
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
世界屈指のミックスカルチャー都市、東京を舞台に、デザイン、アート、インテリア、ファッション、テクノロジーなど、多彩なプレゼンテーションを都内各所で繰り広げる回遊型イベント「DESIGNART TOKYO(デザイナートトーキョー)」。昨年のべ22万人の来場者が訪れた日本最大級のデザイン&アートフェスティバルが、今秋も2025年10月31日(金)〜11月9日(日)の間、都内7エリアにて開催されます。
9年目を迎える今年のテーマは「Brave 〜本能美の追求〜」。自身の経験や信念を貫き通し、革新的でひたむきさを感じる作品が秋の東京の街を彩ります。以下、テーマステートメントをご紹介します。
「Brave 〜本能美の追求〜」ステートメント
「時代の転換期、無難なデザインやアートは本当のクリエイションと呼べるのだろうか。今こそ、直感を信じ、かつてない感動を生み出す“勇敢さ”が必要だ。「機能美」から「本能美」へ。時間を越えて愛され続ける、本質的価値へ。「本能美」と人の喜びが結びついたとき、想像以上の未来がやってくる」
次に、本イベントのハイライトを、一部ピックアップします。
オフィシャルエキシビション「DESIGNART GALLERY」

30を超える注目展示による体験型展示やトークセッションなど、多角的に世界の最新クリエイションを堪能できる大規模集合展。
国内外から多くの人が集まる文化発信都市「渋谷」の中心に位置し大きな存在感を放つ「MEDIA DEPARTMENT TOKYO」に、日本をはじめ、フランス、オランダ、スウェーデンなど世界各国から斬新なクリエイションが集結します。
■1F
参加ブランド・クリエイター(順不同・敬称略):THE LIONS、 LIXIL 、ZEN
THE LIONS
2023年に分譲マンションブランド「ライオンズマンション」のリブランドを行い、同年本イベントでも発表を行った、株式会社大京による「THE LIONS」は、リブランドして2年が経過した今年、“人生の価値を高める全く新しい家づくりに挑戦する”という考えのもと、人の関係性をつくる新プロジェクトを、建築家・永山祐子氏とともに開発しました。本プロジェクトについて、DESIGNART TOKYO 2025にて初お披露目いたします。
LIXIL/無為に斑 - 空間構成要素の再構築 -

豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的な建材製品を開発、提供するLIXILは、床・壁・天井といった、空間において重要ではあるものの未開拓な領域において、新たな可能性を探索するインスタレーション展示「無為に斑 - 空間構成要素の再構築 -」を出展します。
住まいのスタンダードや価値観がめまぐるしく多様化する今、人々が求めるのはこれまでの延長にある合理的な形ではなく、より本質的な価値ではないでしょうか。本展示は、そうした多様な時代におけるLIXILからの問いかけであり新たな方向性を示す試みです。空間の均一性や画一性を超え「斑」という概念を導入することで、これまでの空間の概念を解体し、再構築することを目指しました。
また、本展示で使用されている素材はLIXILが実際に製品化している環境配慮素材であり、それらは環境負荷の低減という機能を超え、感性的な美しさをも創造する重要な役割を担っています。「無為」と「斑」が織りなす新たな概念を実際に体感し、固定観念を見つめ直す思索のひとときを提供します。
ZEN Solo Exhibition/Urban Equivalence — 都市等価論

世界的パルクールアスリートとして活躍しながら、アーティストとしても注目を集めるZEN(ゼン)の最新作「Urban Equivalence — 都市等価論」の作品を展示します。 本展では、バンコク、パリに続く新シリーズとして、アメリカ・ロサンゼルスで制作された写真作品を日本初公開。今年のキービジュアルを含む18点を一挙に展示・販売します。
■2F

WOHLHUTTE(堀部善之・堀部順子)+ 板坂 諭 「Still Growing」

SUPER RAT「HOUYOU」
参加ブランド・クリエイター(順不同・敬称略):Original Kolor Design、siwaza 、Hononga Collective、三菱電機 統合デザイン研究所、Asobi 、ZKI design 、 WOHLHUTTE + 板坂 諭、130 OneThirty / 加藤 大直、.Garbon|.Gab、Ujin Lin by CONTRAST、 SUPER RAT、渡辺佑介 / WD、Asahi-seiki × M&T、Sarah Tracton、ユーバイエヌアーキテクツ / ひわだや、 SHINYA YAMAMOTO、Paper Parade
企業Xクリエイターによる実験的な取り組みから注目の若手まで、注目の作品をご覧いただけます。
企業とデザイナーの取組みとして、 Original Kolor Design(秋山かおり・江口海里・福定良佑・吉田真也)は、人類の生活に欠かせないプラスチックの新しい未来の在り方をオーケー化成とともに模索しデザインする取組み「+STORIES」を開催し、 WOHLHUTTE(堀部善之・堀部順子)+ 板坂 諭は、宮崎県の製材所 株式会社グロースリング協力のもと、樹齢100年以上の木を使った家具を展示。獣害や土砂災害等の問題に警笛を鳴らし、森と人の関係を問い直します。
『.Garbon』は、あらゆる廃棄物を「炭化」し、素材に変える技術です。新たな資源循環の可能性を、IIISUとの作品を通じて表現します。
旭精機工業は、金属加工技術を用いた一般消費者向けの商品をM&T(池田美祐 / 倉島拓人)と開発。2026年の発売に先駆けて初披露します。
また、クリエイティブスペースCONTRASTと、台北とロンドンを拠点に活動するユジン・リンは「東京ニンフ (若虫) 」を開催。手仕事とデジタル技術を融合させた作品です。
三菱電機 統合デザイン研究所は、三菱電機統合デザイン研究所は、金型や切削加工を必要としない三菱電機の金属3Dプリンタでの出力を前提とし、「金属3Dプリンタにしかできない形や、素材の特性を意識すると、どんなデザインが生まれるのか」をテーマに考察した作品を発表します。
渡辺佑介 / WD は、 AIの知性とデザイナーの感性を融合し新たなアプローチを探る実験的プロジェクトUNTITLED IMAGE CLUBによって多様なオブジェクトイメージを生成、再解釈を経て、現実世界の立体へと昇華させた作品を展示します。
■3F 
Luis Marie「Touching Ground」
参加ブランド・クリエイター(順不同・敬称略):乃村工藝社 noon by material record x &SPACE PROJECT 、平和合金 × we+、Institut Français(Mathilde Brétillot, Gala Espel, Claire Renard and Jean-Sébastien Blanc)、Swedish Style × Blå Station & ACTUS、 Luis marie、 CUZEN MATCHA 、1+1+1 、aprg、Roee Ben Yehuda、IDE × HIS、Aya Kawabata
国際色豊かなプロジェクトや、今回日本初展示のクリエイターなど、今見るべき作品が揃います。
スウェーデンの文化、ファッション、デザイン、音楽、食、そしてビジネスを主要な業界関係者に紹介し、日本におけるスウェーデンのデザイン確固たるものにした「スウェディッシュ・スタイル」。その25周年を記念する一環として、スウェーデンの革新的な家具ブランド「 Blå Station(ブロー・ステーション)」と、日本のライフスタイルをリードする「ACTUS」が新たなパートナーシップを祝してDESIGNART TOKYOにて日本初公開のプロダクトを中心に展示します。DESIGNART TOKYOでは、本会場以外にもコンランショップ麻布台ヒルズや、表参道のTime & Style Atmosphereでの展示、そして三軒茶屋ハウスでのイベント等、「スウェディッシュ・スタイル」と連携し、コラボレーションしています。
アンスティチュ・フランセの支援により実現した展示 「French Design Focus at Designart Tokyo」では、現代フランスデザインの創造性と多様性に焦点を当てます。革新的な素材から持続可能な実践、大胆な美学に至るまで、展示プロジェクトはフランスデザイン界の活力と国際的潮流との対話を映し出します。本展は日本の人々に新たな視点を発見する機会と、デザインの核心における異文化交流への参加を促します。
空間デザインは、2015年設立した、香港の注目COLLECTIVE。香港を拠点に、建築・インテリアデザイン・エキシビションデザインを専門に国際的に活躍する建築設計事務所です。
作品との出会いや感動をつなぐ注⽬の展示スポット
AXIS BUILDING
Bang & Olufsen Beolab 90 Alchemy Edition
参加ブランド・クリエイター(順不同・敬称略):siro、GRANDIR+小阪雄造、田中悠史、市川善幾、萩谷綾香、佐藤洋美、Ambientec、Bang & Olufsen、VERCE
AXIS BUILDINGは、デザイン誌「AXIS」やAXISギャラリーなど、さまざまなデザインを発信する“場”として広く知られています。長年にわたって社会に向けてデザインの意義を問い続けているこの場所で、注目の展示が行われます。
Bang & Olufsen「Beolab 90 Alchemy Edition」(3F Bang & Olufsen 六本木)
1925年デンマークのStruerでPeter BangとSvend Olufsenによって創立され、革新的なオーディオ・ビジュアル製品と音響技術の開発を続けているBang & Olufsenは、今年100周年を迎えます。本展では、世界で限定 50 ペアのBeolab 90 Alchemy Edition をお披露目します。Atelier Bespoke チームによる特別仕様で、24Kのフロント・トップ・サイドカバー、ブロンズメッシュのスピーカーカバー、ウォールナットのパネルを採用し、唯一無二の存在感を発揮しています。
GRANDIR+小阪雄造、田中悠史、市川善幾、萩谷綾香、佐藤洋美(B1F B111)
「時構の間|SEN-AN」は、茶室の精神を現代に再解釈した空間実験です。本質を様式でなく「時間・空間・関係性」を見直す装置と捉え、非伝統的素材LGSを用い「構え」と「映し」により感性を触発します。思想と技術が交差し、人と自然の関係性を未来へ継ぐ“生き方としてのサステナビリティ”を提唱。伝統を模倣でなく問いと翻訳の連続とし、現代茶室としてのインスタレーションを実現しました。
JR銭瓶橋高架下 A・B

