLA(ザ・バイブス・ヴィラ)」は、眼下に広がる海と客室が平行になるように設計されており、どの場所からも海と一体感を感じられる作りとなっています。また、床を1m上げて目線を高くすることで、オーシャンビューをより一層体感できるように趣向が凝らされています。

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インテリアは白を基調としたモダンな空間に、特注照明やスイッチのゴールド色を交えてリュクスな雰囲気を演出。照明は、ソフトな温かみのあるライトを使い、シックに仕上げています。さらに、所々に配された壁面のグラフィックは、室内スイッチの使い方をプレイフルに表現しています。

海まで5秒のプライベートホテル「THE VIBES VILLA(ザ・バイブス・ヴィラ)」に、ぜひ大切な方と訪れて、一生記憶に残る素敵なひとときをお過ごしください。


■THE VIBES VILLA(ザ・バイブス・ヴィラ)
千葉県勝浦市鵜原918
敷地面積:550㎡
宿泊可能人数:8名様まで宿泊可能
部屋数:リビング、2ベッドルーム
ベッド数:キング1、 ダブル2、シングル2(電動リクライニング)
予約サイト:https://x.gd/AKMyI
 (2024年7月2日(火)から予約開始)
グランドオープン:2024年7月20日(土)
価格:4名様利用 112,750円(税込)
※素泊まり  ※4名様まで統一料金
チェックイン:15:00/チェックアウト:11:00
駐車場:4台まで
オプションプラン:
・薪ストーブテントサウナ
・ウェーバー社製バーベキューグリル
女子旅プランも実施 宿泊代20%OFF ※平日限定

The Vibes Villa

6月20日は「世界難民の日」。ファーストリテイリンググループが、難民の自立支援活動をはじめ、世界の難民・国内避難民への支援を拡充

2024/06/26
by 遠藤 友香

執筆者:遠藤友香

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(左から)株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏、Harmony Sisters Network 代表 カディザ べゴム氏、国連難⺠⾼等弁務官事務所駐⽇代表 伊藤礼樹氏


6月20日は「世界難民の日」です。国連の難民支援機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、難民、国内避難民、無国籍者などを国際的に保護・支援するため、世界約135カ国で活動しています。2023年12月にスイス・ジュネーブで開催された「グローバル難民フォーラム」の主催団体として、共同議長国の日本などと連携しながら、多様なパートナーとともに、“社会全体で取り組む難民支援”の推進に取り組んでいます。

UNHCRは2024年6月13日、世界の難民や国内避難民、無国籍者などに関する最新データを集めた年間統計報告書「グローバル・トレンズ・レポート 2023」を公開しました。2024年5月時点で、故郷から避難を余儀なくされた人が12年連続で増加し、過去最多の1億2,000万人に到達したことが発表されました。1億2,000万人は、世界で12番目に多い日本の人口に相当します。

2023年に、強制移動が歴史的な規模に達した背景には、新たに勃発した紛争、変化しながら続く紛争に加え、長期化した危機が解決に至っていないことなどが影響しています。特にスーダンで激化している紛争が強制移動の増加に大きく影響しており、2023年末時点で故郷を追われたスーダン人は合計1,080万人に及んでいます。また、コンゴ民主共和国とミャンマーでは、激しい戦闘により、数百万人が国内で避難を強いられています。

UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の推計では、ガザ地区で続く壊滅的な暴力により、昨年末時点で170万人(人口の75%)近くが避難を強いられており、その多くはパレスチナ難民です。シリアでは世界最大の難民危機が続いており、国内外で1,380万人が避難を強いられています。

フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は「これらの厳しい現実、数字の増加の裏側には、数えきれないほどの悲劇があります。その苦しみを前に、国際社会は立ち上がり、強制移動の根本的原因に緊急に取り組まなければなりません」と訴えます。「今こそ、紛争に関わる当事者が、戦争に関する基本的な法律と国際法を尊重しなければならない時です。紛争、人権侵害、そして気候変動に対処するため、さらなる協力、一致団結した努力が必要であることは明白です。そうしなければ、強制移動は増え続け、より一層の悲劇につながり、人道支援に必要な資金が拡大を続けることになります」と述べています。

報告書では、強制移動の中で最も増えているのは、紛争により国内で避難を余儀なくされた国内避難民です。国内避難モニタリング・センター(IDMC)の報告によると、5年間でほぼ50%の増加、6,830万人に達しています。

難民、その他の国際保護を必要としている人は、UNHCRおよびUNRWAの支援対象者合わせて4,340万人に増加しています。難民の大多数は近隣国で受け入れられており、その国々の所得を合わせても全世界の所得の20%に満たない、低中所得国で75%が暮らしています。

一方で、2023年には、国内避難民500万人以上、難民100万人以上が故郷に帰還しているという報告も出ています。これらの数字は、長期的な解決策に向けた前進の表れといえます。さらに第三国定住を通じた新たな受け入れは、16万人近くまで増加しました。

グランディ高等弁務官は「難民、そして受け入れコミュニティは、連帯と支援の手を必要としています。それぞれのコミュニティで受け入れが進めば、難民は社会に貢献できる存在であり、実際に貢献しています。同様に、2023年に帰還した数百万人は大切な希望の兆しです。私たちは、ケニアなどの国々が、難民の包括的受け入れによる社会づくりをリードしてきたのを見てきました。解決策は必ず存在します。しかしその実現のためには、実際の現場での責任ある関与と行動が不可欠です」と強調しています。

また報告書では、これまでよりも一層、故郷を追われた人々が気候危機の影響を不釣り合いなほどに大きく受けている状況についての新たな分析も示されています。

「グローバル・トレンズ・レポート 2023」で明らかとなった、1億2,000万人が故郷からの避難を余儀なくされている現状と大きな課題。UNHCRは、世界中で故郷を追われた人々を支援するために新たな対策への取り組みを続け、解決策の実現を目指す責任を果たしていくとのことです。

6月20日の「世界難民の日」に先立ち開催されたファーストリテイリンググループのイベント

ファーストリテイリンググループは、6月20日の「世界難民の日」に先立ち、6月19日に難民支援活動メディア説明会および 「” 届けよう、服のチカラ” プロジェクト」 ユニクロ特別課外授業を、国連難民高等弁務官事務所(以下UNHCR)の協力のもと、TOHO シネマズ 六本木ヒルズにて開催しました。

第一部ファーストリテイリンググループ難民支援活動メディア説明会において、グランディ高等弁務官はビデオメッセージを通じて、「世界では現在1億2,000 万人を超える人々が、紛争や迫害によって故郷からの避難を余儀なくされています。これは破られてはならなかった記録的な数字であり、その背後にいる数多くの人々、一人ひとりの物語や立ち上がる力をかき消してしまうほどの数字です」。「ファーストリテイリングは、民間企業による難民支援を牽引し、さまざまな活動を通じて企業としてのコミットメントを示すとともに、企業がいかに重要な役割を果たすことができるかを示し、難民が活躍するための道を切りひらく模範となってきました」と述べました。

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株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏


株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏は、「ファーストリテイリングは2006年から、世界の難民・国内避難民を支援するためUNHCRと協業してきました。グローバルに展開する服のビジネスの基盤を活かし、紛争や災害などによって難民となってしまった方々に対する衣料支援に加え、教育や職業訓練を通した自立支援や雇用支援など包括的な難民支援を行っています。世界で増え続ける難民の問題解決に向け民間企業の果たせる役割は大きく、UNHCR のグローバルパートナーであるファーストリテイリングは、今後も難民支援活動の継続とさらなる貢献をしていきます」と語りました。

ファーストリテイリンググループの難民支援活動のあゆみ(一部抜粋)

