Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH
執筆者:遠藤友香(Yuka Endo)
2016年9月11日(日)にオープンした、広島県福山市の禅寺である神勝寺「禅と庭のミュージアム」内にある、日本を代表する彫刻家・名和晃平氏とSANDWICHの設計によるアートパビリオン《洸庭(こうてい)》。
7万坪を有する広大な神勝寺内に、突然現れるその洗練された形状と大きさに、誰もが驚くことでしょう。建物は寺の由来から「舟」をモチーフとした形で、木 、石 、水をデザインと素材選定の基本要素に据えています。まるで未確認飛行物体のようなその建築物は、世界中の建築ファンからも注目を浴びる存在です。

Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH
《洸庭(こうてい)》は伝統的なこけら葺きを応用し、全体を木材で柔らかく包んだ舟型の建物が、石のランドスケープの上に浮かぶ建築物。

Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH
物質感のある石の海を抜け、ゆるやかなスロープを上がり、小さな入り口から舟の中に入ると、現代アートを通じ禅の世界を体験するパビリオンとなっています。
浮遊する舟のような建築の内部の暗がりの奥には海原が広がり、静かに波立っているのが見て取れます。波間には、かすかな光が反射。徐々に暗がりに目が慣れてくると、光が織りなす幻想的な世界へと誘ってくれます。「波」と「光」によって「海原」を表現した、名和氏によるインスタレーションです。
また、ミュージアムの玄関でもある寺務所「松堂」の設計を手がけた建築家・藤森照信氏の建築も必見。建築史家でもある藤森氏が、植物やオーガニックな素材を用いた斬新な設計で、周囲の自然に溶け込むようにデザインしました。
屋根の頂部に赤松が植えられており、松のホールを意味する「松堂」の名にふさわしいデザインです。外装はコテの跡が残る藁を練り込んだ土壁のような仕上げ。寺務所、案内所、ショップとしての機能を兼ね備えています。
ぜひ、アートと建築の融合が楽しめる「禅と庭のミュージアム」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
■神勝寺「禅と庭のミュージアム」
広島県福山市沼隈町大字上山南91
Tel. 084-988-1111(寺務所)