gekitetz Inc.「void reconstruct (ykgw);」
参加ブランド・クリエイター(順不同・敬称略):金森由晃(UNDER 30)、TORQ DESIGN(UNDER 30)、Tossanaigh、gekitetz Inc.、PHAT
東京駅~神田駅を繋ぐJR東日本の高架下。1910(明治43)年から100年以上の歴史のある高架下には、昔から変わらない東京の景色が残っています。そんな趣のある東京らしい空間に、個性あふれる展示が集結します。
gekitetz Inc. は「void reconstruct (ykgw); / ヴォイド リコンストラクト(ヨコガワ);」と題し、広島県横川エリアでフィールドワークにより採取した環境音を可視化したインスタレーションを行います。ローカルなサウンドから街の輪郭を再構築し、人とまちの関係性や情緒的な風景を探ります。
TORQ DESIGN(末瀬篤人、川島凜、伊藤陽介)は、Pyro PLA Project(パイロ ピーエルエー プロジェ
クト)を発表します。3Dプリンターによる出力物の表面を直火で熱し、積層の軌跡を溶かし混ぜ合わせることで、新たなテクスチャを生み出す取り組みです。陶芸家が粘土と向き合い成形していくように、データ上で細部まで調整して造形したのち「焼く」という手作業による仕上げの工程を踏むことで樹脂素材を工芸の世界に近づけます。
美しいデザインのコラボレーション
Cosentino x James Kaoru Bury PIECE OF REST

スペインの建材メーカーCosentinoと、デザイナーJames Kaoru Buryの協働により、廃材に新たな可能性を見出す試みです。失われゆく素材が、デザインの手によって異なる様式へと昇華する過程をご覧いただけます。
古来より、人々に親しまれてきた焼き物や石材は、時を越え、技術の革新とともに、いまや私たちの日常により身近な存在となりました。スペインの建材メーカーCosentinoは、大判タイル、クォーツストーン、独自技術で加工された天然石などを扱い、常に新たな技術を切り拓いてきました。その素材は世界中の建築で広く用いられていますが、その一方で、多くの廃材が行き場を失い、見過ごされてきました。本展は、デザイナーJames Kaoru Bury と Cosentino の協働により、これらの廃材に新たな可能性を見出す試みです。失われゆく素材が、デザインの手によって異なる様式へと昇華する過程を、どうぞご覧ください。
NIESSING × RYUJI NAKAMURA ジュエリーとホース

1873年創業のモダンジュエラー、ニーシング(NIESSING) の、NIESSING GINAの店舗にて、建築家の中村竜治の作品と空間コラボレーションを行います。それは一見ただの散水ホースですが、内部に樹脂を流し込み硬化させたものです。ホースの弾力と重力の釣り合いが偶然に生み出す何気ない曲線を、カメラが一瞬を切り取るように固定化しています。そこには、偶然と必然、一瞬と永遠、一点物と量産品、重力と反重力、機能と装飾、創造と模範、日常と芸術といった、一見相反する概念が同時に現れます。こうした曲線をNIESSINGのジュエリーが展示される空間にそっと紛れ込ませることで、バウハウスの思想から大きな影響を受けたNIESSINGのデザインをあらためて見つめ直し、その理解を深めるきっかけを作れればと考えています。
インテリアブランドによる新作や特別展
The STAGE by NII 4組のデザイナーによるファーストコレクションを発表

今年6月、株式会社イトーキが「Ingenious design-創意創発するデザイン」をコンセプトに、オフィスを魅力的で活気ある舞台へと昇華させるファニチャーブランド「NII (ニー)」を国内にてローンチし、大きな注目を集めました。本展示は、「THE STAGE by NII」と題して、今秋オープンするITOKI DESIGN HOUSE AOYAMAを会場に、4組のデザイナーによるファーストコレクションを展示します。
Chiiil with Karimoku

Chiiil with Karimokuは日立製作所、日立グローバルライフソリューションズとカリモク家具との出会いにより生まれた、心地よいライフスタイルの提供をめざすプロジェクトです。日立の小型冷蔵庫「Chiiil」を題材にカリモク家具の木製家具との融合によりうまれる暖かみのある質感を通して、暮らしの中での心地よさをお届けします。本展示会では今年7月に発売した「Chiiil MINIBAR」のほか、昨年公開したコンセプトモデルをもとに、新アイデアも加えた内容を展示します。
アート/テクノロジー
DUMB TYPE WINDOWS
<WINDOWS>は、2023年にアーティゾン美術館でヴェネチア・ビエンナーレ帰国展を開催したアートコレクティブの先駆的存在である「Dumb Type(ダムタイプ)」の作品です。世界で公開される「ライブカメラ」の映像をリアルタイムで収集し、それらを一枚の窓に見立てて組み合わせた、ビル内にいながら外の世界と通じる感覚を得ることができます。日常とは異なる視野や視点の変化が、ビジネスパーソンの意識変革・行動変容を促します。なお、Dumb Typeによる本パブリックアートは初の試みとなります。
アンディ・ウォーホル
「SERIAL PORTRAITS – SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」/エスパス ルイ・ヴィトン東京
エスパス ルイ・ヴィトン東京は、ポップ・アートの旗手 アンディ・ウォーホルの展覧会「Andy Warhol - Serial Portraits」を開催します。本展では、ポートレートをテーマに、ウォーホルの名作から知られざる作品まで、厳選してご紹介いたします。
今年も東京エリアに多彩な展示が集結
OKURAYAMA STUDIO
伊達冠石は、大蔵山でのみ産出される希少な石材です。その石が本来持つ造形美は、多くのクリエイターたちを魅了してきました。本展では、「大蔵山スタジオ」代表・山田能資が自ら大蔵山を歩いて選び抜き、磨き上げて制作した彫刻的な花器を、弊社ショールーム「THE GALLERY TOKYO」にて展示・販売いたします。石そのものが秘める、内面的な力強さと美しさを、ぜひ会場にてご体感ください。
“FONTE” -Atelier matic 外山翔- 展

自然と人工の対比を探るAtelier maticが、日本橋兜町・HAKUSUISHA B1 GALLERYにて、遊び心あるアクリル作品や、柔らかな光をまとう大きなランプシェードなど、近年の展示とは少し違ったアプローチで展示を行います。空間デザインやディスプレイデザインも生業とするAtelier maticならではの空間演出もぜひご期待ください。
以上、デザイン、アート、インテリア、ファッション、テクノロジーなど、多彩なプレゼンテーションを東京都内各所で繰り広げる回遊型イベント「DESIGNART TOKYO(デザイナートトーキョー)」についてご紹介しました。気になる方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
DESIGNART TOKYO(デザイナートトーキョー)

執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
世界における最先端のものづくりイノベーションの中心地であり、地球との共生を目指して先進的な取り組みに邁進する、愛知県、愛知県・名古屋市、そして静岡県・浜松市。
一般社団法人中部経済連合会、名古屋大学、愛知県、名古屋市、浜松市等で構成され、これら地域のスタートアップ・エコシステムの形成を目指す「Central Japan Startup Ecosystem Consortium」が主催する、これまでのビジネスカンファレンスとは一線を画す、地球の未来を拓くテクノロジーの祭典が「TechGALA」。
世界中から、現在の社会をリードする各分野のプロフェッショナルたちが集結し、革新的な技術や社会創造などさまざまな文脈で、世界的なネットワークを創出するグローバルイベントです。これら地域が世界に誇る、モビリティ、マテリアル、宇宙産業、ライフサイエンスなど、各分野において最前線で活躍する方々が一堂に会します。
初開催となったテクノロジーの祭典「TechGALA Japan 2025」では、世界各地から集まった400名以上のスピーカーによる100を超えるセッションが展開され、のべ5,000人以上が来場し、大盛況にうちに幕を閉じました。
この度、「TechGALA Japan 2026」が、2026年1月27日(火)から29日(木)にかけて、愛知県名古屋市で開催されます。TechGALA Japan 2026は、地域や文化、性別や人種、分野の壁を越え、世界中のプロフェッショナルたちが集結する「祭典」です。革新性の高いテクノロジーと刺激的な未来予想図が語られ、新たな事業、新たな連携、そして新たなイノベーションの火が灯る場となることでしょう。