・2001年にNPOとともにアフガニスタン難民にエアテックジャケット 12,000着を寄贈。
・2006年からはUNHCRと協働し、難民キャンプへの訪問や衣料支援を開始。 2011年には UNHCRとの
グローバルパートナーシップを締結。
・2011年からユニクロ事業で難民雇用を開始し、2024年4月時点では日本国内のユニクロやジーユー
の店舗などで 60名の難民が就労 。 アメリカやドイツなど海外事業でも難民雇用を推進。
・2022年からバングラデシュでロヒンギャ難民の自立支援プロジェクトを開始し、2023年には年間 340万枚のサニタリーナプキンやショーツを生産、14の難民キャンプで11万人以上の難民女性たちに配布。
・2022年には平和を願うチャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」をスタートさせ、2024年4月までに400万枚のTシャツを販売し、UNHCRを含む人道支援団体への寄付額は12億円を達成。
・2024年6月には、ファーストリテイリング財団が支援する「さぽうと 21」が、日本初の難民教育相談センター「Educational Support Center for Refugees(通称:えすくーる)」を開設。

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(左から)株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏、Harmony Sisters Network 代表 カディザ べゴム氏


以前、ユニクロで難民雇用として採用され 、現在は難民背景の子どもたちの教育支援を行う NGO代表を務める、カディ ザ ・べゴム氏も登壇し、難民当事者としての思いを語りました。ファーストリテイリンググループは、衣料支援に加え、 難民の自立を支援の柱に位置付けており、引き続き、教育や職業訓練、雇用支援などの取り組みを推進していくとのことです。

第二部「“届けよう、服のチカラ” プロジェクト」 ユニクロ特別課外授業

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第二部では、「” 届けよう、服のチカラ” プロジェクト 」 ユニクロ特別課外授業を開催しました。ユニクロ LifeWearスペシャルアンバサダーの綾瀬はるかさんが講師助手として登壇し、昨年綾瀬さんと一緒にプロジェクトに参加した成蹊小学校6年生124名の生徒を対象に、難民の方への衣料支援に関する授業を実施しました。

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(左から)東京⼤学⼤学院教育学研究科 北村友⼈教授、綾瀬はるかさん(ユニクロLifeWearスペシャルアンバサダー)


授業では、特別講師の東京大学大学院教育学研究所の北村友人教授から難民の方たちのおかれている状況や環境について説明。学校へ行けないことから将来の仕事の機会が限られており、教育はとても重要であることが話され、生徒たちと難民の子どもたちの教育問題についても考える授業となりました。

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綾瀬はるかさん(ユニクロLifeWearスペシャルアンバサダー)


また、衣料の支援の話にも広がり、集められた服がどのように難民の方に届くのかを動画で紹介。綾瀬さんが、服を仕分けして海外に発送する拠点を訪問し、作業を体験しました。綾瀬さん自身も私物を寄付し、実際に受け取った女性からの映像メッセージを観て、「自分の服を受け取った方からメッセージをもらえると思っていなかったので感動しました。服のチカラで笑顔になっている姿を見られて嬉しいです」と語りました。

また、成蹊小学校からウクライナ難民の子どもたちへ、服とギフトが届けられたショートムービーを観た生徒は、「自分たちで作ったギフトで遊んで笑顔になってくれたのがとても嬉しかった」と喜んだ様子で話していました。最後に、難民の子どもたちからの御礼のメッセージカードが綾瀬さんから成蹊小学校の生徒へ手渡され、綾瀬さんから「皆さんの想いが難民の子どもたちに伝わって良かったですね。これからもできることを一歩ずつ、少しずつ、一緒にやっていきましょう」と生徒たちにメッセージを贈りました。

まとめとして、成蹊小学校の生徒さんが、今回のユニクロ特別課外授業を通して感じたことをご紹介します。

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成蹊小学校6年生 河崎伶奈さん


「服元気させること、服が暑さから身体を守ってくれることを知って、って大切って思いました。ウクライナの難民の方々がありがとうって言ってくれて、すごく嬉しかったです」。

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成蹊小学校6年生 永山大成さん


難民方々とても大変だしたちなどあげることによってよりもっと元気なってほしい思います」。


以上、6月20日の「世界難民の日」に先立ち、ファーストリテイリンググループが開催した、難民支援活動メディア説明会および 「” 届けよう、服のチカラ” プロジェクト」 ユニクロ特別課外授業についてご紹介しました。難民の方々が今置かれている状況を、一人ひとりが自分事として理解し、社会全体で難民支援について考えるきっかけとなれば幸いです。

物がもつ従来の⽤途から切り離すことで、デザインすること、形を⽣み出すことについて思考するグループ展「Not Quite」

2024/06/26
by 遠藤 友香

Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL

執筆者:遠藤友香


2019年6⽉、東京・⽇本橋⾺喰町の「DDD HOTEL」の⼀⾓に開廊したギャラリー「PARCEL(パーセル)」。⻑年ギャラリー業に従事してきた佐藤拓がディレクターを、アートコレクティブ「SIDE CORE」の⼀員、⾼須咲恵がプログラム・アドバイザーを務めています。

元々、⽴体駐⾞場だった特徴的な空間において、現代美術を軸にカルチャーを横断するプログラムを形成し、国内外の幅広い作家を紹介。2022年2⽉には、PARCELの裏側に位置する「まるかビル」2Fに2つ⽬の拠点「parcel」を開廊。PARCELとparcelは両スペースを通して、時代に対して多⾓的なメッセージを発信しながら、コマーシャルギャラリーとプロジェクトスペースの特性を併せ持った存在とプログラム構成を⽬指しています。

この度、PARCELにおいてグループ展「Not Quite」が2024年6⽉30⽇(⽇)まで開催中です。私たちが⽇々の⽣活の中で何気なく触れている、椅⼦、焼物などのプロダクトや⼯芸と呼ばれるもの、アートなどが本来の「⽬的」から逸脱したとき、カテゴライズ⾃体が無⼒化し、より純粋にそのフォルム、マテリアルを享受することができるのではないかと、PARCELは問うています。

グループ展に参加しているイ・カンホ、橋本知成、太⽥琢⼈、⽮⼝周太郎といった4⼈のアーティスト、デザイナー、ショップオーナーは、家具や物がもつ従来の⽤途からそれらを切り離すことで、デザインすること、形を⽣み出すことと形そのものについて考えることを促しています。

次に、それぞれの作家についてご紹介します。

1.イ・カンホ

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Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL


プロフィール:弘益⼤学校にて⾦属⼯芸とデザインを学んだ後、韓国のソウルを拠点に活動。⾝の回りにある素材から、さまざまな⽇⽤品をつくっていた農業家の祖⽗の影響を受け、幼少期から⾃らの⼿で⾝近な素材をもとに新たに作り出すことに楽しみを⾒出してきた。その体験をもとに、⽇常のものに新たな意味と機能を与える⼿法で⽇々制作を続けている。最近は、素材が別の素材と結びつく瞬間を発⾒することをテーマに次々と新作を発表している。Design Miami/Baselで審査員特別賞(2009年)、韓国政府⽂化部のArtist of the Year(2011年)、Yaol/韓国⽂化遺産協会のYoung Craftsman of the Year(2013年)、Designer of the Year(2017年)など受賞多数。

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Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL


ソウル拠点のイは彫⾦出⾝でありながら、現在は⼯業⽤のワイヤーやロープを鍵編みしたベンチや照明、伝統的な七宝焼きをベースにした作品を制作しています。

ソウル郊外で暮らしていた祖⽗から⾝の回りの物を⾃分で作ることを叩き込まれたイは、作品を通して、世に溢れている素材に対しての⼯夫とそれを駆使した新たな造形について気づかせる作品を多く残しています。


2.橋本知成

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Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL


プロフィール:1990年、和歌⼭県⽣まれ。2012年に、京都教育⼤学教育学部美術領域専攻を卒業。2014年、⾦沢美術⼯芸⼤学⼤学院⼯芸専攻陶磁コース修了。2017年に、⾦沢美術⼯芸⼤学⼤学院博⼠後期課程⼯芸研究領域陶磁分野を修了している。

Kyoto Art for Tomorrow−京都府新鋭選抜展2019で産経新聞社賞(2019年)、神⼾ビエンナーレ2015 現代陶芸コンペティションで準⼤賞(2015年)など受賞多数。Victoria and Albert Museum、LOEWE Foundation、Park Hyatt Kyoto、HOTEL THE MITSUI KYOTOなどにコレクションされている。

