滋賀県立美術館外観(撮影:大竹央祐)
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
1984 年に滋賀県大津市に開館した「滋賀県立近代美術館」。日本画家の小倉遊亀(滋賀県大津市出身)や染織家の志村ふくみ(滋賀県近江八幡市出身)のコレクションは国内随一を誇っています。
2021年6月に館名から近代が外れてリニューアルオープンした「滋賀県立美術館」。展示室の中で「シーン」と静かにする必要はなく、おしゃべりしながら過ごすことができるので、小さなお子さんがいる方も安心して過ごすことができます。
また、目が見えない、見えづらいなどの理由でサポートや展示解説を希望される場合や、来館にあたっての不安をあらかじめ伝えていただければ、事前の情報提供や当日のサポート希望に可能な範囲で対応してくれるなど、鑑賞者に優しい美術館です。
(左から)阿部健太朗氏、吉岡紗希氏 2023年 撮影:橋本大
大分県由布市の廃校をアトリエとして、絵本や絵画、立体作品、イラストレーションなど、日々さまざまな作品を生み出している阿部健太朗(1989- )と吉岡紗希(1988- )による二人組のアーティスト「ザ・キャビンカンパニー」による企画展「ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展〈童堂賛歌〉」が、2025年9月7日(日)まで開催中です。
ザ・キャビンカンパニー『ゆうやけにとけていく』 2023年
2009年のユニット結成以来、40冊以上の絵本を発表し、2024年に『ゆうやけにとけていく』(小学館)で「第71回産経児童出版文化賞産経新聞社賞」、「第29回日本絵本賞大賞」を受賞するなど、高い評価を得ていることで知られています。
2人の活動は絵本の分野にとどまらず、新国立劇場ダンス公演Co.山田うん『オバケッタ』の舞台美術(2021年)を手がけたり、「NHKおかあさんといっしょ(Eテレ)しりたガエルのけけちゃま」のキャラクターデザインと美術制作、歌手あいみょんの「傷と悪魔と恋をした!」ツアーパンフレットの表紙および本文挿絵の制作を担当。さらに、2023年から3年にわたり「こどもの読書週間」ポスターの絵を担当するなど、多方面に活動の場を広げています。
展覧会のタイトル〈童堂賛歌〉とは、本展のためにつくられた言葉です。「飽きることなく何十回でも何時間でもすべり台で遊び続ける、子どもの時間のとらえ方や感覚に象徴される「童」と、本屋や薬局、駄菓子屋などの店名にも使われ、「万物を受け入れる」という意味の「堂」が組み合わされています。
本展では、活動初期から現在までの絵本原画の数々に加え、立体造形、映像作品などを一堂にご紹介。展覧会は7つのテーマの部屋で構成され、まるで空間が大きな1冊の本になったようなしかけが満載です。エネルギーに満ちた、ザ・キャビンカンパニーの世界を身体全体で楽しむことができます。
次に、本展の見どころをご紹介します!
1.「ザ・キャビンカンパニー」関西初の大規模個展は、お子さんと楽しめる!
ザ・キャビンカンパニー《アノコロの国》 2024年 撮影:吉森慎之介
40冊以上の絵本を発表し、数々の賞を受賞するなど、企業やキャラクターとのコラボレーションも話題となっている「ザ・キャビンカンパニー」。結成から16年目を迎える2人の公立美術館初の巡回大規模個展です。
ザ・キャビンカンパニーの世界を全身で感じられる本展は、お子さんが楽しめること間違いなし! また、大人にとっても刺激的な体験になることでしょう。
2.原画はもちろん、アニメーションに巨大立体造形、さらには会場に廃校(アトリエ)も?!
ザ・キャビンカンパニー《オボロ屋敷》 2020年 撮影:橋本大
活動初期から現在までの絵本原画の数々に加え、影絵あそびから着想を得た映像作品《オボロ屋敷》、段ボールや板、紙粘土などで作られた、大小様々な立体作品で構成された大型インスタレーションを展示。
さらには、2人の活動拠点である大分県由布市の元廃校のアトリエの様子もご紹介。魅力的な作品が生まれるその背景にも触れることができます。
3.けけちゃまに、あいみょん、ポケモンも! お馴染みのキャラクターや企業とのコラボが多数登場
ザ・キャビンカンパニー《しりたガエルのけけちゃま》 おかあさんといっしょ (NHK-Eテレ) 2023年 ©NHK
「ザ・キャビンカンパニー」は、これまで様々なアーティストや企業とコラボレーションを行ってきました。NHK-Eテレ『おかあさんといっしょ』に登場する「しりたガエルのけけちゃま」のキャラクターデザインの原画や、ミュージシャン・あいみょんのツアー「傷と悪魔と恋をした!」のパンフレット原画、そして絵本『ポケモンのしま』原画など、貴重なコラボ資料の数々をご覧いただけます。
4.滋賀県立美術館限定! 本展に合わせた新作を披露
展覧会会場の中間地点に位置する「ソファのある部屋」において、本展に合わせた新作を発表します。部屋から見える素敵な日本庭園の風景と、「ザ・キャビンカンパニー」の詩が融合する作品となっています。この機会に本会場でしか観ることのできない作品です。
5.塗り絵などが楽しめるワークショップコーナー
展覧会の最後には、鑑賞者がいつでも参加できるワークショップコーナーを設置。「ザ・キャビンカンパニー」の塗り絵が体験できるほか、絵本の読み語りができる小さなステージなどもあり、展覧会とあわせて楽しむことができます。
■「ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展〈童堂賛歌〉」
会期:2025 年6月21日(土)~9月7日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし祝日の場合には開館し、翌日火曜日休館)
開場時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)
会場:滋賀県立美術館 展示室3ほか
観覧料:一般 1,200 円(1,000 円)
高校生・大学生 800 円(600 円)
小学生・中学生 600 円(450 円)
※( )内は 20 名以上の団体料金
※企画展のチケットで展示室1・2で同時開催している常設展も無料で観覧可
※未就学児は無料
※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳をお持ちの方とその介護者
は無料