本イベントのチケット販売開始に際し、2025年9月5日(金)に「TechGALA Japan 2026」の記者会見が行われました。 記者会見には、大村秀章愛知県知事、広沢一郎名古屋市長、中野祐介浜松市長、勝野哲一般社団法人中部経済連合会会長、松尾清一東海国立大学機構機構長らがご登壇。
大村秀章愛知県知事は、『国内外のスタートアップ、事業会社、大学など約870社もの会員が集い、共創を生み出す「STATION Ai」が開業して間もなく1年。その間、日本はもとより世界から熱い期待がこの地域に注がれ続けています。 この流れを、新たに岐阜県・三重県・静岡県が加わり一段と進化を遂げたコンソーシアムの核となる、「TechGALA」を通じて、より一層加速させてまいります。
そして、この「TechGALA」を舞台に、世界の最先端の知見・アイデアと、当地域の優れたものづくり技術との出会いを創出するとともに、グローバルへの発信を強化してまいります。 「STATION Ai」と「TechGALA」の相乗効果により、この地域で、絶え間なくイノベーションを生み出していく、世界に類例のないクリエイティブな地域へと昇華させてまいります』と語りました。
勝野哲一般社団法人中部経済連合会会長は、『「出会いの場」ですね。中部経済連合会では、活動の3本柱のひとつとして「オープンイノベーションの促進」を掲げています。 GXとDXの同時進行による経済や社会の変容とともに、持続的な成長を遂げていくためには、オープンイノベーションを通じたスタートアップによる「新しい価値の創出」とものづくり技術との融合による「産業の進化と多様化」が不可欠です。元々イノベーションの盛んなものづくりの集積地である当地域においても、スタートアップが果たす役割は非常に大きいと考えています。
当地のものづくりの技術や基盤と、デジタルやデザイン、アートをはじめ様々な領域、様々な国のスタートアップによる「新たな価値」との出会い、-「TechGALA(テックガラ)」は両者にとってとても魅力のある場となると期待しています』と述べました。

今年度のイベントの見どころについて、TechGALA 総合プロデューサー奥田 浩美氏は、以下のようにコメントしました。
「2025年2月の初開催からわずか数ヶ月。社会の変化と地球規模の課題は増え続けています。初開催の成功を糧に、次回のTechGALAは、より多くの人々を巻き込み、更なる高みを目指します。
TechGALA Japan 2026は、単なるイベントではなく、地球規模の課題解決に貢献するグローバルなプラットフォームです。この目的を達成するため、今年はインド、シンガポール、韓国をグローバル重点地域に設定し、アウトリーチ活動を強化します。
特に、ピッチイベントの予選を複数都市で開催することで、世界中の革新的な才能を発掘し、日本のエコシステムとの連携を深めます。イベント期間に留まらず、事業連携や海外連携を加速させ、継続的な活動を推進することがTechGALAの真の目的です。この活動が、やがては地球規模の課題解決に貢献する大きな力となることを確信しています。世界を魅了するイベントを目指すTechGALA Japan 2026に、どうぞご期待ください」。
■TechGALA 2026の見どころ
TechGALA Japan 2026では、様々な国・分野の方々の交流を促進するため、「ビジネスマッチング機会の創出」と「グローバルな連携」を強化していく方針です。さらに、新たなテーマを追加し、前回よりも充実した「TechGALAならではのコンテンツ」を用意しています。
ポイント1:昨年を超えるビジネスマッチング機会の創出
今回のTechGALAでは前回以上のビジネスマッチングの機会を創出を予定しており、商談スペースや、オープンイノベーションパートナーの拡充をしていきます。さらに、商談相手は国内に限らず、グローバルな商談機会も増やしていく予定です。
▼展⽰
前回は約140社の企業展⽰を実施しましたが、今回は150社以上の展⽰を予定しています。各分野から最新のテクノロジーやサービスが⼀堂に介し、出展企業とのリアルな会話を通して事業についてご相談いただくことも可能です。
https://event2026.techgala.jp/...
※展⽰企業は随時公開予定です。
▼スピードデーティング
事業会社やVC/CVC/⾦融機関とのショートミーティングの機会が持てる場をご⽤意。前回12社の企業にオープンイノベーションパートナーとして参画いただきましたが、今回は分野や⾔語の幅を広げた約30社の参画を予定しており、TechGALAを起点としたオープンイノベーションの実現に向けた商談・プレゼンを⾏っていただきます。
https://event2026.techgala.jp/...
※オープンイノベーションパートナーは随時公開予定です。
※昨年参加企業︓ https://2025.techgala.jp/speed...
▼予約式商談ルーム & ラウンジ
今回新たに、当⽇出会った⽅とすぐに商談を⾏っていただける、予約式の商談ルームを⽤意します。TechGALAを「名刺交換をする場」だけでなく、「実際にビジネスを動かす場」として活⽤することが可能です。
▼サイドイベント
TechGALA会期前、会期中、会期後と幅広い期間、地域でサイドイベントを実施します。ワークショップやマラソン、サウナなど内容は多岐にわたります。サイドイベントはどなたでも主催することが可能です。
https://event2026.techgala.jp/...
※サイドイベントは随時公開予定です。
※昨年サイドイベント︓https://luma.com/techgala.side...
ポイント2:TechGALA独自のテーマ設定
▼TechGALA Japan 2026コンテンツテーマ

TechGALAでは、世界における最先端のものづくりイノベーションの中心地である、名古屋市・浜松市に根ざした、オリジナルのテーマを設定し、この地域で開催するグローバルイベントならではのコンテンツを展開しています。今回は、前回の5つのコンテンツテーマに加えて新たに「Future Narratives」を設定しました。
▼Sessions
TechGALAではコンテンツテーマを元に、400人以上のスピーカーを迎え100以上のセッションを展開します。国内のみならず世界中から、現在の社会をリードする各分野のプロフェッショナルたちがセッションに登壇します。
9月5日(金)に第1弾スピーカーとして、下記の皆様の登壇が決定しました。(今後、スピーカーは随時追加される予定です。)
▼第1弾TechGALA Speakers



ポイント3:グローバル連携の強化
前回およそ20カ国から参加者が集ったTechGALAでは、今年度さらにグローバルな連携を強化し、名古屋を世界とつなげます。
▼TechGALA Japan 2026 連携強化国
今回、TechGALAでは「インド」「韓国」「シンガポール」を連携強化国とし、現地でのイベント開催などを通して繋がりを強めていきます。
現在、インド・シンガポールでのピッチコンテストの開催を予定しており、当地域との連携や進出に興味のあるスタートアップを多数招へいします。その他の国々についても、当地域の持つ繋がりを活かしながら、多くの企業の参加を促進していく方針です。
▼TechGALA主催ピッチコンテスト「Grand Pitch 2026」
TechGALA2⽇⽬には、Grand Pitch 2026と題した⼤規模なピッチコンテストを開催します。 このコンテストは、海外市場を⽬指す⽇本のスタートアップ、そして⽇本市場を狙うグローバルスタートアップが挑戦できる場であり、Grand Pitch 2026への出場申込の受付を開始中です。
■開催⽇時
2026年1⽉28⽇(⽔)
中⽇ビル6F 中⽇ホール
※時間・場所は変更となる場合があります。
■報酬
最優秀賞︓100万円
その他、参加企業にも豪華副賞をご⽤意しています。
■応募条件
● 創業から20年未満の、イノベーティブな技術やビジネスモデルを有し、急成⻑を⽬指す企業であること。
● 「MOBILITY」「SUSTAINABLE ENVIRONMENT」「MATERIAL」「LIFE SCIENCE / WELL-BEING」「ADVANCED TECHNOLOGY」のいずれか5分野の事業内容であること。
● 海外市場を⽬指す⽇本のスタートアップ、または⽇本市場を狙うグローバルスタートアップであること。
● 英語でピッチを⾏えること。
● 書類審査を通過した場合、名古屋で実施される2026年1⽉28⽇(⽔)の本選に参加できること。
■本選までの流れ
①書類審査
②ブラッシュアップ期間
③ピッチコンテスト本選
<今後のスケジュール>
● 11⽉7⽇(⾦)︓書類審査応募締切
○ ※申し込み締め切り⽇は予告なく変更となる場合があります。
● 12⽉︓本選出場企業発表
● 12⽉〜1⽉︓ブラッシュアップ期間
● 1⽉28⽇(⽔)︓ピッチコンテスト本選
※本選出場企業は15社を想定しています。
<詳細・参加申し込み>
https://event2026.techgala.jp/...
■最終審査員

今後も随時審査員を公開していきます。
◼ TechGALAアンバサダー公開 


主にTechGALAの広報・PRに協⼒いただく著名な起業家、投資家等の⽅々をアンバサダーとして任命しました。現在、国外5名、国内22名の⽅にご協⼒をいただいています。今後も追加予定です。
TechGALA Japan 2026チケット販売開始!