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Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL


橋本知成は信楽を拠点に活動しており、⼟を素材に、焼物と時にはモルタルを組み合わせた彫刻作品で知られ、焼物が持つフラジャイルなイメージとモルタルが持つマスキュリンな印象を組み合わせながら、素材間の緊張感を通して我々に、フォルム、重量、重⼒について考えさせる作品を制作しています。2019年のLOEWE CRAFT PRIZEファイナリストでもある彼の作品の肌は、鉱物を連想させるような不思議な光沢で覆われ、対峙する⾓度によって⼤きくその表情を変えます。


3.太⽥琢⼈

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Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL


プロフィール:1993年、フランス⽣まれ。2017年武蔵野美術⼤学⼯芸⼯業デザイン学科卒業。2022年東京藝術⼤学美術研究科デザイン専攻修⼠課程卒業。物と⼈間のコミュニケーションについて興味があり、⽇常の観察の中で新たな視座の発⾒を作品へ変換する。特定の分野に固執せず、プロセスや考え⽅の流動性と多元的思考を⼤切にしている。

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Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL


デザイナーである太⽥琢⼈は、⽇常の観察を通しての作品を発表している作家です。ただ、⼀貫してそこにはアウトプットの造形に向かう姿勢とクリティックとしての視点もあり、⽣活を通しての取捨選択や物事の認知、社会システムなどと作品テーマは広いのが特徴です。既存の枠組みにとらわれることなく、インテリアプロダクトからインスタレーションまでと横断をしながら発表を続けています。


4.⽮⼝周太郎

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Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL


プロフィール:「YOU ARE WELCOME」オーナー、プロップスタイリスト、プロダクトデザイナー。

2018年にショップ「YOU ARE WELCOME」をスタートさせる。80年代以降のポストモダンデザインを筆頭に、前衛的で挑発的な造形美のものを中⼼に、様々な年代やジャンルのアイテムをセレクト。⽮⼝周太郎によるオリジナルの什器も展開している。雑誌やCDジャケット、広告やミュージックビデオの美術/プロップスタイリングも⼿がけ、アートやプロダクトのデザインも⾏う。

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Photo: Kohei Omachi (W) courtesy of PARCEL


⽮⼝周太郎は、東京都内で「YOU ARE WELCOME」というインテリアショップを営んでいます。巨匠のモダンデザイン家具から作者不明の何かまで、その特異な審美眼から選び抜かれた品々は不思議な調和を産んでいます。フォルム、⾊彩という点においてユニークなプロダクトたちは、⽮⼝のフィルターを通し、あらたなコンテクストを帯びた状態で再度世に出されます。


PARCELは、タイトル「Not Quite」(~でなくもない) にもあるように、いつも私たちが⾒慣れている視点からはみ出ている作品を中⼼に作家を選んでいます。これら居⼼地の良いカテゴリーを⾶び出してしまっている「〜でなくもない」作品や審美眼を通して、デザインとアートのいびつかつ奇妙な相関関係を⾒ていただくとともに、形というものを純粋に楽しんでいただけたらと述べています。


■“Not Quite”A Group Exhibition by:
イ・カンホ | Kwangho Lee
橋本 知成 | Tomonari Hashimoto
太⽥ 琢⼈ | Takuto Ohta
⽮⼝ 周太郎 | Shutaro Yaguchi

日時:2024年5⽉18⽇(⼟)ー6⽉30⽇(⽇)/14:00ー19:00

場所:PARCEL
東京都中央区⽇本橋⾺喰町2-2-1 DDD HOTEL 1F

休日:⽉・⽕・祝⽇

PARCEL (parceltokyo.jp)

東京湾に広がる埋立地に着目し、 島の可能性を探究する。建築コレクティブ「GROUP」による個展 「島をつくる | Planning Another Island」

2024/06/23
by 遠藤 友香

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執筆者:遠藤友香


2023年7月に銀座・歌舞伎座タワー22Fにオープンした、株式会社マイナビが東京・銀座で運営するアートスペース「マイナビアートスクエア(MYNAVI ART SQUARE / 通称:MASQ)」。学生、ビジネスパーソン、企業、教育機関とアーティストの繋がりを後押しするプラットフォームです。

複雑化した社会で、主体的に考え柔軟に判断していく力を養うきっかけとなる「アート」や「アート思考」、「リベラルアーツ」を起点にプログラムを展開しています。MASQは、新たなアイディアやアプローチをもたらすアーティストやキュレーター、コレクティブ(共同体)などの表現者らと共に、機械やAIでは代替できない、一人ひとりのもつ潜在的な可能性を広げることで、豊かな未来を共創することを目指しています。

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この度MASQにおいて、2024年7月6日(土) まで、建築コレクティブ「GROUP」による個展「島をつくる | Planning Another Island」を開催中です。

GROUPは、建築プロジェクトを通して、異なる専門性を持つ人々が仮設的かつ継続的に共同できる場の構築を目指し、建築設計・リサーチ・施工をする建築コレクティブ。主な活動として、設計・施工「夢洲の庭」(大阪府、2025)、設計・運営「海老名芸術高速」(神奈川県、2021)、設計・施工「新宿ホワイトハウスの庭」(東京都、2021)、企画・編集「ノーツ 第一号 庭」(NOTESEDITION、 2021)、設計「EASTEAST_TOKYO」(アートフェア会場構成、2023)、 グループ展「InvolvementRain/Water passage」(金沢21世紀美術館 DXP展、2023)、個展「手入れ/Repair 」(WHITEHOUSE、2021)などがあります。

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銀座に位置するMASQの窓からの景色には、東京湾に浮かぶ埋立地が広がっています。本展は、その大きな島を生成する建築を介して、もうひとつの島の可能性を探究します。ある住宅の改修工事の過程で発生した廃材が会場内に運び込まれ、それらを土へと還すコンポストが展示されています。その後、ひとつの住宅から生まれた土を、展示会場からもとの場所へと戻すことで、島のかたちを変える試みを実践します。

産業廃棄物となった住宅の廃材を循環させる仕組みを展示会場内に再現したインスタレーションは、観る者にいくつもの問いを投げかけます。これまでにもGROUPは、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきた都市開発、建築のあり方を再考し、その実践過程そのものをアート作品へと昇華するプロジェクトを数多く手掛けてきました。近年、GROUPが力を注ぐ建築の終着地についてのリサーチ、新たな選択肢を模索するプロセスを体現した本展は、私たちの日々の暮らしから生み出されている島のあり方に考えを巡らせる機会となることでしょう。

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GROUP共同代表 井上岳氏

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GROUPの共同代表である井上岳氏は、「解体してしたものたち成増住宅持ち帰っ床材したり壁材戻して、また使っいこう思っています

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マルチングという、表面仕上げたりする使えたりって、何っていう展示でもあったりしてガラス砕く、珪砂(けいしゃ)というテニスコート同じ材料なるですけど、砕い戻しみたり石膏とかコンクリート砕く石灰なってくるので、それ言えかもしれないいうこと僕らなり分解試みいるという感じです。

会場には音が流れているですが、普段埋立地処理音、例えば鳥いっぱいいるですけどとか分解した鳴っています。また、日本全国地震起こると、地震起こりましたって知らせる鳴るようなっていてこの風景を眺めながら地震神話日本における建物空間あり方という直せよう展示なるいい思っ作っています」と語っています。


以上、建築コレクティブ「GROUP」による個展「島をつくる | Planning Another Island」についてご紹介しました。建築を介して、もうひとつの島の可能性を探究する本展に、ぜひ足を運んでみては?


