RIZZOLI RICK OWENS TEMPLE OF LOVE BOOK COVER, OWENSCORP
FW24 PORTERVILLE WOMEN’S, PALAIS BOURBON, PARIS, 29 FEBRUARY 2024, OWENSCORP
執筆者:遠藤友香
1961年にカリフォルニア州で生まれ、ロサンゼルスにおいてパターンとファインアートを学び、キャリアをスタートさせたファッションデザイナーのリック・オウエンス(Rick Owens)。1992年に自身のブランドを立ち上げ、アンダーグラウンドカルチャーや1930年代のグラマラスなファッションから着想を得た彼の作品は、世界中のファッショニスタを魅了しています。
日本においては、2009年に青山旗艦店をオープン。スニーカーやライダースジャケット、サルエルパンツといった数々の名作を発表し、多くの日本人ファンから支持を得ています。オウエンスが手掛けるデザインは、ゴシックとグランジのミックス、中性的なアプローチから無機質な動物的要素までに及び、革新的なデザイナーの一人としてファッション史に刻まれるほど。
また、限られた資源にインスパイアを受けたオウエンスは、軍用バッグや軍用毛布、洗いをかけたレザーなど、再利用された素材をドレスやジャケットに生まれ変わらせたことで知られています。彼は黒や落ち着いた色調を好み、「ダスト」と名付けられた独特のグレーは彼のシグネチャーカラーの一つとなっています。
2001年には拠点をイタリアに移し、2003年にパリへと渡った後も、独立性と挑発性を兼ね備えたファッションショーを展開。社会的メッセージを込めた表現で注目を集め、あるショーではモデルの代わりに黒人女性中心のステップダンスチームを起用するなど、すべてのショーにおいて女性が本来持っている強さを称えています。また、世界的な危機に対しては、より彫刻的な作品や鮮やかな色使いによって独自性を表現。
FAYE, LAS PALMAS AVE, HOLLYWOOD, SLAB FW01, GINO SULLIVAN
この度、オウエンスの創作活動を紹介するパリ初の回顧展『Rick Owens, Temple Of Love』が、2025年6月28日から2026年1月4日まで、パリ市立モード美術館「パリ市立ガリエラ宮(Palais Galliera)」において開催されます。本展では、オウエンスがロサンゼルスで活動を始めた初期作品から最新コレクションまで、約100点以上のコレクションを展示します。
SS19 BABEL MEN’S FITTING, PALAIS BOURBON, PARIS, 19 JUNE 2018, OWENSCORP
精神性や儀式的要素に強い関心を持つオウエンスの創作は、作家ジョリス=カルル・ユイスマンスの文学作品から現代アート、さらには20世紀初頭の名作映画など、幅広い文化的背景からインスピレーションを得ています。オウエンス自身が芸術監督として展覧会の企画に参画し、ガリエラ宮のキュレーションチームと協力して、美術館の外壁や庭園まで続く独自の展示経路を構成。
TERRY-ANN, PARIS, 2002, PHOTOGRAPHED BY RICK OWENS
展示内容としては、オウエンスの創作プロセスを示す個人資料やビデオ映像、未公開のインスタレーション、さらにはギュスターヴ・モロー、ヨーゼフ・ボイス、スティーブン・パリーノらの作品も展示し、彼の芸術的ルーツを多面的に探求しています。
また、妻であり共同制作者でもあるミシェル・ラミー(Michèle Lamy)の存在にも光を当て、夫妻のカリフォルニア時代の寝室を再現するなど、彼女からの影響力も見逃せません。作品は美術館の外へも広がり、美術館の外壁にある彫像群をスパンコール刺繍の布で覆うなど見応え十分。
また、ガリエラ宮の庭園には、ブルータリズム様式を反映したセメント彫刻30点が特別に設置されており、これらは彼がデザインする家具ラインを彷彿とさせます。庭園には、彼が愛するカリフォルニア原産のブドウのつるや植物も植えられています。
JIMMY, FIRST SKETCH, SS19 BABEL MEN’S, OWENSCORP
本展覧会『Rick Owens, Temple Of Love』は、規模・範囲ともに前例のないものであり、愛、美しさ、多様性への瞑想をモニュメンタルな空間で提示。現代を代表するデザイナーであるオウエンスのアーカイブから選ばれた数々のコレクションは、美術館をまるで創造的な寺院のような空間へと変貌させています。ぜひ、会場に足を運んで、オウエンスの世界観を体感してみてはいかがでしょうか。
■『Rick Owens, Temple Of Love』
会場:パレ・ガリエラ(パリ市立モード美術館)
10, avenue Pierre Ier de Serbie 75116 Paris
開館時間:火曜日~日曜日:午前10時~午後6時
金曜日は午後9時までの夜間開館あり
入場料:本展覧会のみのチケット:14ユーロ
(割引料金:12ユーロ)
常設展との共通チケット:17ユーロ
(割引料金:15ユーロ)
※18歳未満は無料
※事前予約を推奨