「TechGALA Japan 2026」の開催に向けてチケットの販売を開始しています。参加者みなさまの目的に合わせて、様々なチケットをご用意。さらに、現在早期購入特典として、12月26日(金)までチケットが全種類30%OFFとなっています。
▼チケット詳細・購入
https://event2026.techgala.jp/...
【TechGALA Japan 2026 】
日程:2026年1月27日(火)~29日(木)
場所:愛知県名古屋市
・Day1~2:栄地区(中日ホール&カンファレンス、ナゴヤイノベーターズガレージ、マツザカヤホールなど)
・Day3:鶴舞地区(STATION Aiなど)
時間:10:00~18:00(予定) ※オフラインのみでの開催予定
▼公式サイト
TechGALA公式トップページ:https://techgala.jp/
▼公式SNS
X:https://x.com/TechGALA_Japan
LinkedIn:https://www.linkedin.com/compa...
Facebook:https://www.facebook.com/share...
Instagram:https://www.instagram.com/tech...

執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
アメリカ・ニューヨークを拠点として活動する現代美術家・松山智一(まつやま ともかず)氏による作品《Color Of The City》が、ニューヨーク市マンハッタンのハウストン・ストリートとバワリー・ストリートの交差点に位置する象徴的な「ハウストン・バワリー・ウォール」にて、2026年1月まで継続して展示されることが決定しました。
本作品は2023年9月10日から展示されており、2025年9月には展示開始から2年を迎え、ハウストン・バワリー・ウォール史上最長期間の展示作品となります。
《Color Of The City》は、ニューヨークの市民や文化的アイコン、映画のワンシーン、そして松山が20年間にわたり撮影してきた人々を描いた30点のポートレートから構成される作品群です。2023年9 月に同壁で初公開され、大きな注目を集めました。
松山は当時、この作品について次のように語っています。
「ニューヨークは常に文化が重なり合い、新しいものを生み出す街です。この壁画では、その対話を反映しようとしました。日本の文化的背景からのイメージと、自身が拠点とするこの街の現代的なビジュアル言語を融合させています。ハウストン・バワリー・ウォールは象徴的な空間であり、その歴史に再び自分の声を加え、この街のリズムを映し出す作品を残せることは大きな名誉です」
「ハウストン・バワリー・ウォール」は、ゴールドマン・グローバル・アーツが所有・キュレーションを行い、世界的なストリートアートの発信地として広く知られています。これまでにバンクシー、シェパード・フェアリー、オス・ジェメオス、スウーン、アイコ、ロン・イングリッシュ、レトナなど、名だたるアーティストが作品を発表しています。松山も 2019 年に同社から正式な依頼を受け、壁画を制作しています。
ゴールドマン・グローバル・アーツは今回の松山の展示を、「ハウストン・バワリー・ウォール」の再生プロジェクトと位置付けています。《Color Of The City》は、日本とアメリカの文化を現代的なテキスタイルのモチーフと重ね合わせ、伝統と現代、東洋と西洋を融合させた松山独自のビジュアル言語を通じて、ニューヨークのエネルギー、多様性、そしてグローバルなアイデンティティを映し出す作品です。進化し続けるニューヨークの精神を体現するものとして、再びこの地に展示されます。
ゴールドマン・グローバル・アーツ CEO 兼ゴールドマン・プロパティーズ共同会長のジェシカ・ゴールドマン・スレブニック氏は、今回の展示について次のように述べています。
「ハウストン・バワリー・ウォールは、長年にわたり都市とアーティストの対話の場であり続けています。マツを再び迎え、壁を蘇らせることは、その対話の延長にほかなりません。アートが街角をインスピレーションと驚きの場へと変える力を持っていることを改めて思い起こさせます。
彼の作品は、この壁が静的な存在ではなく、都市と同じように進化し、人々を驚かせ、鼓舞し続けるのであることを示しています」。
本作品《Color Of The City》は、ニューヨーク市マンハッタン 76 E Houston St, New York, NY 10012に設置され、2026年1月まで公開予定です。
ジョージア州サバンナSCAD美術館にて、個展《Liberation Back Home》を開催中
現在、松山智一による個展《Liberation Back Home》が、ジョージア州サバンナにあるSCAD美術館にて開催中です。本展では、美術館のファサード(外壁)に加え、館内の専用展示空間でも新作の大規模な絵画と彫刻作品が展示されています。

「帰還」は必ずしも「過去に戻ること」ではなく、時には歴史と静かに向き合い、前へ進むための再構築でもあるー。本展にはそんな松山の視点が色濃く表れています。
舞台となるサバンナの地は、アメリカ独立戦争、奴隷制、南北戦争、そしてその後も続いた構造的抑圧といった、自由という概念が幾度となく揺さぶられてきた歴史を抱えています。松山は、これらの出来事を直接描くのではなく、その「空気」を作品に内包させることで、断絶と持続、記憶と象徴、装飾と空白の交差点を立ち上げています。
同時に本展は、作家自身の経験ー南カリフォルニアの移民コミュニティで育ったこと、日本での疎外感、そして20年以上暮らすニューヨークでの「見えていても周縁化される感覚」に根ざした視点も含みます。人種や文化、信仰、そして語られにくい記憶。見過ごされがちな声の気配を、静かな共鳴として作品に刻み込んでいます。
《Liberation Back Home》というタイトルは、単なる原点回帰ではなく、曖昧さや余白をもつ空間に「記憶」と「存在の権利」を取り戻す行為を意味します。自由とは固定されたものではなく、幾層にも重なり、常に変化しながら息づくものーこの展覧会は、その「自由のあり方」に静かに問いを投げかけています。
展覧会名:Liberation Back Home
会期 :2025年8月1日~2026年1月4日
会場 :SCAD美術館(サバンナ、ジョージア州)
開館時間・チケット・詳細につきましては、以下HPをご参照ください。
https://www.scadmoa.org/exhibi...

作家プロフィール:松山智一/MATSUYAMA Tomokazu
松山智一(1976年岐阜生まれ、ブルックリン在住)は、ニューヨークのプラット・インスティテュートでコミュニケーションデザインのMFAを取得。代表的なパブリックアートには、《Bowery Mural》(ニューヨーク、2019)、《Hanao》(JR 新宿駅東口広場、東京、2020)、《Wheels of Fortune》(明治神宮、2020、神宮外苑芸術祭の一環)などがある。
主な展覧会には、《FIRST LAST》(麻布台ヒルズギャラリー、東京、2025)、《Morning Sun》(エドワード・ホッパー・ハウス美術館&研究センター、ニューヨーク州ナイアック、2025)、《Mythologiques》(第 60 回ヴェネチア・ビエンナーレ、2024)、《Fictional Landscape》(弘前れんが倉庫美術館、2023/上海宝龍美術館、2023)などがある。
また、2024–2025 年にかけてルイ・ヴィトン財団(パリ)で開催された《Pop Forever. Tom Wesselmann & ...》にも参加。作品は LACMA(ロサンゼルス)、アジアン・アート・ミュージアム(サンフランシスコ)、クリスタル・ブリッジズ美術館(アーカンソー州)、ティッセン=ボルネミッサ美術館(マドリード)、ドバイ王室、シャルジャ銀行、マイクロソフトなど、世界各地の主要コレクションに収蔵されている。
Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
2016年9月11日(日)にオープンした、広島県福山市の禅寺である神勝寺「禅と庭のミュージアム」内にある、日本を代表する彫刻家・名和晃平氏とSANDWICHの設計によるアートパビリオン《洸庭(こうてい)》。
7万坪を有する広大な神勝寺内に、突然現れるその洗練された形状と大きさに、誰もが驚くことでしょう。建物は寺の由来から「舟」をモチーフとした形で、木 、石 、水をデザインと素材選定の基本要素に据えています。まるで未確認飛行物体のようなその建築物は、世界中の建築ファンからも注目を浴びる存在です。

Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH
《洸庭(こうてい)》は伝統的なこけら葺きを応用し、全体を木材で柔らかく包んだ舟型の建物が、石のランドスケープの上に浮かぶ建築物。

Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH
物質感のある石の海を抜け、ゆるやかなスロープを上がり、小さな入り口から舟の中に入ると、現代アートを通じ禅の世界を体験するパビリオンとなっています。
浮遊する舟のような建築の内部の暗がりの奥には海原が広がり、静かに波立っているのが見て取れます。波間には、かすかな光が反射。徐々に暗がりに目が慣れてくると、光が織りなす幻想的な世界へと誘ってくれます。「波」と「光」によって「海原」を表現した、名和氏によるインスタレーションです。
また、ミュージアムの玄関でもある寺務所「松堂」の設計を手がけた建築家・藤森照信氏の建築も必見。建築史家でもある藤森氏が、植物やオーガニックな素材を用いた斬新な設計で、周囲の自然に溶け込むようにデザインしました。
屋根の頂部に赤松が植えられており、松のホールを意味する「松堂」の名にふさわしいデザインです。外装はコテの跡が残る藁を練り込んだ土壁のような仕上げ。寺務所、案内所、ショップとしての機能を兼ね備えています。
ぜひ、アートと建築の融合が楽しめる「禅と庭のミュージアム」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
■神勝寺「禅と庭のミュージアム」
広島県福山市沼隈町大字上山南91
Tel. 084-988-1111(寺務所)

執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
美の普遍性を提唱し、日本の芸術を世界で再価値化することを目指す国際的現代アートギャラリー「ア・ライトハウス・カナタ」。この度、東京・西麻布から表参道に移転し、2025年10月16日(木)に自社ビル型の新ギャラリースペースを開廊しました。また、新たな開廊を記念し、2025年10月16日(木)〜11月8日(土)まで、20名以上の所属アーティストの作品群が一堂に会するグループ展『OPENING CEREMONY』を開催中です。

新ギャラリーの建築設計は、建築設計事務所バケラッタ主宰の森山善之氏、インテリアデザインは、新進気鋭のデザインチーム、I IN が担当。イタリア産のトラバーチン(石灰岩)を用いた重厚な壁面が厳かな異空間を演出するなど、従来のホワイトキューブを超えた唯一無二のギャラリー空間が誕生しました。

地上3階建てと屋上フロアの一棟からなり、最大約720平米の規模を有しています。1 階はメインギャラリー、2 階は通常は一般公開しないセカンドギャラリーに加え、VIP向けの応接室、プライベートビューイングルームやバーを備えています。3階はオフィスフロアで、屋上には渋谷や新宿方面の都市景観を一望できる開放的なテラスを設けました。


新たな開廊を記念するグループ展、『OPENING CEREMONY』では、ア・ライトハウス・カナタの美意識を体現する多彩な作品群が一堂に会します。出展作家には、日本の抽象彫刻の巨匠・安田侃、青白磁の陶芸で国際的評価を受ける深見陶治をはじめ、当ギャラリーにとって初めてとなる個展を11月に予定する陶芸家・三原研、さらに新進気鋭の日本画家・三鑰彩音や佐藤健太郎など、世代も表現領域も多様な顔ぶれが揃います。本展では1階メインギャラリーに加え、2階ギャラリーも特別に開放し、プライベート空間での展示をご覧いただけます。

ア・ライトハウス・カナタは、新ギャラリー開廊と本展を通じて、日本美術の新たな可能性と希望の光を世界へ発信していくとのこと。ア・ライトハウス・カナタの新たな門出、そして作家たちの類い稀なる美意識をぜひご高覧ください。
<ア・ライトハウス・カナタ/A Lighthouse called Kanata>
2007年の設立以来、ア・ライトハウス・カナタは21世紀における現代日本美術の再評価に取り組み、多様な視点から現代美術の境界を拡張することを目指しています。美的伝統の再発見と進化を通じて、日本国内外のアーティストによる抽象絵画や彫刻に焦点を当て、素材へのこだわりを通じて新たな美の概念を創造しています。
また、国内外において、年間を通して多数の展覧会を開催し、主要な国際アートフェアに出展。新
進気鋭のアーティストから、確立されたベテラン作家までを記録・紹介する出版活動を通じて、そのプログラムをさらに充実させています。さらに、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)、ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)、龍美術館(上海)など、世界の主要な文化機関と協力し、ギャラリーの独自の視点と美学を国際的な舞台で発信するためのプラットフォームを創出しています。そして、2025 年秋、東京・表参道の自社ビルへ拠点を移し、さらなる日本美術の未来への架け橋となることを目指しています。
公式サイト:https://lighthouse-kanata.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ligh...
Facebook:https://www.facebook.com/aligh...
■ア・ライトハウス・カナタ 表参道 移転記念展 『OPENING CEREMONY』
開催期間:2025年10月16日(木)〜11月8日(土)
開催時間:11:00-18:00 ※最終日のみ、16:00終了
定休日:日曜・月曜・祝祭日
会場:ア・ライトハウス・カナタ
東京都渋谷区神宮前 3 丁目 5-7
Tel. 03-5411-2900
参加作家:
深見陶治、安田侃、生田丹代子、尾崎悟、三原研、Joseph Walsh、田中信行、朝倉隆文、三鑰彩音、佐藤健太郎、米元優曜、横山修、森山寛二郎、杉谷恵造、藤掛幸智、加藤貢介、長谷川幾与、亘章吾、津守秀憲、武山直樹、中田真裕、冨樫葉子、武井地子、前田正憲、今井瑠衣子、横山翔平、谷川将樹、柞磨祥子、佐故龍平、三尾瑠璃、松村淳、大島幸子、松田啓佑、中野優(順不同・敬称略)
Photo: Tseng Kwong Chi ©Muna Tseng Dance Projects Inc Art: ©Keith Haring Foundation

All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection.
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
山梨県北杜市にある中村キース・ヘリング美術館では、2026年5月17日(日)まで、キース・ヘリングの没後35年を記念し、彫刻作品に焦点を当てる展覧会「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」を開催中です。
本館が新たに収蔵した全長5メートル超の彫刻《無題(アーチ状の黄色いフィギュア)》を中心に、本館所蔵の全13点の彫刻作品を一挙公開する本展は、「線のアート」で知られるヘリングがなぜ彫刻という表現手法に取り組んだのか、その経緯を辿る本館初の試みとなっています。
1980年代のアメリカ美術を代表する存在であるヘリングは、人や犬といったモチーフを輪郭線のみで描く独自のスタイルで知られています。1979年、地元ペンシルベニア州からニューヨークに移住した直後から、地下鉄構内の広告板にチョークで描く「サブウェイ・ドローイング」を開始。親しみやすさと強烈なインパクトを併せ持つ描線により、一躍国際的な注目を集めるようになりました。
ヘリングは生涯を通じて「誰にでも届く視覚言語」の可能性を追求しました。彫刻はその到達点のひとつであり、線が自立し、永続的な存在感を持つ表現となりました。彼は1988年のインタビューで次のように語っています。
「絵画というものは、ある程度まで、依然として素材の幻想です。でも、イメージを切り出した瞬間、それは現実のものになります。もし崩落すれば、人を殺すかもしれません。そうした力は絵画にはありません。(中略)それは恒久的で、実在する感覚を持ち続けます。私が生きているよりも、はるかに長く存在し続けることでしょう。」
ヘリングは作品の永続性を「不死性(immortality)」と呼び、制作行為そのものを、自らの存在を未来へ残す手段として捉えていました。
1985年より取り組み始めた彫刻作品は、絵画表現とは異なる公共性と永続性に対する信念に基づいて制作されました。鋼鉄やアルミニウムを用いて立体化された線は、都市景観や自然の風景に溶け込みながら、社会とアート、また人と人とをつなぐ立体表現となりました。
本展では、展示室内および屋外空間に彫刻作品を展示し、時間帯や天候によって変化する光の中で、生命力あふれる造形表現を体感することができます。
本展のみどころ
1. 彫刻家としてのキース・ヘリングを探る

トニー・シャフラジ・ギャラリーとレオ・キャステリ・ギャラリーで同時に開催された個展のポスター、1985年 All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection.
ヘリングは、1985年、米国コネチカット州のリッピンコット鋳造所で初めて彫刻制作に挑みました。ギャラリストのトニー・シャフラジから「君のアルファベットを風景に置いてみたらどうだ」という提案を受け、自身の描いてきた人物や動物のモチーフを三次元化し、空間に拡張させる新たな表現を開拓します。
その後ドイツでも彫刻を制作し、1987年には国際芸術祭「ミュンスター彫刻プロジェクト」へ出品。鋼鉄やアルミニウムによる彼の彫刻は、都市景観や自然風景の中に生命感を宿し、人々の体験の場を創出しました。
本展では、新たに収蔵した全長5メートルを超える大型作品《無題(アーチ状の黄色いフィギュア)》をはじめ、全13点の彫刻作品を展示。ヘリングが彫刻を通して追求した公共性と永続性、そして生命へのまなざしを体感可能です。
2. 蛍光塗料による作品の期間限定ライトアップ
2018年のインスタレーションの様子 All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection.
1983年に蛍光塗料を用いて制作されたペインティング《無題》および版画作品《無題》を、期間限定でブラックライトのもとでの特別展示を行います。本館では約5年ぶりとなる本作品のライトアップ展示は、会期中の毎週土曜日・日曜日および祝日の13:00〜14:00に行います。80年代ニューヨークのサイケデリックな空気を想起させる幻想的な光の中で、ヘリングの作品世界をご堪能ください。
3. 会場限定ブックレットを販売