■「島をつくる | Planning Another Island」

会期:2024年5月23日(木)〜7月6日(土)
場所:MYNAVI ART SQUARE
東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー22F
開館時間:11:00〜18:00
休館日:日・月・祝

エイベックスのアート事業「MEET YOUR ART」から、「五感」をテーマにジンブランド「ボンベイ・サファイア」とコラボし、90年代以降のアーティストと共創する「5 SENSES」が始動

2024/06/23
by 遠藤 友香

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執筆者:遠藤友香


エイベックスのアート領域における事業「MEET YOUR ART」から、バカルディ ジャパン株式会社が輸入し、サッポロビール株式会社が販売するジンブランド「ボンベイ・サファイア」とコラボレーションし、「五感」をテーマに90年代以降のアーティストと共創する展示企画「5 SENSES」が、2024年6月29日(土)まで、港区・西麻布にあるWALL_alternativeにて開催中です。

本展では、今回のプロジェクトで共創する気鋭アーティスト、和泉侃氏(嗅覚)、菅原玄奨氏(触覚)、高山夏希氏(視覚)、布施琳太郎氏(聴覚)によるそれぞれの感性にまつわる作品を展示するほか、日比野菜穂氏(味覚)が和泉侃氏(嗅覚)とともに、この空間のためだけに開発したボンベイ&トニックのツイストカクテルのフードペアリングを無料で楽しむことができます。

次に、各アーティストの言葉をご紹介します。

和泉侃(嗅覚)

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「本作品では、空間全体を香りで満たし、ボンベイ・サファイアの味わいの源となるボタニカルに、嗅覚からアプローチする実験工程にご参加いただきます。漂う香りは、ジンの世界ではまだ使用例の少ないレモンティーツリーやホーリーバジルなど、新たな素材を調香領域の視点からセレクトしました。柑橘類の爽やかさを彷彿とさせるリモネンの含有量が高い原料をメインに揃え、明るくビビッドな色彩を感じる、エネルギッシュな香りに仕上げました。嗅覚に焦点を当てる本作品を通じて、ボンベイ・サファイアのキャラクターをより深く感じ、新しいペアリングの可能性や楽しみ方を発見するきっかけになれば幸いです」。

日比野菜穂(味覚)

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「嗅覚を担当する和泉さんの原材料をもとに、カクテルと一口菓子を制作しました。バーテンダー・齋藤隆一さんのお力添えをいただき、ボンベイ・サファイアと蒸留水を使用した爽やかなカクテルとともに、フードペアリングとして、和泉さんが蒸留したレモングラスの精油を、ボンベイ・サファイアで希釈した琥珀糖を制作しました。口にした瞬間、レモングラスの畑が目に浮かび、梅雨晴れのような清々しい気持ちになっていただくことをイメージして制作しました。味覚を通して、皆様に想像力が広がるような体験をしていただけると嬉しいです」。

菅原玄奨(触覚)

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「『5 SENSES』では触覚性をテーマに、過去に制作した人物像や触覚的な手の痕跡を残したレリーフ作品『Tactile』シリーズ、近年実験的に取り組んでいる照明を展示什器に取り入れることで、表面のテクスチャーをよりフラットに可視化した近作を展示します。これらの作品は共通して、粘土原型段階の湿気と乾燥、型取り段階のネガとポジ、そして成型による内側と外側といった対極的な二つの要素の間に成り立っています。世の中の相反する様々な事柄や意見の間に、人々もまた、かろうじて立っているように思うのです」。

布施琳太郎(聴覚)

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「視界を埋めつくす青い光に包まれながら『機械の音』を聞いてもらう作品。ボンベイ・サファイアとのコラボレーションということで、アルコールを舌につけるように鼓膜を敏感にしていただいて、複数の言語の間を泳ぐような時間を作りました」。

高山夏希(視覚)

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「6月6日からの展示では、ブルーを基調にした大型作品を中心に、ボンベイ・サファイアとのコラボレーショングラス/ボトルボックスデザインに採用された作品を展示します。今後の作品に向けては、ボンベイ・サファイアの特徴的なボトルを溶かし、セラミック作品との融合で再生成します」。


以上、WALL_alternativeにて開催中の、「五感」をテーマに90年代以降のアーティストと共創する展示企画「5 SENSES」についてご紹介しました。五感にひらめきを与えてくれる本展に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

5 SENSES 五感にひらめきを与える、創造体験 | ボンベイ・サファイア (bombaysapphire.jp)

超現実主義的なパフォーマンスシリーズが展開。プラダ財団の企画による展覧会「MIRANDA JULY: F.A.M.I.L.Y.」

2024/06/23
by 遠藤 友香

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執筆者:遠藤友香


「PRADA(プラダ)」は、プラダ財団の企画による展覧会「MIRANDA JULY: F.A.M.I.L.Y.」を、2024年8月26日(月)までプラダ 青山店にて開催中です。

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ミランダ・ジュライ:映画監督、アーティスト、作家。カリフォルニア州バークレーで育ち、現在はロサンゼルス在住。『ザ・フューチャー(The Future)』、『君とボクの虹色の世界(Me and You and Everyone We Know)』(カンヌ国際映画祭カメラ・ドール賞とサンダンス映画祭審査員特別賞受賞、2020年にクライテリオン・コレクション社から再リリース)の脚本、監督、主演を務める。直近の映画作品は『さよなら、私のロンリー(Kajillionaire)』(2020年)。アート作品は、ウェブサイト《Learning to Love You More》(ハレル・フレッチャー共作)、《Eleven Heavy Things》(2009年ヴェネチア・ビエンナーレのために制作されたスカルプチャー・ガーデン)、《Somebody》(ミュウミュウと共同制作したメッセージアプリ)、高級百貨店内の異宗教リサイクルショップ(Artangel提供)など。2022年にMACK Booksが直近の作品《Services》のリミテッドエディションを製作。現在までの活動のモノグラフが2020年4月に出版されている。著書には、『あなたを選んでくれるもの(It Chooses You)』、『最初の悪い男(The First Bad Man)』、『いちばんここに似合う人(No One Belongs Here More Than You)』(フランク・オコナー国際短篇賞受賞)などがある。ジュライの小説は23か国で出版され、『The Paris Review』や『The New Yorker』、『Harper’s』諸誌に掲載。小説最新刊『All Fours』は2024年5月にRiverhead Booksから発売予定。



アメリカのアーティストであり映画監督でもあるミランダ・ジュライ(1974年生まれ)は、30年以上にわたり、パフォーマンスやビデオ、インスタレーション作品を制作してきました。1990年代のパンククラブにおける初期のパフォーマンス作品から、舞台で行われる複雑なマルチメディア作品に至るまで、ジュライは力や脆さに対して私たちが抱く思い込みに疑問を呈する、想像力に富む社会的世界を創り出しています。ジュライの作品は様々なテクノロジーを取り入れ、時には意図的に誤った使い方を行いながら、コラボレーションやコネクションの新たな可能性を探求しています。

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東京のプラダ 青山店で開催中の最新作《F.A.M.I.L.Y.(Falling Apart Meanwhile I Love You)》(2024)は、マルチチャンネルのビデオインスタレーションで、Instagramを介して、7人の見知らぬ人たちとのコラボレーションによるパフォーマンスで構成されています。ミア・ロックスのキュレーションによる本展は、東京で開催するジュライにとって初となる個展です。同時開催中のミラノのOsservatorio Fondazion Pradaを会場として、2024年10月まで行われる《MIRANDA JULY:New Society》は、ミュージアムで開く自身初の個展となります。

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2020年に始まった《F.A.M.I.L.Y.》は、Instagramのプライベートチャンネルを通して、ジュライのプロンプトシリーズに返答した7人の参加者とのコラボレーションによって制作されたもの。ジュライは、ソーシャルメディアコンテンツ向けにデザインされた無料編集アプリの「切り抜き」ツールを使用し、ジュライと参加者が親密性と境界を探求する超現実主義的なパフォーマンスシリーズを生み出しています。ロサンゼルスにあるジュライのスタジオで流れている映像を背景に映し出される、拡大されたコラージュのポスターを手に取るよう、見る人たちを誘います。

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(左から)ミランダ・ジュライ、ミア・ロックス


ジュライは「《F.A.M.I.L.Y.》で、私はInstagramで期待されている事柄の一つとして認識している、『自分の心が満たされるほど美しく素晴らしいと人の目に映ること』に労力をかけて、手作業で実現しようと試みています」と語っています。

