執筆者:遠藤友香
2005年の初開催以来、日本および世界の優れたアートギャラリーが集う日本最大級の国際的アート見本市「アートフェア東京」。2024年3月8日(金)から10日(日)(7日は招待制のプライベートビュー)にかけて、東京国際フォーラムにて開催中です。
18回目を数える2024年のアートフェア東京は、大きく変化する世界のアートシーンの影響も鑑みながら、引き続き日本独自のさらなるマーケット醸成に寄与するため、お客様とギャラリーの間での良き作品との出会いの場を創造していきます。
国内で展開されている多彩なジャンルー例えば、現代美術や日本画、洋画、工芸、古美術などを一つの会場で鑑賞できる機会は、現在このフェアが日本国内で唯一のものとなっています。
今年のアートフェア東京の出展ギャラリーは、国内外35都市より156軒(内初出展19軒)となり、海外フェアにも出展している日本の主要ギャラリーを中心に、アフターコロナでの海外ギャラリーの出展も目立ち始めました。また海外でも注目されている工芸のギャラリーの初参加が多くなっています。
”The Project Yugen”
セッションは、ギャラリーズ、クロッシング、プロジェクツ、パートナーズで構成され、リニューアルされたプロジェクツでは海外ギャラリーによる合同展”The Project Yugen”が開催され、見どころとなっています。これは、アートフェア東京が他のアートフェアとの差別化を図り、新たな方向性を打ち出す初の試み。ゲストキュレーターに、イタリア出身でロンドンで活躍している女性キュレーターのタラ・ロンディを迎えています。
”The Project Yugen”
2月27日(火)に行われた記者発表会において、アートフェア東京のマーケティングディレクターを務める木下明は「今回、プロジェクツでは幽玄をテーマにしています。幽玄は、言葉では語り尽くせないほど宇宙の深遠な意識を示していて、これは日本の美意識に通じるものであるというところが、タラの感じる今の日本の魅力だそうです。見えるものと見えざるものの境界線が、この時代において曖昧になってきており、このアートフェアに携わってると、なぜアートを所有しなければいけないのかや、所有する意味であったり、そういったところについてもっともっと考えていくような時代になってきてるんじゃないかなと感じています。
これからどういうものを買っていけばいいのか、自分にとってアートって何だろうって会話がとても増えてきており、そういうときの曖昧さだったり、自分のために何でこれがあるのか、見えているものと見えてないものの間で感じるもがあると思うんですが、そういったものをより問いを投げかけるような企画展になっていると思っています」と語りました。
マネージングディレクターの北島輝一は、アートフェアの役割について「多くの方々は美術館の展覧会に近いものと考えていらっしゃるのですが、我々としては実は全然違うというふうに思っています。以前は展覧会に近いフォーマットでやっていたのですが、ここ数年はなるべくその美術館の展覧会でないようにするために、初日をプレビューではなくプライベートビューと呼ぶとか、初日が一番売れるし、できれば早い時間帯にコアなコレクターに来てほしいということを主眼に設計しており、VIPの誘致をしています。
ギャラリーに対しては、アートフェア東京に出ることが、ブランディングとマーケティングに繋がるように考えています。アートフェア東京に、日本のコレクター全員に来て欲しいし、海外からも一部コレクターに来て欲しいとの想いでやっています。来場者には、いっぺんにたくさんのギャラリーの展示販売している作品を見ることができるという意味で、流動性を提供しています」と述べています。
次に、アートフェア東京に出展しているおすすめギャラリーを5つピックアップします。
1.小山登美夫ギャラリー
1996年、江東区佐賀町に開廊した「小山登美夫ギャラリー」。2016年より六本木に拠点を移し、2022年天王洲にもスペースをオープン。開廊当初から海外アートフェアへ積極的に参加し、日本の同世代アーティストを国内外に発信しています。
日本における現代アートの基盤となる潮流を創出しており、現在は菅木志雄、杉戸洋、蜷川実花、リチャード・タトルなどのアーティストに加え、陶芸アーティストも紹介。国境やジャンルにとらわれず巨匠から新たな才能まで幅広い作品を紹介し、独自の視点で現代アートマーケットの更なる充実と拡大を目指しています。
Tom Sachs トム・サックス Model Ninety Five 2023 ©Tom Sachs, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
川島秀明 Hideaki Kawashima bad condition 2003 ©Hideaki Kawashima, Courtesy of Tomio Koyama Gallery
本フェアには、出展作家10名の作品が並んでおり、身の周りにある素材を使って現代のアイコンを再現した彫刻作品を発表し続けているトム・サックスや、様々な顔とそこに現れる憂いを帯びた繊細な目や表情を描き出す川島秀明といった気鋭の作家に注目したい。
2. カイカイキキギャラリー
アーティストのマネジメントと作品販売により、アートの社会的価値の創造を行っている「 カイカイキキギャラリー」。カイカイキキ所属アーティストをはじめ、海外からはMark Grotjahn、Matthew Monahan、Friedrich Kunathなどを取り扱い、展覧会を開催してきました。今後も、国内外問わずさまざまな作家をインバイトし、社会とアートをつなぐ起爆剤として機能していくといいます。
©2024 Otani Workshop/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.