「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」展ブックレット
All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection.
ページ数:24ページ サイズ:A5 価格:500円(税込)
販売期間:本展会期中(2025年6月7[土]ー2026年5月17日[日])
販売場所:中村キース・ヘリング美術館 受付
本展では、展示作品の理解をさらに深めてもらうため、会場限定ブックレットを販売しています。このブックレットには、本展に出品される約80点の作品および資料から厳選された16点の作品を掲載。ヘリング自身の言葉と書き下ろしの作品解説を通じて、彼の造形表現に込められた美意識や哲学に迫ります。
表紙には、1983年に制作された蛍光塗料を用いた《無題》を使用。躍動的な線のエネルギーを感じさせるデザインが、ブックレット全体の世界観を象徴しています。ヘリングの作品に触れ、より深くその魅力を知るための一冊を、ぜひこの機会にお手に取ってご覧ください。
以上、「線のアート」で知られるキース・ヘリングの彫刻という表現手法についての理解が深まる「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」展についてご紹介しました。ぜひ、会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
■「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」
会期:2025年6月7日(土)ー 2026年5月17日(日)
会場:中村キース・ヘリング美術館
山梨県北杜市小淵沢町10249-7
開館時間:9:00-17:00(最終入館16:30)
休館日:定期休館日なし
※臨時休館についてはウェブサイトをご確認ください。
観覧料:大人:1,500円 /16歳以上の学生:800円/ 障がい者手帳をお持ちの方:600円
15歳以下:無料
※各種割引の適用には身分証明書のご提示が必要です。
観覧券購入所:美術館受付のみで販売
「アートサイト名古屋城2024」展示風景 撮影: ToLoLo Studio
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
国内屈指の城郭として国の特別史跡に指定されている「名古屋城」。この度、名古屋城において2025年10月19日(日)まで、現代アートと史跡が交差する「アートサイト名古屋城 2025 結構のテクトニクス」を開催中です。
本展は、地域の新たな「文化創造の場」へと開き、創造的に活用することを目指して、2023年にスタートし、今年で3回目を迎えるアートプロジェクト。アーティストが名古屋城の歴史、文化、地理などをリサーチし、ここでしか生まれない鑑賞体験を創出しています。
以下、本プロジェクトキュレーターの服部浩之氏の言葉をご紹介します。
「アートサイト名古屋城」では、名古屋城が取り組んでいる「保存・活用」に着目し企画を進めてきました。2023年には「保存」活動に着目し「想像の復元」というテーマのもと、名古屋城の復元作業に着想を得た作品群を展開し、2024年には「活用」に力点を置き旅の達人・宮本常一の「あるくみるきく」を出発点として、江戸時代から現代まで多彩なアーティストによる旅の表現を紹介し、名古屋城ならではの現代アート展を実施してきました。
3回目となる 2025年は再び「保存」に注目し、400年続く名古屋城を形成する素材、築城の技術、そして長年の継承から学ぶことで、新たな創造を導くことを提案します。素材・構造・技術の関係性を、美学・文化的側面から捉える構造の表現をテクトニクスといい、積み上げた礎石の上に木造建築物がのる日本の城郭はまさに独自のテクトニクスの賜物と言えるでしょう。また、善美を尽くして物を作ることを「結構」といい、アーティストの創作活動はまさに結構なのです。
絵画や彫刻という形式にとどまらない現代アートの作品には、多種多様な素材が用いられています。いわゆる美術とは縁がなさそうな、さまざまな技術が投入され、アーティストたちは歴史化された過去の表現を継承することで新たな作品を生み出してきました。
「結構のテクトニクス」と名付けられた本プロジェクトでは、最善を尽くして制作された芸術作品(= 結構)の根本的な構造表現の美(=テクトニクス)を堪能いただける場を生み出します。フレスコ画を中心に古典から現代まで様々な描画技法を探求してきたアーティストの川田知志が本丸御殿障壁画をモチーフに、大規模な屋外作品を展開する予定です。
9日間という限られた時間のなかで、制作プロセス、完成された作品、そこで起こるイベント、そして作品が別のかたちへと姿を変えるまでをお楽しみください。
次に、本展のみどころをご紹介。
1/1スケールの本丸御殿が御深井丸(おふけまる)に浮かび上がる
撮影: ToLoLo Studio
これまでフレスコ技法を軸に、壁画の制作・解体・移設を行ってきた川田知志氏は、本丸御殿の障壁画に着目しました。本丸御殿の障壁画は、1945 年の名古屋空襲で焼失を免れた襖絵や天井絵などが重要文化財に指定され、大切に保管されています。また、それらを復元模写することで、後世へ継承する取り組みも行われています。
川田氏はその中でも、空襲で失われた「壁貼絵」 に焦点を当て、当時描かれたモチーフを独自の解釈で描き直します。そして、フレスコ画のストラッポ(引き剥がし)技法を用い、名古屋城の北西に位置する広大な御深井丸の地形に沿って、本丸御殿を 1/1スケールで写しとり展開した空間に「壁貼絵」を配置します。さらに、本丸御殿を支える「礎石」は、かつて御深井丸の北側(今の名城公園北園を中心とする二之丸北部の場所)にあった下御深井御庭(したおふけおにわ)で焼かれていた御深井焼(おふけやき) に倣った陶板へと置き換えられます。
「壁貼絵」と「礎石」をたどることで、素材や構造、技術をふまえた意匠の美しさや文化的な意味に光を当て る<テクトニクス>の視点から、本丸御殿を想像の中に立ち上がらせます。名古屋城の自然環境と歴史的背景を併せもつ御深井丸という特別な場に創出する大規模なインスタレーションをぜひご覧ください。
作品/名古屋城を深めるためのコミュニケーションプログラム「ひろば KEKKO」
「結構のテクトニクス」制作風景(2025) ©Satoshi Kawata

「結構のテクトニクス」プランスケッチ(2025) ©Satoshi Kawata
テーマ「結構のテクトニクス」を紐解く手がかりとして、川田知志氏へのインタビュー映像の展示やトークイベント、参加者が手を動かしてものづくりを行う工作ワークショップなどを企画します。
また、「アートサイト名古屋城」の初回から山城大督が継続して行っている、城内に自生する「カヤの木」をモチーフに〈香り〉を巡るプロジェクトでは、蒸留イベントやトークイベントも開催します。秋の心地よい空の下で、学びを深めるラーニング体験をお楽しみください。
10/18(土)
13:30~15:30 トーク 3「樹木医から診る名古屋城のカヤの木 2025(精油蒸留の実演付き)」
出演:寺本正保(岩間造園株式会社 取締役 営業部長、樹木医)
聞き手:山城大督(コミュニケーションプログラムディレクター)
10/19(日)
14:00~15:00 パフォーマンス「サウンドのテクトニクス」※ゲスト調整中
【WORKSHOP】
「KEKKO なハンカチ」
作品を鑑賞したあとは手を動かしてみよう!カラフルな色を配置してオリジナルのハンカチがつくれます。(有料・毎日開催・受付 10:30~15:30)
【CAFE&SHOP】
御深井丸に飲み物やオリジナルグッズを取り扱う小さなショップをオープン。
川田知志(かわた・さとし)プロフィール

