執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
シンガポールを拠点に、世界有数のラグジュアリーホテルを手掛ける「カペラホテルグループ」の日本第一号店として、2025年5月1日(木)に開業した、難波宮跡と歴史ある大阪城の間に位置する「パティーナ大阪」。
この度、シンガポールの主要経済セクターの一つである観光について、主導的に発展させることを担う政府機関「シンガポール政府観光局」および、障害のある方々(PwDs)に対して、芸術を通じた学びと就業の機会を提供することを目的に活動を行っている、1993年に設立されたシンガポールのNPO団体「ART:DIS」とタイアップしたアート展示イベント「重い線、軽やかなタッチ」を、2025年8月23日~9月7日の間、「パティーナ大阪」1階のギャラリースペースにて開催中です。
岡元俊雄氏
フェーン・ウォン氏
「重い線、軽やかなタッチ」は、日本人アーティストの岡元俊雄氏と、シンガポール人のフェーン・ウォン氏による共演であり、両者の独自の表現が『ジェスチャー』『リズム』『注意力』について静かな瞑想をもたらします。
岡元氏の力強い墨のドローイングは、床に寝転び音楽を聴きながら描かれる、重なり合う線の集積から生まれたものです。一つひとつの線が繰り返しと動きを通じて形を生み、作品全体に独特のリズムと躍動を与えています。人物や風景、雑誌、画集などをモチーフに、墨汁と割り箸を用いて制作。全体像を素早く捉えて描いた後、線の上を何度も塗り重ねることで、飛び散る墨の滴や擦れた線が、豊かな表情とエネルギーを作品に加えています。
対照的に、ウォン氏の作品は、廃棄された掲示用紙を繊細な切り絵へと昇華させる、緻密な技術と詩的な感性が光ります。色彩や遊び心、丁寧な手仕事が融合した作品群には、彼女ならではの個性と直感的なデザインセンスがあふれています。
シンガポール出身の彼女は、その鮮やかで洗練された表現により高く評価されており、2023年には「第1回 UOL × Art:Dis アート賞」にてグランプリを受賞。翌2024年には初の回顧展を開催し、約20年にわたる創作の軌跡をたどる約40点の作品が披露されました。
またウォン氏の作品は現在、「2025年大阪・関西万博」のシンガポールパビリオン内のインスタレーションとしても展示されていて、その光と音のショーの創造的なインスピレーションとなり、多くの訪れる人を魅了しています。
本展では、両作家の制作の根底にある感性に鑑賞者が耳を傾け、一筆の線や一回の切り込みといった些細に見える行為が持つ大きな表現力について考える機会を提供します。
このコラボレーションは、障害のあるアーティストをはじめ、多様な背景を持つクリエイターたちに表現の場を提供するとともに、文化や国境を超えた交流を促進することを目的としています。アートを媒介に、互いの違いを理解し、尊重し合うきっかけを生み出すことで、インクルーシブで多様性を重んじる社会の実現を目指しているとのことです。
■「重い線、軽やかなタッチ」
期間:2025年8月23日(土)~9月7日(日)
会場:パティーナ大阪 1階ギャラリースペース(入場無料)
主催:ART:DIS
後援:シンガポール政府観光局、パティーナ大阪
協力:やまなみ工房、国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)