©2024 Mr./Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. Courtesy of Kaikai Kiki Gallery
今年頭にDiorとのコラボレーションを行って生まれた緑の大きなかいじゅうの作品は、大谷工作室のもの。実際にDiorのブティックに展示されていた立体作品が展示販売されています。また、正面の壁面でのインスタレーションは、Mr.の作品。先日パリでの個展を終えたばかりの作家ですが、今回のアートフェアのために制作された新作が並んでいます。
3.KOTARO NUKAGA
異文化が交差し多様な情報が発信される六本木と、新たな現代アートの中心地として注目される天王洲に拠点を置き、国内外の先鋭的なアーティストと共に独自性の高いギャラリープログラムを展開している「KOTARO NUKAGA」。
アートは歴史や社会と対話し、批判的に私たちの既成概念に揺さぶりをかける一方で、領域横断的に科学や先端的のテクノロジーなどをも思考や表現の対象に取り込んでいくと、同ギャラリーの代表を務める額賀古太郎は考えています。
JOSÉ PARLÁ Movement of Reflective Light, 2024
(左)AMANI LEWIS They call him Los, 2022 (右)AMANI LEWIS Finding peace in the History, not the turbulence., 2022
KOTARO NUKAGAのブースでは、ホセ・パルラ、ニール・ホッド、松山智一、森本啓太、マイケル・リキオ・ミング・ヒー・ホー、アマニ・ルイスの作品を展示。中でも、ホセ・パウラとアマニ・ルイスは初出展です。
4.gallery UG
一人ひとりアーティストを発掘・育成しながら、アーティストと共にギャラリーとしての成長を遂げてきた「gallery UG」。 現在では若手アーティストを30人ほど抱え、平面作品はもちろんのこと、扱いが難しいとされる立体作品にも注力しています。
(左から)野原邦彦 「みまわし山をつくる」樟、アクリル絵具(153×64×63cm)2024 「みまわし山をつくる」樟、アクリル絵具(115×61×64cm)2023
田島享央己「Almost cut my hair Part 6」 キャンバスにアクリル絵具 F100 (162×130.3cm)2024
本フェアには、キャッチ―で親近感を覚えるモチーフをポップな色彩で表現した木彫を中心に発表している野原邦彦や、アウトローな気質を備え、彫刻だけでなく絵画領域にフィールドを広げ、幅広く活動している田島享央己などを出展しています。
5. ギャラリーこちゅうきょ
壺中居の屋号は「壺中之天」の故事から、創業者の南天子と不孤斎によって名付けられました。そこには、日常の中にある別天地であることを願い、美術を愛する皆様の憩いと楽しみの場でありたいという二人の想いが込められています。店内には、会津八一(秋艸道人)の揮毫による壺中居の看板が掲げられています。
中国・韓国・日本を中心とした東洋古美術、主に陶磁器を取り扱っており、日本を始め世界のコレクター、美術館の収集を一世紀近くにわたりお手伝いしてきました。最近では、数寄者や文士の本をご覧になって来店される方も多く、また店の看板を目当てに来る書家の方も珍しくないとのこと。
戸田浩二 焼締尖 Stoneware, "SEN"
本フェアでは、戸田浩二の作品を展示販売。戸田は笠間の陶芸家・伊藤東彦に師事し、2002年より薪窯を築いて制作をしています。作品は、焼き締め技法による装飾を排した端正な花器や水瓶などで、強靭かつ繊細な造形力と柔軟な発想が無限の可能性を感じさせます。
以上、「アートフェア東京」についてご紹介しました。ぜひ会場に足を運んで、お気に入りの作品を見つけてみてはいかがでしょうか。
■アートフェア東京
会期:2024年3月8日(金)~10日(日)
プライベートビュー: 3月7日(木)11:00~19:00
パブリックビュー : 3月8日(金)11:00~19:00
3月9日(土)11:00~19:00
3月10日(日)11:00~17:00
会場:東京国際フォーラム ホールE/ロビーギャラリー
東京都千代田区丸の内3丁目5番1号
JR・地下鉄有楽町駅 徒歩約1分、JR東京駅(京葉線) 徒歩約5分
チケット:前売券:4,000円(税込)
予約当日券:5,000円(税込)
※小学生以下は、大人同伴に限り入場無料