川田知志の制作風景 撮影:福永一夫 提供:東京都現代美術館 (c)Satoshi Kawata
川田知志(かわた・さとし)/2013 年京都市立芸術大学大学院絵画専攻修了。京都府在住。
時代ごとに変化する建築と空間芸術の関わりを、フレスコ技法を軸にした壁画の制作、解体、移設により可視化する作品制作を行なう。主な個展に「築土構木」京都市京セラ美術館ザ・トライアングル(2024)、「彼方からの手紙」アートコートギャラリー(2022、大阪)。主なグループ展に「MOT アニュアル 2024 こうふくのしま」東京都現代美術館(2024)、「ホモ・ファーベルの断片―人とものづくりの未来―」愛知県陶磁美術館(2022)。主な受賞歴に京都府文化奨励賞(2025)、第 2 回絹谷幸二賞大賞(2025)。
■「アートサイト名古屋城 2025 ART SITE in NAGOYA CASTLE
結構のテクトニクス Exquisite Tectonics」
「アートサイト名古屋城2024」ナイトミュージアム 撮影: fujico
アーティスト|川田知志 Kawata Satoshi
キュレーター|服部浩之 Hattori Hiroyuki
会場|名古屋城 御深井丸 Nagoya Castle Ofukemaru
会期|2025年10月11日(土)ー 10月19日(日)
開園時間|10月11日(土)ー 17日金)9:00 ̶ 19:30(閉門 20:00)
10月18日(土)・19日(日)9:00 ̶ 16:30(閉門 17:00)
作品観覧時間|10月11日(土)ー 17日(金)10:00 ̶ 19:30
10月18日(土)・19日(日)10:00 ̶ 16:30
*西の丸御蔵城宝館への入場は16:00 まで
*本丸御殿への入場は19:00 まで、17(金)-19(日)のみ16:00 まで
*天守閣には現在入場できません
観覧料|大人:500 円 中学生以下:無料
*10/18(土),19(日)は名古屋まつりのため無料開放
*名古屋市内高齢者(敬老手帳持参の方):100 円
*障害者手帳をご提示の方:無料(付き添い 2 名まで)
*名古屋城の観覧料で「アートサイト名古屋城」をご覧いただけます
ウェブサイト|https://nagoyajo.art/
場 Place 1993 ceramic h.14.5x w. 43.3 x d.33.5cm ©Keiji Ito photo by Katsuhiko Kodera
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
1996年に東京都江東区佐賀町に開廊し、2016年より六本木に拠点を移した「小山登美夫ギャラリー六本木」。開廊当初から海外アートフェアに積極的に参加し、日本の同世代アーティストを国内外に発信してきました。日本における現代アートの基盤となる潮流を創出したことで知られています。

ストーリー Story 2005 ceramic 15.5 x 32.5 x42.5 cm ©Keiji Ito photo by Katsuhiko Kodera
この度、「小山登美夫ギャラリー六本木」にて、伊藤慶二展「土の人「沈黙と空間」が、2025年10月15日(水)~11月15日(土)まで開催中です。
今年卒寿(90歳のお祝いのこと)を迎えた、アーティスト・伊藤慶⼆(1935-)。陶、油彩、⽊炭、インスタレーション、コラージュなど、様々な素材、手法を既成概念にとらわれず⾃由に扱い、「⼈間とはいかなる存在か」という本質的な追求を作品上で表現。
そこには、伊藤氏独自の鋭敏な感性と幅広い視点が影響しています。幼少期聞いた戦争の惨状が心に刻まれたことからの祈りへの想い、武蔵野美術学校(現、武蔵野美術大学)で油画を学び、モディリアーニ、ピカソや、明日香の巨大石造物、飛鳥大仏や薬師寺講堂の廃仏などの東西美術への興味、デッサンの重要性を説くその視座は、新たな作品世界として展開される基となりました。
また、岐⾩県陶磁器試験場に籍を置き、陶磁器デザイナーでありクラフト運動の指導者の⽇根野作三との出会いに強い影響を受けます。そこで、平⾯での意匠のみでは実際の⽴体とのつながりに限界を感じたのが、⾃らやきもの制作を⼿がけるきっかけとなったといいます。
伊藤氏の制作に対して、豊田市美術館長の高橋秀治氏は次のように述べています。
「粘土を手で感じて形作るというより、視覚的にそのプランを想定されたうえで、つまり極端に言えば、二次元でものを考え、それを組み合わせて三次元の形を構成しているように感じるのである。これは優劣の問題でなく、その作家が持っているテイストのようなものだと思うのである。」
伊藤氏の寡黙で奥深いまなざし、力強い作品群は長年高い評価を得てきましたが、90歳の現在でも精力的に制作を続け、国内外でますます意欲的に発表し続けています。今年6月から9月に岐阜県現代陶芸美術館で開催された「伊藤慶二 祈・これから」では、今までの足跡と創作の現在地を表し、大きな評判を呼びました。
ぜひ、伊藤氏の持つ、既成概念にとらわれない「⼈間の存在」への寡黙で奥深いまなざしを感じ取りに、会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。
■伊藤慶二展「沈黙と空間」
会期:2025年10月15日 (水)ー11月15日(土)
会場:小山登美夫ギャラリー六本木
東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
時間:11:00 - 19:00 (日月祝休 入場無料)
Untitled 2024 Acrylic color on paper and cardboard 25.5 x 33.0 cm ©︎Satoshi Hirose

Installation view ©︎Satoshi Hirose
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
群馬県前橋市のアートスポット「まえばしガレリア」内にある「小山登美夫ギャラリー前橋」にて、廣瀬智央展「From Sky to Sky」が、2025年10月4日(土)から11月16日(日)まで開催中です。
2013年、前橋市に誕生した現代美術館アーツ前橋の開館を機に、コミッションワークとして生まれたのが、美術作家・廣瀬智央氏による屋上の看板作品「遠い空、近い空」です。この作品は、前橋市の母子支援施設に暮らす子どもたちと、半年間にわたり空の写真を交換し合う対話のなかから生まれました。そこから前橋との深い縁が始まり、やがてグループ展「表現の森」(2018)への参加や、個展「地球はレモンのように青い」(2020)の開催へとつながっていきます。
現在も19年間にわたり続ける母子支援施設とのワークショップのため、廣瀬氏は毎年前橋を訪れて活動を重ねています。今回の小山登美夫ギャラリー前橋(まえばしガレリア2)での展覧会では、原点へと立ち戻り、前橋とのつながりを結び直しながら、廣瀬氏が探究してきた「空」と「青」を軸に、未発表作と新作を中心とした展示を行っています。

Untitled 2024 Acrylic color on paper and cardboard 31.1 x 22.5 cm ©︎Satoshi Hirose
1991年、日本からイタリアへ渡った廣瀬氏は、はじめて空に向けてシャッターを切った瞬間に「空」の作品シリーズを歩み出しました。それ以来30年以上にわたり、「青」 と「空」をめぐる長い旅を続けています。それは単なる色や風景の再現ではなく、感覚と存在を深く開いていくための実践にほかなりません。

Untitled 2024 Acrylic color on paper and cardboard 31.1 x 22.5 cm ©︎Satoshi Hirose
「青」は、顔料や紙の表面に確かに息づきながら、同時に手の届かない深遠へと私たちを誘います。海や宇宙の記憶を呼び覚まし、沈潜と解放を一度に経験させる色。その青を通して、有限の身体が無限の広がりへと触れる瞬間を描き出そうとしてきたといいます。
「空」は、廣瀬氏が撮影し、描き、構成するイメージのなかに現れます。しかしそれは単なる風景ではなく、私たちを常に包み、同時に通り抜けていく場そのものです。そこでは個と個が交わり、世界と私が境を失う。仏教の「空性」 が示すように、すべての存在は相互依存の網の目のうちに立ち現れます。「青」と「空」は呼応し合い、青は空の深みを物質としてここに呼び寄せ、空は青を色彩の次元から解き放ち、超越的な広がりへと導く。両者は、物質と非物質、有限と無限、想像と現実を架橋する通路なのです。