キュレーターのミア・ロックスは「これは、ジュライが積極的に取り入れている作品形式で、ジュライ自らが開始し、ある程度支配し、やり取りはしますが、それだけではなく、他の人の望みや行動をその中に積極的に取り込んでいます。力と支配の共有を試行錯誤しているということであり、時には遊び心がある方法でそれを行っているのです」と述べています。


以上、プラダ 青山店にて開催中の展覧会「MIRANDA JULY: F.A.M.I.L.Y.」についてご紹介しました。気になる方は、ぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。


■「MIRANDA JULY: F.A.M.I.L.Y.」

場所:プラダ 青山店 東京都港区南青山5-2-6

会期:2024年5月9日~8月26日

時間:11時~20時(月曜日~日曜日)

Miranda July F.A.M.I.L.Y. Prada Aoyama | PRADA

スイスから初来日! 東京大学で開催された、量子物理学の核心に迫るアート&サイエンス・パフォーマンス「ティンゲリー・エンタングル」

2024/06/18
by 遠藤 友香

Ayako Suzuki / 提供 在日スイス大使館


執筆者:遠藤友香


世界を牽引するスイスの量子技術。スイスと日本は、科学・技術・イノベーションの分野で共通の目標を掲げ、この重要な戦略分野に投資しています。2023年10月には、量子科学を含むあらゆる研究分野において、スイスと日本の既存の関係を強化するための国際協力覚書(MoC)が交わされました。

在日スイス大使館科学技術部は、理化学研究所 量子コンピュータ研究センターと共に、本分野でのスイスと日本の専門家の連携をさらに進めるべく、2024年6月5日~7日に、東京大学、弥生講堂・一条ホールにて、3日間のシンポジウム「Swiss-Japanese Quantum Symposium 2024」を開催。

1460年に創立した、スイスで最も歴史のある名門大学 バーゼル大学のダニエル・ロス教授と、理化学研究所量子コンピューティング研究センター長の中村泰信博士が共同議長を務めたこのシンポジウムは、最先端の量子研究とイノベーションにおける、スイスと日本の専門家の協力関係を拡大することが目的でした。

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Ayako Suzuki / 提供 在日スイス大使館

また、スイスと日本の国交樹立160周年を祝う2024年、スイス大使館はバーゼルの音楽祭「Interfinity」と共に、最先端の量子物理学の世界を音楽と視覚で感覚的に体験するアート&サイエンス パフォーマンス「Tinguely Entangled(ティンゲリー・エンタングル)」の特別公演を、最終日の6月7日に東京大学、弥生講堂・アネックスセイホクギャラリーにて開催しました。

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Ayako Suzuki / 提供 在日スイス大使館

量子コンピューティングの基礎を分かりやすく紹介する「ティンゲリー・エンタングル」は、量子物理学の中心的概念である「重ね合わせ」「エンタングルメント」「コヒーレンス」「トンネリング」を、感覚的に音楽とビジュアルを用いて紹介するサイエンス×アートパフォーマンスです。

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Ayako Suzuki / 提供 在日スイス大使館

5人の物理学者が舞台や映像上でストーリーを語り、ライブミュージックとビジュアル・アートがその内容を補足します。鑑賞者は、サウンドとビジュアル・アート、舞台とエレクトロニック・ミュージックをミックスしたユニークな体験に身を委ねることができました。

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Ayako Suzuki / 提供 在日スイス大使館

本パフォーマンスは、スイス人ピアニストでInterfinityのディレクターのルーカス・ロス(Lukas Loss)が、バーゼル大学を拠点とするNCCR SPINの研究者ヘンリー・レッグ(Henry Legg)と共同で脚本を制作。物理学者のアリアンナ・ニグロ(Arianna Nigro)、ラファエル・エグリ(Rafael Eggli)、ヴァレリイ・コジン(Valerii Kozin)、リウ・ジョンチン(Jung-Ching Liu)らと共に制作した共同プロジェクトです。

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Ayako Suzuki / 提供 在日スイス大使館

ヘンリー・レッグは「量子ビット」について、次のように説明しました。『量子ビットは今夜の主役です。しかし、まずは現代のデジタル世界全体の基礎である、その古典的なバージョンであるビットから始めましょう。電灯のスイッチのように、古典的なビットは単に「オン」か「オフ」です。しかし、何十億ものビットを組み合わせると、コンピューターやスマートフォンを作ることができます。人間が一生かけて行う計算を瞬時に実行できるものです。

では、量子ビットとは何でしょうか? 量子ビットは「オン」と「オフ」を同時に行うことができます。これを「重ね合わせ」と呼び、これは量子システムの基本的な特性です。シュレーディンガーは有名な例え話をしました。箱の中に猫を入れ、毒の入った小瓶をランダムに破裂させるとします。そして、ある時点で「猫は生きているのか、死んでいるのか?」と尋ねます。箱を開けて確認するまで、猫は死んでいるのと生きているのとでは異なります。

実際に、量子ビットを作るにはどうすればよいでしょうか? 1つの方法は、電子をトラップして、いわゆる「スピン」を使用することです。上または下を指す矢印を想像してください。上は「オン」を意味し、下は「オフ」を意味します。ただし、スピンは量子力学的特性であるため、「上」と「下」を好きなように組み合わせることもできます。つまり、量子ビットがあるのです」。

ヴァレリイ・コジンは「エンタングルメント」について、『もし量子ビットが2つあったらどうなるでしょうか? 1つの量子ビットの重ね合わせを、別の量子ビットの重ね合わせとリンクさせることができます。これが「エンタングルメント」と呼ばれるものです。

最初の量子ビットが「オン」の場合、2番目は「オフ」でなければなりません。猫の箱が別の猫の箱とエンタングルメントされている場合、猫番号2は、おそらく宇宙の反対側にいて、猫番号1を見つける方法に応じて、死んでいるか生きているかになります。アインシュタインはこれを「遠隔での不気味な動作」と呼びました。

または、2人の人が同じフレーズを完璧に同期して、何度も繰り返しているところを想像してください。もし彼らが「エンタングルメント」されているなら、たとえお互いの声が聞こえず、お互いが見えず、宇宙全体が彼らの間にあっても、同じフレーズを完璧に同期して何度も繰り返します。何十億もの量子ビットをエンタングルメントすれば、量子コンピューターを構築できます。量子コンピュータは、エンタングルメントの巨大な力により、最高の古典的なスーパーコンピュータでも、宇宙の年齢よりも長い時間がかかる計算を実行できます』と語りました。


以上、東京大学で開催された、量子物理学の核心に迫るアート&サイエンス・パフォーマンス「ティンゲリー・エンタングル」についてご紹介しました。アートを窓口に、難解で理解不可能にも思われる量子物理学の世界感に、観客全員が引き込まれていました。


■「Tinguely Entangled(ティンゲリー・エンタングル)」公演

日時:2024年6月7日 19時ー20時(開場18時30分)

会場:東京大学 アネックス セイホクギャラリー

主催:Interfinity、在日スイス大使館 / Vitality.Swiss

■Swiss-Japanese Quantum Symposium 2024

開催日:2024年6月5日ー7日

会場:東京大学 弥生講堂一条ホール

主催:在日スイス大使館 科学技術部 / 理化学研究所 量子コンピュータ研究センター

20世紀初めから戦後に至るコスチュームジュエリーの歴史的展開を紹介する日本初の展覧会 「コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより」

2024/06/15
by 遠藤 友香

執筆者:遠藤友香

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20世紀初めにポール・ポワレが嚆矢(こうし)となり、シャネルによって広く普及したコスチュームジュエリー。コスチュームジュエリーとは、宝石や貴金属を用いず、ガラスや貝、樹脂など、多種多様な素材で制作されるファッションジュエリーのこと。

素材から解放されて自由なデザインを提案できるコスチュームジュエリーは、ポール・ポワレ以降、シャネルやディオール、スキャパレッリなど、フランスのオートクチュールのデザイナーたちがこぞって取り入れました。やがてヨーロッパ、そして戦後は主にアメリカでコスチュームジュエリーは広く普及し、当時の女性たちに装う楽しみだけではなく、生きる活力、自由、そして自立の精神をもたらしました。 

そんな20世紀初めから戦後に至るコスチュームジュエリーの歴史的展開を紹介する、日本初の展覧会 「コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより」が、2024年6月30日(日)まで愛知県美術館にて開催中です。

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ムラーノガラス、ヴェネチアンビーズ、コスチュームジュエリーの研究家・コレクター 小瀧千佐子氏


ムラーノガラス、ヴェネチアンビーズ、コスチュームジュエリーの研究家・コレクターである小瀧千佐子氏による世界的に希少なコレクションから、ジュエリー約450点と、当時のドレスやファッション雑誌などの関連作品を展示。それらを通して、魅力溢れるコスチュームジュエリーの世界感を堪能することができます。

近年、日本ではファッションに関する展覧会が頻繁に開催されるようになりましたが、その多くはドレスが主役です。コスチュームジュエリーに焦点を当てて包括的に紹介する展覧会は今回が日本初であり、1 点もの、あるいはごく少数しか制作されなかったコスチュームジュエリーが⼀堂に会す貴重な機会となっています。

シャネルやディオール、イヴ・サンローランなど、よく知られているフランスのオートクチュールのファッションデザイナーから、サルバドール・ダリやマン・レイなど、シュルレアリストと親交を結んだエルザ・スキャパレッリ、日本で初めて紹介されるジュエリー・デザイナー、コッポラ・エ・トッポやリーン・ヴォートランなどによる、見ごたえのあるジュエリーが数多く展⽰されています。

本展監修者の小瀧千佐子氏は、「コスチュームジュエリーは常に時代を映す鏡であり、流行や世相を反映し流動的で、金やダイヤのように素材そのものに市場価値がないことから、流行の終焉と共に消え去る運命にある。しかし、時代の大きなうねりに流されず、二つの大戦を経てなお生き残ったコスチュームジュエリーがここにはある。それらには、デザインしたアーティストたちの先鋭的で独創的な、ゆるぎないスタイル(様式美)があったからだと、私は考えている。

1910年代フランスでオートクチュール用のジュエリーとして誕生し、ヨーロッパからアメリカへ伝わり華麗に開花したコスチュームジュエリー。20世紀初頭、貴金属偏重の価値観から解放され、女性の社会進出と深く関わり、多様な素材で“個性を表現するため”のアイテムとなった。職人の卓越した技術に裏付けされ独自の様式美を纏う作品群は、20世紀の誕生から100年を迎える今、アートとして認識されるべきであろう」と述べています。

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会場の入り口を入ってまず出迎えてくれるのが、20世紀初頭から第一次世界大戦を挟んだ1920年代に『イリュストラシオン』紙に登場した、当時の新しい女性像の一端を知ることのできる映像です。

『イリュストラシオン』は1843年に創刊された、フランス初の挿絵入り週刊誌で、記事内容は政治、経済、国際情勢、文化芸術など多岐にわたっています。コスチュームジュエリーが生まれた20世紀初頭は、社会も人々の生活スタイルも大きく変わりました。女性の活躍の場が広がり、それとともに求められるファッションはより自由でシンプルなものに変化。そうした様子を『イリュストラシオン』は度々取り上げています。

Chaper 1. ポール・ポワレとメゾン・グリポワ

20世紀初めのヨーロッパでは、科学技術の発展とそれに伴う社会的イデオロギーの変革の中で、人々の生活スタイルが大きく変わりました。女性たちの活動の幅は広がり、遠方への旅行、自動車の運転、多様なスポーツへの参加など、活発な女性が新しい女性像となって注目され始めます。そうした変化に呼応して、コルセットに拘束された人工的な形態や過剰な装飾から解放され、動きやすく身体の自然な美しさに沿った衣服が求められるようになりました。そして、高価な宝石よりも気軽に身に着けられ、シンプルな衣服と調和するコスチュームジュエリーが生まれました。

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ポール・ポワレ


フランスのファッションデザイナー、ポール・ポワレはこの時代のニーズを敏感に察知し、1906年にコルセットを使用しないハイウエストのドレスを発表しました。彼はまた自らがデザインするドレスにふさわしいジュエリーをビーズなどを用いて制作し、コスチュームジュエリーの先駆者となりました。

ポワレのコスチュームジュエリーの制作を担ったジュエリー工房の一つに、メゾン・グリポワがあります。19世紀後半にオーギュスティン・グリポワが創業したこの工房は、特に1920年代にガブリエル・シャネルとの出会いによって、模造パールの開発や特殊なガラスの技法で、一躍その知名度を高めました。

Chaper 2. 美の変革者たち

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オートクチュールのためのコスチュームジュエリー、つまりクチュールジュエリーには、デザイナーの考案した生地や色を考慮し、コレクションのテーマを強調するという役割があります。ほとんどの場合がシーズン毎に数点だけ作られ、ドレスと同様にトレンドを追うのではなく、先取りしなければなりませんでした。

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ガブリエル・シャネル


ガブリエル・シャネルは、“黒=喪服”のイメージを覆し、1926年にリトル・ブラック・ドレスを発表します。その革新的なドレスに合わせ、模造パールネックレスを何連にも重ね付けしました。

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エルザ・スキャパレッリ


イタリア出身のエルザ・スキャパレッリは、強烈な色彩感覚をパリで研ぎ澄まし、1927年のデビューコレクションにて、シックで洗練された二色使いのセーターを発表します。その後、創作したクチュールジュエリーはシュールレアリスムの影響を受け、意表を突くデザインが多くみられました。

ポワレから始まったクチュールジュエリーはここに開花し、二人は激動の30年を駆け抜けます。バレンシアガ、ディオール、ジバンシィ、イブ・サンローランたちも、それぞれが新しいコレクションに挑み、アイコニックな夢のジュエリーを創り出していきました。

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ジョン・ケネディ大統領とジャクリーン夫人


こちらは、エメラルドを模したガラスのカボションとビーズ、ダイヤモンドのようにブリリアンカットされたクリスタルガラスが美しい曲線で連なったジバンシィのネックレスを身に着けたジャクリーン・ケネディ。優雅なデザインは、上流階級の女性やハリウッド女優を顧客にしていたジバンシィのスタイルにふさわしいものです。模造パールの部分が、水色のトルコ石に代わる同デザインのネックレスをジャクリーン・ケネディが所有しており、彼女はこのネックレスを1963年1月21日に行われたケネディの大統領就任2周年記念式典のときに着用しました。

Chaper 3. 躍進した様式美

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1920年代から1950年代にかけて華麗に開花した、グランメゾンによるクチュールジュエリーは、パルリエと呼ばれる卓越した職人、製造業者の手によって生み出されました。パルリエとは、帽子職人、刺繍職人、羽毛職人、ボタン職人、ジュエリー製造業者など、あらゆるアクセサリーや装飾品を製造する専門家を指します。大戦を挟んだこの時代に、メゾン・グリポワを代表格として、豊潤な職人がそれぞれのアトリエに存在していました。

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コッポラ・エ・トッポの洗練された色使いのビーズネックレス、リーン・ヴォートランの不思議で詩的な世界、ロジェ・ジャン=ピエールの光輝くラインストーンの配色の妙、リナ・バレッティの秀逸な手仕事、シス(シシィ・ゾルトフスカ)のチャーミングなジュエリー。それぞれにいずれ劣らぬ様式美があり、作品の裏に刻印されたサインを見るまでもないほど、はっきりとしたスタイルが見て取れます。

Chaper 4. 新世界のマスプロダクション

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ヨーロッパにおけるコスチュームジュエリーは当初、本物のジュエリーの代替品と見なされていましたが、新世界アメリカでは、王侯貴族による宝飾品の文化がそもそも存在しないため、砂地に水がしみこむように受け入れられていきました。