Untitled (Into the deep sleep) 2024 marble, wool, plastic, iron ball, painth.3.2 x w.15.5 x d.15.5 ©︎Satoshi Hirose
この展覧会では、青と空が交差する瞬間、有限と無限、可視と不可視が触れ合い、観る人が青に包まれ、空に開かれながら、自らの身体と感覚を越境していく経験の共有を願っているとのこと。それは廣瀬氏自身が作品を通じて幾度となく求めてきた、「世界と新たにつながる方法」でもあります。
展覧会タイトル「From Sky to Sky(空から空へ)」は、2001年に刊行した空の写真集『Viaggio』に寄せられた、美術批評家アンジェロ・カパッソ氏による深遠なエッセイ の題名です。25年ぶりに廣瀬氏はその文章を読み返し、彼の歩みや思索をすでに見事に言い当てていたことに気づき、改めて深い共感を覚えました。その響きこそ、この展覧会に ふさわしいものと考え、タイトルとして掲げるに至ったそうです。
廣瀬氏は、作品のコンセプトに関して、以下のように語っています。
『私にとって「青」と「空」は、単なる主題ではなく、存在の根源に触れようとする行為であり、またアートを通して生を思考するための原点です。私は長いあいだ制作を続ける中で、繰り返しこの二つのイメージに立ち戻ってきました。青と空をめぐる往還こそが、私にとって作品を生み出す呼吸そのものであるからです。
青は、絵具や写真の中で物質として立ち現れる一方で、重ねるごとに「不可視の深み」へと変わっていきます。その瞬間、青は単なる色ではなく、触れられない存在の気配を帯び始めます。そこには有限な身体を持つ私が、無限に触れようとする試みがあります。スピノザ的に言えば、それは「延長」と「思惟」とが並行する運動であり、 青を描くことは、私の身体と精神が自然全体と共鳴するひとつの様態となることです。
空もまた、私の制作の中心にあります。空は背景や風景ではなく、私たちを包み込み、呼吸とともに生成し続ける「場」そのものです。ドローイングや写真のなかに刻まれる空は、固定された形象ではなく、ベルクソンが語る「持続」のように、流れ、変化し、絶えず生成する時間の運動体です。空を見つめるとき、私はその瞬間が、過去と未来を抱え込む「いま」であることを感じます。
この「空」という経験は、仏教の空性の思想とも響き合っています。あらゆる存在は固定的な実体としてあるのではなく、関係性と縁起によって成り立つ。空を見ることは、実体を掴むのではなく、むしろ「存在が関係性の網の目として現れること」を見ることです。私にとって空の表現は、その「無」による否定ではなく、「縁起的な開け」による肯定なのです。青や空のイメージは、私の作品において、その関係性の網の目を感覚的に可視化するひとつの試みです。
この探究は、美術史的な文脈とも複雑に交差しています。サイ・トゥオンブリーが地中海の光の中で西洋美術史の形式的な重さを「軽やかに戯れる線」として再生し、人間の精神に触れようとしたように、私もまた「形式を超える詩的実践」として異なる文化や素材を遊戯的に結び直し、詩的な場を創出しようとしています。フォンタナの「切り口」による空間への開口は、私にとって「空」への入り口を思わせるものでした。加えて、若冲や北斎に見られる群青の表現は、色彩が再現を超えて精神性を帯び、遊戯的な広がりを示しており、私の「青」と「空」は西洋と東洋の双方の伝統を横断しています。
「青」と「空」は互いに呼び合い、響き合い、往還を繰り返します。青は空を呼び寄せ、空は青を無限へと解き放つ。その往還のただなかに、私は有限な存在として身を置きつつも、哲学的にも美学的にも「生成の運動」を受肉させようとしているのです。
私は、絵画やドローイングにおいて、青を重ねる行為を通じて、有限な身体が無限に触れようとする瞬間を探り続けています。また、空を撮影し描き写すことで、時間と呼吸の痕跡を可視化しようとしています。こうした営みは、美術史の長い系譜に連なりながらも、私自身の日常から始まるものです。つまり私は、歴史の厚みを背負いながら、同時に最も個人的で具体的な瞬間から「青」と「空」を立ち上げているのです。
私にとって「青」と「空」とは、色であり、風景であり、哲学であり、呼吸であり、そして生きることそのものです。作品を通じて観る人に開かれるのは、私だけの青や空ではなく、それぞれの存在が抱える「無限への入口」なのかもしれません』。
■廣瀬智央展「From Sky to Sky」
会場:小山登美夫ギャラリー前橋
群馬県前橋市千代田町5丁目9-1(まえばしガレリア内 Gallery 2)
会期:2025年10月4日(土)-11月16日(日)
11:00 - 19:00 月火祝 休
入場無料
クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ
© musée Marmottan Monet
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
印象派を代表する画家の一人として知られるクロード・モネ(1840-1926)。光と色彩をとらえる鋭敏な眼によって、自然の移ろいを画布にとどめることに努めました。しかし後年になるにつれ、その芸術はより抽象的、かつ内的なイメージへと変容してくことになります。
モネの晩年は、最愛の家族の死や自身の眼の病、第一次世界大戦といった多くの困難に直面した時代でもありました。そのような中で彼の最たる創造の源となったのが、ノルマンディー地方の小村 ジヴェルニーの邸宅を買い取り、その庭に造られた睡蓮の池に、周囲の木々や空、光が一体と映し出される水面でした。この主題を描いた巨大なカンヴァスによって部屋の壁面を覆いつくす大装飾画の構想が、最期に至るまでモネの心を占めることになります。
豊田市美術館にて、2025年6月21日(土)~9月15日(月・祝) の間に開催されていた「モネ 睡蓮のとき」。本展の中心となったのは、この時期に描かれた大画面の〈睡蓮〉の数々です。会場には、パリのマルモッタン・モネ美術館のコレクションから日本初公開となる重要作品を含んだおよそ50点と、日本国内の美術館等が所蔵する作品が並びました。日本では過去最大規模となる〈睡蓮〉が集う貴重な機会となりました。
第1章 セーヌ河から睡蓮の池へ

クロード・モネ《睡蓮、夕暮れの効果》1897年 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ
© musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB
1890年、50歳になったモネは、7年前に移り住んだジヴェルニーの土地と家を買い取り、これを終の棲家とします。それはまた、彼が同一のモティーフを異なる時間や天候のもと繰り返し描く、連作の手法を確立した時期でもありました。
やがて画家の代名詞ともなるジヴェルニーの自邸の庭を描くことは、すぐに作品へと結実したわけではありません。1890年代後半に主要なモティーフとなったのは、モネが3年連続で訪れたロンドンの風景や、彼の画業を通じて、つねに最も身近な存在であったセーヌ河の風景でした。
とりわけ、この時期に描かれたセーヌ河の水辺の風景は、しばしば水面の反映がかたちづくる鏡像に主眼が置かれており、のちの〈睡蓮〉を予見させます。
1893年、モネは自邸の庭の土地を新たに買い足し、セーヌ河の支流から水を引いて睡蓮の池を造成します。この“水の庭”が初めて作品のモティーフとして取り上げられたのは、それから2年後のことでした。
さらに、池の拡張工事を経た1903年から1909年までに手掛けられたおよそ80点におよぶ〈睡蓮〉連作において、画家のまなざしは急速にその水面へと接近します。周囲の実景の描写はしだいに影をひそめ、ついには水平線のない水面とそこに映し出される反映像、そして光と大気が織りなす効果のみが画面を占めるようになりました。
その後、セーヌ河を流れる水は睡蓮の池へと姿を変え、晩年のモネにとって最大の創造の源となっていきました。
第4章 交響する色彩
モネの絵画は、その色彩が生む繊細なハーモニーゆえに、同時代からしばしば音楽にたとえられました。1921年に洋画家の和田英作が松方幸次郎らを伴いジヴェルニーのアトリエを訪れた際、〈睡蓮〉の近作をして「色彩の交響曲」と評したところ、モネが「その通り」と答えたという逸話も知られています。
しかし、1908年ごろからしだいに顕在化しはじめた白内障の症状は、晩年の画家の色覚を少なからず変容させることになりました。悪化の一途をたどる視力に絶えず苦痛を訴えながらも、モネは1923年まで手術を拒み、絵具の色の表示やパレット上の場所に頼って制作を行うことさえあったといいます。
1918年の終わりごろから最晩年には、死の間際まで続いた大装飾画の制作と並行して、複数の独立した小型連作が手掛けられました。モティーフとなったのは、“水の庭”の池に架かる日本風の太鼓橋や枝垂れ柳、“花の庭”のばらのアーチがある小道などです。
これらの作品は、不確かな視覚に苛まれる中にあって衰えることのない画家の制作衝動と、経験から培われた色彩感覚に基づく実験精神を今日に伝えています。画家の身振りを刻印する激しい筆遣いと鮮烈な色彩は、のちに1950年代にアメリカで台頭した抽象表現主義の先駆に位置づけられ、モネ晩年の芸術の再評価を促すことになります。
エピローグ さかさまの世界

クロード・モネ《睡蓮》1916-1919年頃 油彩/カンヴァス マルモッタン・モネ美術館、パリ
© musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB
「大勢の人々が苦しみ、命を落としている中で、形や色の些細なことを考えるのは恥ずべきかもしれません。しかし、私にとってそうすることがこの悲しみから逃れる唯一の方法なのです。」大装飾画の制作が開始された1914年に、モネはこう書いています。
折しもそれは、第一次世界大戦という未曾有の戦争が幕を開けた同年のことでした。1918年に休戦を迎えると、時の首相にして旧友のジョルジュ・クレマンソーに対し、戦勝記念として大装飾画の一部を国家へ寄贈することを申し出ます。その画面に描かれた枝垂れ柳の木は、涙を流すかのような姿から、悲しみや服喪を象徴するモティーフでもありました。
モネがこの装飾画の構想において当初から意図していたのは、始まりも終わりもない無限の水の広がりに鑑賞者が包まれ、安らかに瞑想することができる空間でした。それはルネサンス以来、西洋絵画の原則をなした遠近法(透視図法)による空間把握と、その根底にある人間中心主義的な世界観に対する挑戦であったとも言い換えられるでしょう。
画家を最期まで励まし続け、その死後1927年の大装飾画の実現に導いた立役者であるクレマンソーは、木々や雲や花々が一体となってたゆたう睡蓮の池の水面に、森羅万象が凝縮された「さかさまの世界」を見出します。モネの〈睡蓮〉は、画家が生きた苦難の時代から今日にいたるまで、人々が永遠の世界へと想いを馳せる、心のよりどころとなりました。
■「モネ 睡蓮のとき」
会期:2025年6月21日(土)~9月15日(月・祝)
休館日:月曜日(9/15は開館)
開館時間:午前10時~午後5時30分(いずれも入場は閉館の30分前まで)
会場:豊田市美術館
愛知県豊田市小坂本町8丁目5番地1