シャネルとスキャパレッリ、この二人のファッションデザイナーは、コスチュームジュエリーだけでなく、バッグから香水、帽子に至るまで、アクセサリー生産の大部分を、戦前からアメリカのデパートに輸出していました。彼女たちのおかげで、コスチュームジュエリーはアメリカでゆっくりと、しかし確実に浸透していきます。それをきっかけに、アメリカでもコスチュームジュエリーの生産が始まり、1935年から1950年の間にヨーロッパ的な宝飾品の模倣から解放され、アメリカ独自の製品が開発されるようになります。

ニューヨークにほど近いロードアイランド州プロビデンスには無数のメーカーがひしめき、大量生産によるコスチュームジュエリーを安価に販売することが可能になりました。ハリウッド映画のグレタ・ガルボなどのスターを彩るコスチュームジュエリーへの憧れもまた、アメリカの女性たちに広く普及した理由の一つと言えます。

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売店では、展覧会図録やトートバッグ、チョコレートなどの販売も。


本展は、昨年12月に東京のパナソニック汐留美術館から始まった巡回展(その後、京都、愛知、宇都宮、北海道に巡回)です。愛知県美術館では広い展⽰スペースを活かして、コスチュームジュエリーのほかにポール・ポワレ、シャネルやディオール、イヴ・サンローランなどのドレスやスーツを展⽰。ドレスに合わせてコーディネートしたコスチュームジュエリーをともに展⽰する試みもみどころの⼀つです。さらに香水瓶やファッション雑誌、ファッションプレート(ファッション雑誌などの挿絵・図版)といった充実した関連資料を通して、コスチュームジュエリーやそのデザイナーを多角的に紹介しています。


以上、愛知県美術館で開催中の、 20世紀初めから戦後に至るコスチュームジュエリーの歴史的展開を紹介する日本初の展覧会 「コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ」をご紹介しました。ぜひ会場に足を運んで、美しいコスチュームジュエリーの世界感に浸ってみてはいかがでしょうか。


■コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより

会期:2024年4月26日(金)-6月30日(日)[57日間] 

開館時間:10:00-18:00 ※金曜日は20:00まで(入館は閉館の30分前まで) 

休館日:毎週月曜日

会場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)

名古屋市東区東桜1-13-2 

チケット:⼀般1,800(1,600)円/⾼校・⼤学生1,200(1,000)円  中学生以下無料 

※( )内は前売券および20 名以上の団体料金です。 

※上記料金で本展会期中に限りコレクション展もご覧になれます。 

※身体障害者⼿帳、精神障害者保健福祉⼿帳、療育⼿帳(愛護⼿帳)、特定医療費受給者証(指定難病)のいずれかをお持ちの⽅は、各券種の半額でご観覧いただけます。また付き添いの⽅は、各種⼿帳(「第1種」もしくは「1級」)または特定医療費受給者証(指定難病)をお持ちの場合、いずれも 1 名まで各券種の半額で観覧可能です。当日会場で各種⼿帳(ミライロ ID 可)または特定医療費受給者証(指定難病)をご提⽰ください。付き添いの⽅はお申し出ください。 

※学生の⽅は当日会場で学生証をご提⽰ください。

監修:小瀧千佐子

特別協力:ウィリアム・ウェイン(コスチュームジュエリー研究家/イギリス、ロンドン)

学術協力:ディアンナ・ファルネッティ・チェーラ(コスチュームジュエリー研究家/イタリア、ミラノ)

撮影:⼤野隆介

希望をテーマにした国際展である、第8回横浜トリエンナーレ 「野草:いま、ここで生きてる」が、2024年6月9日に無事閉幕

2024/06/12
by 遠藤 友香

撮影:⼤野隆介


執筆者:遠藤友香


横浜で、3年に一度開催される現代アートの祭典「横浜トリエンナーレ」。2001年にスタートし、200を数える国内の芸術祭の中でも20年以上の長い歴史を誇っています。第8回となった横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」は、全78日の会期を経て、2024年6月9日(日)に無事閉幕しました。

今回、横浜トリエンナーレ組織委員会総合ディレクターの蔵屋美香氏と、アーティスティック・ディレクターのリウ・ディン氏(劉鼎氏)、キャロル・インホワ・ルー氏(盧迎華氏)より、みなさまのご来場とご協力に感謝するメッセージが届きましたので、ご紹介します。

1.横浜トリエンナーレ組織委員会総合ディレクター/横浜美術館館長 蔵屋美香氏からのメッセージ

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」は、6月9日、無事閉幕しました。アーティスティック・ディレクター(AD)を務めたリウ・ディンさんとキャロル・インホワ・ルーさん、31の国や地域から参加してくださった93組のアーティストのみなさま、ご支援、ご後援、ご助成、ご協賛、ご協力いただいたみなさま、アーティストの制作を助け、あるいは会場に立って大活躍してくだった市民サポーターのみなさま、そしてなにより足を運んでくださったたくさんの観客のみなさまに、心よりお礼を申し上げます。

また今回、「アートもりもり!」の名称で、「野草」の統一テーマのもと、BankART1929、黄金町エリアマネジメントセンター、象の鼻テラス、急な坂スタジオ他の連携先のみなさまと共に、市内に広がる大きなトリエンナーレをつくり上げることができたのは、何よりの喜びでした。

ADの二人は、約100年前、中国の作家、魯迅(ろじん)が絶望の中で書いた詩集『野草』からこの企画を発想しました。つらい時こそ創造の力が花開く。ふつうの人が暮らしの中で積み重ねる小さな実践が世界を変える。国と国ではなく個人と個人としてならわたしたちはわかり合える。ADが『野草』から引き出したこれらのメッセージが、とりわけ次の世界を担う若いみなさんの胸に長く残ることを祈っています。

2.アーティスティック・ディレクターのリウ・ディン氏(劉鼎氏)とキャロル・インホワ・ルー氏(盧迎華氏)からのメッセージ

第8回横浜トリエンナーレは、絶望についての文学作品をもとに企画されましたが、多くの来場者がお気づきの通り、希望をテーマにした展覧会です。希望は、思考、行動、感情、想像力、友情、失敗、対立、そして何よりも人間の主体性に宿ります。

この展覧会では、アートの人間的価値を重要視し、歴史と現代における個人の主体性の物語を数多く語り直しました。これらの個人の声や経験は、現代の私たちにとって重要なシグナルです。それらは、私たち自身の主体性を掘り起こして発揮し、あらゆる面で紛争や挑戦が激化している時代に希望の種を蒔くための隙間を見出すよう、私たちを鼓舞します。

「野草:いま、ここで生きてる」が終わりを告げるいま、この展覧会を希望のしるしや場所とするためにご尽力いただいたすべての方々に、心から感謝の意を表したいと思います。

横浜トリエンナーレのチームと密に協力してきた私たちは、当トリエンナーレが今後も、最先端の芸術的実験と真摯な知的言説を支援する重要な役割を果たし、アートの分野に真の貢献を果たすことを固く信じています。

(アーティスティック・デイレクター挨拶原文)

The 8th Yokohama Triennale was conceived based on a literary work thinking about despair, yet as many visitors have discovered, it is an exhibition about hope. Hope resides in thoughts, actions, emotions, imagination, friendship, failures, confrontations, and above all, human agency. 

In this show, we have retold many stories of individual agency in history and from our contemporary times, foregrounding the humanistic values of art. These individual voices and experiences are important signals to us today. They inspire us to unearth and exercise our own agency, and to find cracks for planting seeds of hope in a time of escalating conflicts and challenges on all fronts. 

At this moment of bidding farewell to the exhibition, we want to express our heartfelt gratitude to everyone who has contributed to making "Wild Grass: Our Lives" a sign and site of hope. 

Having worked closely with the team of Yokohama Triennale, we firmly believe that it will continue to play a vital role in supporting cutting-edge artistic experiments and serious intellectual discourses, making a true contribution to the field of art.

LIU Ding and Carol Yinghua LU
Artistic Director,  8th Yokohama Triennale

閉幕に際して発信した動画は、コチラから。


■第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

アーティスティック・ディレクター:リウ・ディン(劉鼎)、キャロル・インホワ・ルー(盧迎華)

会期:2024年3月15日(金)ー6月9日(日)   

開場日数:78日間  

会場:横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路

主催:横浜市、(公財)横浜市芸術文化振興財団、NHK、朝日新聞社、横浜トリエンナーレ組織委員会

連携拠点:BankART1929 黄金町エリアマネジメントセンター 象の鼻テラス 急な坂スタジオ

公式WEBサイトhttps://www.yokohamatriennale.jp/


関連記事:『第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」が開幕! 災害や戦争、気候変動、経済格差、互いに対する不寛容など生きづらさを抱える世の中に、皆が共に生きていくための知恵を探る』は、コチラから。

交通事故後に絵画の才能が開花した、オーストラリア先住民アボリジナルの伝統楽器「ディジュリドゥ」奏者として名を馳せていたGOMA

2024/06/10
by 遠藤 友香

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執筆者:遠藤友香


オーストラリア先住民アボリジナルの伝統楽器「ディジュリドゥ」奏者として名を馳せていたGOMA。彼は、2009年に交通事故に遭い、そこから絵画の才能を開花させました。そんなGOMAの展覧会「ひかりの世界」が、東京都渋谷区にある「GYRE GALLERY」にて、2024年6月29日まで開催中です。

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プロフィール:GOMA。オーストラリア先住民アボリジナルの伝統楽器「ディジュリドゥ」の奏者、画家。1998年にオーストラリアで開催されたバルンガディジュリドゥ・コンペティションにて準優勝を果たし、国内外で広く活動。2009年交通事故に遭い高次脳機能障害の症状により活動を休止。一方、事故の2日後から緻密な点描画を描きはじめるようになり、現在では、オーストラリアBACKWOODS GALLERY(2016)、新宿髙島屋美術画廊(2018・2019)、PARCO MUSEUM TOKYO(2022)、PARCO GALLERY OSAKA(2023)、PARCO GALLERY NAGOYA(2023)など多数の個展を開催。2012年本人を主人公とする映画「フラッシュバックメモリーズ3D」に出演し、東京国際映画祭にて観客賞を受賞。2021年2020TOKYOパラリンピック開会式にて、ひかるトラックの入場曲を担当。2022年舞台「粛々と運針」の音楽監督と劇中のアートを手掛ける。

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ディジュリドゥ奏者として世界的に評価されていたGOMAが突然絵を描き始めたのは、2009年に交通事故に遭った2日後のこととのことだそう。それまで職業としてはもちろん、趣味としても絵を描いたことがほとんどなかったのに、細かい点描で画面を埋めつくした独特の絵画を描くようになったといいます。また、事故後は記憶喪失や昏睡などの後遺症に見舞われるようになりました。原因究明には時間がかかりましたが、アメリカの研究所で「後天性サヴァン症候群」と診断されます。脳に傷を負ったときに美術や音楽、数学などの分野で特別な才能を発揮するようになる、極めてまれな現象です。

事故から十数年たって日常生活にはほぼ支障はなくなり、ディジュリドゥの演奏も再開したそう。しかし、今も一日の大半を絵画の制作に費やしています。それは、彼の頭の中に浮かんでくる景色を描きとめたもので、意識を失うと真っ白い発光体に包まれたような世界が現れます。そして、意識が戻るにつれて次第に色がついたものになっていくのだそうです。その「意識を消失した後に見る希望に満ち溢れた世界」を、彼は「ひかりの世界」と名付けました。

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彼が描いているのは、事故の後遺症によって意識を失っているときに見た光景です。それは最初、白い発光体に囲まれた、ただひかりだけがあるような空間から始まります。そのときの彼には一切の感情がないといいます。恐怖心もなければ嬉しい、楽しいといった気持ちもありません。そして、次第にその発光体に色がついてきて「脳と体が合体する」のを感じると意識が戻るのだそうです。どのように色がついてくるのかはそのときどきによって様々だといいます。彼はその景色を絵画という平面で表現していますが、実際には奥行きがあり、流動体の中を運ばれていくような感覚を覚えるのだそう。意識が戻ると「また倒れて旅に出たのだな」と感じるといいます。

事故後、何十回も倒れて意識を回復するーその経験を経て、GOMAは自分が見ているものが「生と死の間にあるどこか」であると感じるようになりました。実際に臨死体験を研究している人々も、GOMAの絵と似た光景を見た人がいるといいます。音楽活動については曲を覚えるのに時間がかかり、何度も練習しないとできないといった状況に、GOMA自身も葛藤を覚えることはありました。しかし、今では「もっと気楽にディジュリドゥを吹けるようになったし、リフレッシュして絵の活力になる」といいます。音楽は、過去の自分と今の自分をつないでくれるものであり、未来へとつなげてくれるとGOMAは感じています。

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会場内では「GOMA ひかりの世界」のCD販売も。18年ぶりのオリジナル・ソロ・アルバムで、3曲収録されています。各曲は約20分ほどの長さで、静寂と深みを感じさせ、瞑想や集中、リラックスしたいときに最適。

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新たに挑戦した陶芸作品。一つひとつ違う個性豊かな形が愛おしいお皿とマグカップ。珊瑚の凹凸を出すために、幾重にも土を手作業で塗り重ねています。

次に、GOMAのインタビューをご紹介します。

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Q1. GOMAさんにとって、音楽活動とアート活動は、生きる上でどんな役割を果たしていますか?

音楽は前の人生と今の人生を繋ぐ役割があって、アートの方は15年間前に意識が戻ってから急に始まったので、役割としては自分を癒すためにずっと描き続けています。

Q2. GOMAさんにとって、ひかりの世界はどのような意味を持っていますか?

ひかりの世界すごくポジティブエネルギーで、いい方向自分導いくれています。毎回意識戻るとき見る景色一緒にとって風景画です最初に描いてい見るもう絵呼べるものではないかもない何か点を打ちたくて打っていたけど、それ徐々に再生ともなってきました。この10ずっと後遺症あって、倒れて、意識が戻っっていう何十繰り返して、意識が戻っときに、毎回同じようひかり残像焼き付いくるのに気がつき始めて、そこからキャンバスきた景色描き残すようなっていきました。

絵画はアクリル絵の具で、MIXED MEDIAはヒマラヤ天然水晶作っています。今回、陶器を初めて作ってみたんですが、日常近くにひかり感じれるようものあったらいい思ったんです。僕はコーヒーが好きでコーヒーを飲むとき使えるコップやお皿があったらいいと思って作ってみました。《ひかり珊瑚》という作品をモチーフにしています。

Q3. 今後の目標・展望についてお聞かせください。

1回目の人生と2回目の人生が、今ようやくクロスしてきた感じがあって、アートと音楽が完全に二刀流になってきました。今回の展覧会では、アートに合わせた音楽を初めて作りました。一つパッケージして、映像アート全部自分作っっていう初めで、今までも自分の音楽はかけてたんですが、昔作ったものをCDでっていう感じでした。今回は、この展覧会のために作った音楽を最適な環境できくことができるように、僕の音楽活動においてレコーディングやライブエンジニアもお願いしている会社に音響設計をお願いしてシステムごと全て持ってきてもらったので、サウンドインスタレーション的な要素もあります。

展望しては、今回音楽とアートの2にした世界観できあがっきたっていう感覚自分あるのでそれもうちょっとビルドアップして、それ持っあちこち回りたいですね。アメリカとかヨーロッパ行っみたいですし最近ここ来たお客さんと話していたら、インドネシア面白そう思いました。あとは、やっぱり僕が演奏しているディジュリドゥの国でもあるオーストラリア行きたいですね。そして、それ一緒できるようパートナー探さないといけない思っています。そパートナーはギャラリー団体今はまだわからないのですが、そういうたち繋がり持っていきたいと思っています。


以上、交通事故後に絵画の才能が開花したGOMAについてご紹介しました。彼の描く洗練された作品の数々の鑑賞とサウンドを体験しに、ぜひGYRE GALLERYを訪れてみてはいかがでしょうか。


■GOMA  ひかりの世界

会期:2024年5月4日(土)ー6月29日(土)/11:00-20:00
会場:GYRE GALLERY | 東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
お問い合わせ:0570-05-6990 ナビダイヤル(11:00-18:00)

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